大国屋(柴又)のおでん種

大国屋(柴又)は葛飾区柴又の柴又親商会にあるおでん種専門店だ。店主は京島の大国屋の店主の弟さんで、昭和62年から柴又の地でおでん種を販売している。できたてのおでんは柴又散策のお供として愛され、暖かい時期はかき氷が人気のお店だ。店主ご夫婦はとても明るく下町のぬくもりを感じることができる。

寅さんと柴又帝釈天が有名な柴又駅

京成金町線の柴又駅は、古きよき東京の風景が残る有名観光地だ。京成金町線が砂町と金町からしかアクセスできないため、まだまだ穴場といえる。

東京都葛飾区柴又:柴又駅前の寅さん像

柴又の目玉はもちろん「男はつらいよ」と柴又帝釈天。
「男はつらいよ」はテレビドラマのあとに映画化し、昭和44年(1969年)から平成7年(1995年)まで26年続く国民的な人気映画となった。駅前には商店会や観光客の募金によって建てられた寅さんの銅像があり、2年ほど前に妹のさくらの銅像も建てられている。

東京都葛飾区柴又:柴又帝釈天

柴又帝釈天へ続く参道(柴又帝釈天参道商店街 神明会)は観光客で大にぎわいだ。柴又名物の草だんごを売る店や、煎餅屋、漬物屋、甘味処などがひしめき合い、古い家屋の雰囲気も抜群だ。

東京都葛飾区柴又:大和屋

天ぷらで有名な大和家の暖簾には「おでん」の文字が確認できる。揚げたての天丼も魅力的だが、冬場に参拝に出かけたついでにおでんで一杯なんてのもいいだろう。

地元の雰囲気が楽しめる柴又親商会

大国屋(柴又)のある柴又親商会は、帝釈天の参道の反対側、柴又駅を起点にすると南側に位置している。

東京都墨田区柴又:大正通り商明会

観光客で賑わう参道とは雰囲気が異なり、こちらの商店街は地元住民の生活を支える商店街だ。八百屋や鮮魚店、家具屋や飲み屋などがある。

東京都墨田区柴又:大正通り商明会

柴又の地元の雰囲気を感じたいなら参道よりも柴又親商会を散策することをおすすめする。同じビルの1階に並んで営業する八百屋や肉屋、すでに閉業してしばらく経ったお店の看板など、昭和の香りを残す味わい深い建物がいくつも残っている。

柴又散策の腹ごしらえにもってこいの大国屋(柴又)のおでん

大国屋(柴又)は柴又親商会の南側に位置している。柴又駅から徒歩1、2分で、柴又帝釈天を参拝してからでも十分にアクセスできる距離だ。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)

大国屋といえば、柴又のほかに京島の下町人情キラキラ橘商店街(向島橘銀座商店街)幡ヶ谷の不動通り商店街にも同じ名前のおでん種専門店がある。店主に尋ねてみると、京島の大国屋は店主のお兄様が営業しているという。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)

京島の大国屋の記事で少し触れたが、ルーツは港区の芝にあった大国屋という築地市場向けはんぺん卸業のお店だ。当時の流行にあやかって、おでん種も職人たちが各地で勉強して製造していたという。店主のお父様もこの芝のお店で働いていた。
芝のお店は東京タワーが建つことによって昭和28年(1953年)に立ち退きになり、働いていた職人たちは各地で「大国屋」の屋号で次々と創業、先代のお父様も京島でお店を開いた。
しばらくして京島の同じ商店街で2軒目を開店し、柴又店の店主はそのお店の経営を任された。昭和62年(1987年)になると、ご結婚を機に柴又の地に移って営業を開始したそうだ。

なお、幡ヶ谷の大国屋の初代も芝のお店で働いていた若い衆のひとりだったという情報を得た。
上の写真でいうと「向島」が京島の大国屋、「初台」が幡ヶ谷の大国屋だ。「堀切」の大国屋は増田屋蒲鉾店(堀切)に行ったときにおかみさんから話を聞いたお店だ。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)

