中華の名が付く揚げ蒲鉾

今回は「中華」の名を冠する揚げ蒲鉾(さつま揚げ)をいくつか紹介しよう。それぞれに個性があり、食べ比べてみると面白い。

中華の名が付く揚げ蒲鉾

おでんの具材としても活躍する揚げ蒲鉾は様々な種類があり、各専門店で個性豊かな商品を生み出している。それらのなかで共通した名前を持つものがあるが、具材や味わいが異なっていることが多い。今回は「中華」というキーワードでそれぞれの揚げ蒲鉾を見ていこう。

丸忠かまぼこ店の中華揚

最初に紹介するのは葛飾区立石にある丸忠かまぼこ店の中華揚だ。少し大きめの平たい練り物に、ニラやもやしが入っており、味はピリ辛仕上げとなっている。

東京都葛飾区立石:丸忠かまぼこ店の中華揚

これがなぜ「中華」という名前が付くのかは不明だが、おそらく具材がレバニラ炒めのような中華料理に使われるものに近いからだと思われる。

東京都葛飾区立石:丸忠かまぼこ店

丸忠かまぼこ店は「せんべろの聖地」で有名な立石仲見世商店街にあり、併設した飲み屋が人気のおでん種専門店だ。おでん種を販売する店舗では揚げ蒲鉾のほか、調理済みのできたておでんを購入できる。

東京都葛飾区立石:丸忠かまぼこ店

中華揚は江東区北砂の砂町銀座商店街で営業する増英蒲鉾店にも同様のものが販売されており、こちらでも人気商品となっている。

東京都江東区北砂 砂町銀座商店街:増英蒲鉾店のできたておでん 中華揚
江東区北砂(砂町銀座商店街)増英蒲鉾店の中華揚

実は丸忠かまぼこ店の先代店主と増英蒲鉾店の先代おかみさんは姉弟の関係であり、両店舗で中華揚を取り扱っているのはその関係があるのかもしれない。詳細については「増英の系譜」という記事をご覧いただきたい。

東京都葛飾区立石:丸忠かまぼこ店の中華揚

ニラやもやしのほか、複数種類の野菜が混ぜ込まれており、ボリュームもたっぷりだ。さらに唐辛子の辛さが食欲をかきたてる。そのまま食べても美味しいし、煮て食べても身体がぽかぽかと温まる。

丸忠かまぼこ店の中華揚と増田屋(綾瀬)のとうがらし入
左:丸忠かまぼこ店の中華揚、右:増田屋(綾瀬)のとうがらし入

ちなみに、後述する足立区綾瀬の増田屋蒲鉾店にも「とうがらし入」という似たような商品がある。また、「スタミナ」という名を冠する商品には似たような具材を用いることが多い。どのような経緯で名前が付けられ、広まっていったのかは不明だが、非常に興味深い。

増田屋蒲鉾店(綾瀬)の中華ボール(肉ボール)

次に紹介するのは、足立区綾瀬で営業する増田屋蒲鉾店の中華ボールだ。現在では肉ボールという名称に変更されている。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店(綾瀬)の肉ボール(中華ボール)

肉ボールというだけあり、魚のすり身の中に挽肉が混ぜ込まれている。すこし濃いめの味付けになっているので、おでんに入れるとほどよい味わいになる。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店(綾瀬)

製造販売しているのは足立区綾瀬の綾瀬五丁目商店街にある増田屋蒲鉾店(綾瀬)だ。昭和48年(1973年)に開業し、店主ご夫婦で50年以上営業を続けている。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店(綾瀬)

こちらも揚げ蒲鉾のほかに店頭で調理するできたておでんを販売している。おかみさんが非常に明るく話し好きな方で、筆者はいつも1時間近く滞在してしまう。店主も職人気質で物静かだが、非常にやさしい方だ。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店(綾瀬)の肉ボール(中華ボール)

増田屋(綾瀬)の魚のすり身は弾力が強く、昔ながらの味わい。中華ボールの名前の由来は不明だが、中華料理の肉団子を連想させるからだろうか。

増田屋(立石)の中華巻

最後に紹介するのは丸忠かまぼこ店と同じ、葛飾区立石にある増田屋(立石)の中華巻だ。

東京都葛飾区東立石:増田屋(立石)の中華巻

こちらの商品は他店ではみられないユニークなもので、なんと魚のすり身にシュウマイの皮が巻いてある。

東京都葛飾区東立石:増田屋(立石)

増田屋(立石)は先ほど紹介した増田屋蒲鉾店(綾瀬)の店主が修行をしたお店で、綾瀬、堀切京成小岩(葛飾区鎌倉)といった現在も営業する「増田屋」の屋号を持つ店舗はすべて立石から暖簾分けしている。

東京都葛飾区東立石:増田屋(立石)

綾瀬店と同様に、立石のお店にも肉ボールという商品が存在するが、綾瀬の店主が立石店で修行をしていたことに関係するのだろうか。また、立石の3代目店主が修行を始めた際には綾瀬の店主が練り物の作り方を指南していたことから、相互に影響しあっているのだと思う。

東京都葛飾区東立石:増田屋(立石)の中華巻

増田屋(立石)の中華巻の中身は挽肉の入ったすり身で、お店で出している肉ボールと同じ具材なのだそうだ。先代が考案し、名前の由来は不明だという。

東京都葛飾区東立石:増田屋(立石)の中華巻

巻いているシュウマイの皮は炙るとぱりっとした食感となり、煮ると水餃子やワンタンのようにふわふわになる。店主いわく、特定の業者の皮でないと美味しくならないらしく、廃業を見据えてストックしているそうだ。

東京都葛飾区東立石:増田屋(立石)の中華巻

揚げ春巻と同じ要領で、からしと醤油をつけて食べても美味しい。ぱりっとした皮とふんわり柔らかなすり身との食感のコントラストが心地よく、何杯でもビールがすすむことだろう。

中華の名が付く揚げ蒲鉾

今回は「中華」の名を冠する揚げ蒲鉾を3つほど紹介した。どれも個性豊かで、魅力的であることが伝われば嬉しく思う。それぞれ実際に味わっていただき、好みのものを見つけてみていただきたい。

丸忠かまぼこ店の基本情報

丸忠かまぼこ店(おでんの丸忠)
〒124-0012 東京都葛飾区立石1-19-2
03-3696-6788
定休日:木曜日・第3水曜日
営業時間:11:00~19:00(飲み屋のおでんの丸忠は15:00~22:00)

増田屋かまぼこ店(綾瀬)の基本情報

増田屋かまぼこ店
〒120-0005 東京都足立区綾瀬5-12−9
定休日:日曜
営業時間:9:00~19:00

増田屋(立石)の基本情報

増田屋
〒124-0013 東京都葛飾区東立石4-50-3
03-3691-0477
定休日:日曜、祝日
営業時間:10:00~19:30
増田屋(立石)のWebサイト(葛飾区商店街連合会のWebサイト)

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