今回は初夏から夏までが旬のホヤをおでんとして調理しよう。
ホヤといえば刺身や酢の物など生で食べるのが一般的だが、おでんとして炊いても美味しい。旬の時期は正反対であるといえるので、この組み合わせは盲点だろう。
海の珍味として親しまれるホヤ
「海のパイナップル」と呼ばれ、珍味として重宝されるホヤ。一見、植物や貝のように見えるが、生物学的には我々哺乳類に近い。
1000種類以上が存在するが、日本で食用とされるのは宮城県など東北地方の北側で獲れるマボヤ、北海道で獲れるアカボヤの2種類となる。三陸地方では養殖が行われており、市場に出るマボヤはほとんどが養殖物だ。
新鮮なホヤを購入するには、しっかりと張りがあるもの、形が丸く均一なもの、殻が鮮やかな赤色のものを選ぶといい。また、持ってみてずっしり感じるものは身が多い。
ホヤのおでんの調理方法
さて、ここからはホヤのおでんの調理法を紹介していく。まずは下処理をしていこう。
ホヤは体内にたくさんの海水を取り込んでいるので、切った際に勢いよく飛び出してくる。臭いや色がつくので、エプロンをしたり、汚れてもいい服に着替えよう。ホヤの捌き方はいくつかあるが、基本は中の海水や排泄物を流して身を取り出し、内臓を取るだけだ。難しそうに感じるが、魚をおろすよりも簡単だ。
まず、ホヤの汚れをたわしなどで落としてかあら、上側にある2つの突起を切り落とす。「+」の切り込みがあるのが入水孔(海水を取り込む部位)で「-」が出水孔(排泄物を吐き出す部位)だ。水が跳ねないように慎重に包丁を入れ、突起を切り落としたら身を押して水(ホヤ水などと呼ばれる海水)と排泄物(茶色い糸状のもの)を出す。
「ホヤ水はとっておき、身を洗うときに使う」とか「つけて食べると美味しい」といった説もあるが、味の好みや衛生上の問題も考慮して今回は使用しないことにする。
次にキッチンばさみで殻を縦に切る。殻といってもそれほど固くはないので、力を入れなくてもすんなりと切れる。ただし、根元は固いのでそのままでいい。
指を身と殻の隙間に入れれば簡単に取り外せる。次に身を包丁でふたつに切る。
黒っぽい色をした肝臓を取り除き、身に残った排泄物を水で洗い流す。
キッチンペーパーなどで水気を切り、食べやすい大きさ(1cmほどの間隔)に切れば準備は完了だ。
おでんにそのまま入れてもいいが、串に刺すと扱いやすい。ホヤの大きさにもよるが、大体ひと串で1匹の量になる。
あとはおでんと一緒に煮れば完成だ。じっくり煮込む必要はなく、さっと火を通す程度で問題ない。ホヤの風味をおでんに移したくない場合は、別鍋で煮るといい。
ホヤは生食にすることが多いため、煮ると風味が飛んでしまうと思いきや、うまみや香りをじゅうぶんに楽しめる。すこし値が張るのでおでんにするのはもったいないと思うかもしれないが、刺身や酢の物とは異なる味わいを楽しめるので、ぜひ挑戦していただきたい。