さて、話題をおでん種に移そう。
大国屋(柴又)でもっとも有名なのが、店頭で販売するできたておでんだ。柴又という土地柄、街歩きのお供としてこのおでんを購入する人が多いそうだ。とくに大晦日は京成金町線が24時間動いているので、暖をとるために店頭は大にぎわいになるという。たっぷりの汁が染みたこんなおでんを目にしたら、食べないわけにはいかないだろう。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)

練り物のおでん種は14種類ほどが店頭に並んでいた。メニューを見ると17種類で、季節によって異なるようだ。シンプルで定番のおでん種だが、サイズがとても大きい。伺ったときは午後2時くらいだったが、売り切れもかなりあった。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)

練り物以外のおでん種は8種類ほど。すじやつみ入は自家製で、はんぺんは店主のお兄様の経営する京島の大国屋のものだ。ちくわぶは練馬区の鈴木商店、おでん汁はハウスのおでんの素のほかに、大国屋自家製のおでんつゆも揃えている。この日はそのおでんつゆをサービスで付けてくれた。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)

ふと顔をあげると新発売のカレーギョウザ巻の看板が目に入った。暑い時期はおでんとしての販売が落ちるので、そのまま食べても美味しい商品を考案したそうだ。すでに売り切れだったので、次回ぜひ食べてみたい。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)

暑い時期の工夫として、かき氷も販売している。大国屋(柴又)の名物として有名で、なんと130円からオーダーできる。観光客がにぎわう参道のお店でもかき氷を販売しているが、コストパフォーマンスは段違いだ。筆者がおでん種を選んでいるときも、子連れのママさんが購入していった。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)

それにしても、大国屋(柴又)の店内はさまざまなキャラクターで埋め尽くされている。ファインディング・ニモ、ゲゲゲの鬼太郎などとっても賑やかだ。本物の熱帯魚も飼育されていた。店主もおかみさんもとっても明るい性格で、お客さんを喜ばせたい気持ちが伝わってくる。

寅さんブームとともに変わる柴又

大国屋(柴又)でおでん種を購入し、ちょっと休憩をしようと柴又をぶらぶらと歩いてみた。参道のほうは人が多いので、線路を渡って西側に行くと、味わいのある珈琲専門店を発見。

東京都葛飾区柴又:コーヒー専科AOB

こちらのコーヒー専科AOBは昭和40年代からあり、店主が厳選した豆で淹れた本格的なコーヒーが味わえる。地元客を中心に愛されている。

東京都葛飾区柴又:コーヒー専科AOB

店内はテレビの音が聞こえるだけで、とても静か。店主は百貨店で働いたあとにこのお店をはじめ、こだわりのコーヒーを提供してきた。寅さんブームで柴又に7軒ほど喫茶店がオープンしたが、今ではこちらのお店1軒となった。「うちが最初にはじめて、最後まで残った」と語る店主に柴又の移り変わりを伺った。

寅さんブームのころの柴又は、現在の100倍くらいの観光客でにぎわっていたそうだ。現在の参道を見てもかなりの人だが、当時は朝早くから夜の11時ころまで各店シャッターを開けていたという。

東京都葛飾区柴又:柴又駅前の商店跡

そういえば、柴又駅前の広場に展開していた店舗は改装のためすべて休業していた。葛飾柴又寅さん記念館の開館や銅像の設置など、地域の活性化に向けて柴又は進化を続けるのだろう。

東京都葛飾区柴又:柴又駅前の商店跡

個人的には古きよき雰囲気が柴又の魅力のひとつだと感じているが、再開発によってより多くの人がこの地を訪れて活気づくのであればいいなと思う。でも、ブルーボトルコーヒーのようなお洒落カフェが増えるより、AOBのような味のあるお店が残ってくれたほうが100倍嬉しいと思う。

