今回は港区麻布十番のおでん種専門店、福島屋の味噌おでんを紹介しよう。
福島屋はおでん種の製造販売だけでなく、食事ができるおでん種やさんとして有名だ。おでんは熟成利尻昆布とさば節で出汁をとった定番のものだけでなく、名古屋名物である味噌おでんも提供している。
常に挑戦を続けるおでん種の老舗、福島屋
流行の発信地でもあり、古き良き昭和の商店街の雰囲気が味わえる麻布十番。新旧の店舗が立ち並び、独特の魅力を放っている。
福島屋は大正10年(1921年)に創業した老舗のおでん種専門店だ。福島県出身の創業者が静岡県の蒲鉾店で修行したのちに東麻布で開業。戦後に麻布十番に移転した。
100年以上の歴史がありながらも常に新しい挑戦を続けており、その魅力は増し続けている。店舗2階で営業する飲食スペースは平成18年(2006年)に開始し、新型コロナの頃にはおでんや練り物などをのせたのり弁の販売を始めた。
このほかにも、冷たい手羽先やとろけるチーズが入った揚げ蒲鉾など、個性ある商品を次々と生み出している。1階では揚げ蒲鉾を中心としたおでん種に加え、大きな鍋で調理したできたてのおでんを販売している。定番のものからトマトといった変わり種まで揃えており、地元客が季節を問わず買い求めにやってくる。
今回取り上げる味噌おでんも福島屋を語るうえでは外せないもののひとつだ。「一年を通して売り上げが衰えない」ことを見込んで平成27年(2015年)に販売を開始し、目論見通り人気商品となっている。
当初はほかの味噌も加えたオリジナルブレンドだったが、長時間鍋に入れているとしょっぱくなってしまったため、八丁味噌100%に切り替え、具材もしぼって再発売したという。納得がいく味を実現できるまで諦めず、試行錯誤を続けた職人の矜持を感じさせるエピソードだ。
自宅でも本格的な味が楽しめる、福島屋の味噌おでん
味噌おでんは飲食スペースで味わえるが、お持ち帰りも可能だ。おでん種は5種類となり、2階で提供する味噌おでん定食と同じものが自宅で楽しめる。
時計回りに12時から、大根、豆腐、牛すじ、玉子、こんにゃく。汁もたっぷり入れてくれる。
購入すると蓋付きの底の深い容器に入れてくれ、外れないようにテープでとめてくれる。滅多なことではこぼれないが、ひっくり返さないように注意しよう。温めれば、すぐに食べられる。
八丁味噌を使用した汁は濃厚ながらもしょっぱくなりすぎず、牛すじの脂の甘みも相まって奥深いコクがある。お店では別売りの柚子胡椒を薬味として提供しているが、自宅でも試してみてもいいだろう。
大根は極厚にもかかわらず、表面と同じくらい中心まで真っ黒だ。口に含むと八丁味噌のふくよかな味わいとともに、大根のやさしい風味が漂う。
味噌おでんに甘みとコクを与えている牛すじはとろとろに煮込んであり、非常に柔らかい。量も申し分なく、ごはんにのせて食べるのもおすすめだ。
玉子はしっかり褐色に染まり、見た目だけで美味しく仕上がっていることがわかる。黄身はふんわりクリーミーな舌触り、白身はぷりんとしたフレッシュな食感だ。
豆腐と味噌との相性は説明不要だろう。主張の強い八丁味噌をやさしく受け止め、滑らかな舌触りとともに口のなかで調和する。通常のおでんでは豆腐をそのまま使うことは少ないが、味噌おでんでは必須といえよう。
こんにゃくもしっかり味が染みている。ふるふるとした食感と淡白な味わいは、濃厚な八丁味噌によく合う。豆腐とともに、絶対に外せないおでん種のひとつだ。
さらに今回は、前回の記事「福島屋のおでん屋ののり弁」で紹介しきれなかった「匠」も購入した。通常ののり弁と「極(きわみ)」に入っているエビのフリッター、はんぺんの磯辺揚げ、しそ天、大根、玉子のほか、鶏手羽元、そして牛すじ味噌仕立てのハンバーグが加わっている。
お弁当にはおでんとハンバーグにかける2種類の汁が付属する。使用しなくても十分美味しいが、より深みのある味わいを楽しめるため、適量かけるといいだろう。
ハンバーグはぎゅっと詰まった挽肉のうまみが濃厚な牛すじ味噌と絡み合い、極上の美味しさとなっている。かなりのボリュームとなり、満足度が非常に高い。
牛すじ味噌がほどよく染み込んだごはんと一緒に食べると、さらに美味しく味わえる。ハンバーグの下には海苔が避けてあるところにもこだわりを感じる。
季節に関係なく、通年味わうために試行錯誤を重ねた福島屋の味噌おでんは、今やお店の顔とも呼べる人気商品に成長した。本場の名古屋にも引けを取らない本格的な味を、ぜひご自身の舌で味わってほしい。
福島屋の基本情報
福島屋
〒106-0045 東京都港区麻布十番2-1-1
03-3451-6467
定休日:不定期
営業時間:11:30~21:00(ラストオーダー)
福島屋のWebサイト(麻布十番商店街のWebサイト)