ふわふわの練り物が魅力の大国屋(柴又)のおでん種

大国屋(柴又)で購入したおでん種は14種類。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

時計回りに12時から、ピリカラもやし揚、かき揚天、がんもどき、すじ、牛蒡巻、ギョウザ巻、チーズ巻、利久揚、いか天、野菜揚、うずら巻(中央左)、つみ入(中央右)、カレーボール(中央下)。このほかにちくわぶも購入した。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

大根や玉子、白滝や結び昆布を煮込み、練り物のおでん種を最後に温める程度に投入する。大国屋(柴又)のおでん種はひとつひとつが大きめだ。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

大国屋(柴又)の練り物は、弾力が強くなくふわっとした食感だ。しかし、あまりクリーミーにしないで魚のすり身の美味さを残した絶妙な塩梅だ。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

カレーボールは通常の2個分くらいの大きさはあろうか、なかなかボリュームがある。刻んだ人参や玉ねぎなどが入ってまろやかだが、きちんとカレーの風味が効いていて美味しい。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

ピリカラもやし揚は大国屋(柴又)のおすすめだけあり、もやしがたっぷり詰まっていてシャキシャキとした食感が心地よく、唐辛子のアクセントもきちんと効いていて美味しい。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

利久揚は紅生姜、長ネギ、玉ねぎ、人参が入っている。野菜の甘みと紅生姜の爽快感が混ざり合って、大満足の逸品だ。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

刻んだ長ネギが入った自家製のつみ入はとても大きい。イワシよりも他の魚の割合が多いように見受けられたが、きめ細かくもっちりとした食感で美味しかった。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

すじも自家製で断面に軟骨が確認できる。店主のお兄様が経営する京島の大国屋ではんぺんを作っているので、柴又のお店もよいサメが手に入るのだろうか。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

がんもどきはじんわりクタクタの食感に仕上がり、味が染み込んでとても美味しい。他店で見られるスナックのような食感のがんもどきがあるが、こちらのような手作りの雰囲気を味わえるほうが美味しく感じる。黒ごま、人参、切り昆布が入っている。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

野菜揚は人参、長ネギ、もやしが入っている。利久揚のまろやかさともやし揚のシャキシャキ感を同時に楽しめて美味しい。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

いか天はとても大きいので、四等分くらいにして食べるといいだろう。もちもちした魚のすり身にイカゲソの旨味がよく映える。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

うずら巻は魚のすり身から覗くウズラの玉子がちょっぴり顔を出していて可愛らしい。玉子もクリーミーで子どもに喜ばれそうだ。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

最後は巻物系のおでん種3種を紹介しよう。今回は牛蒡巻、ギョウザ巻、チーズ巻の定番かつ王道のおでん種たちだ。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

牛蒡巻は肉厚の魚のすり身に棒状のゴボウが入っている。ゴボウの渋い味と大国屋(柴又)のふんわりした魚のすり身のバランスがちょうどよく、安心感がある。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

カラッとした揚げ色が美しいギョウザ巻は挽肉の旨味がとてもよい。餃子の皮にも味がきちんと染みていて、必ずオーダーしたい逸品だ。品切れだったカレーギョウザ巻もぜひ食べてみたい。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

チーズ巻はとろけたプロセスチーズの優しい味が幸福感を満たしてくれる。電子レンジで温めて酒のつまみにしてもよさそうだ。

東京都墨田区柴又 大正通り商明会:大国屋(柴又)のおでん種

かき揚天は玉ねぎとイカが入っていると書かれていたが、赤いのは桜エビかもしれない。肉厚の玉ねぎがよい味を醸している。

大国屋(柴又)の店主とおかみさんは明るく人懐っこい性格で、こちらの質問にたくさん答えていただいた。東京に残る大国屋の取材も最後となったが、店主のご厚意によってさまざまな疑問が解決できた。店主ご夫婦と会話を弾ませつつ絶品のおでんを味わい、心も身体もぽかぽかとあたたまって柴又観光のよい思い出としてもらいたい。

大国屋(柴又)の基本情報

大国屋
〒125-0052 東京都葛飾区柴又4-11-3
03-3673-9489
定休日:日曜、祝日
営業時間:10:00~19:30

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