神茂のイイダコのおでん種、たこ蔵

今回は日本橋のはんぺんの老舗、神茂(かんも)の「たこ蔵」というおでん種を紹介しよう。

東京都中央区日本橋室町:神茂のたこ蔵

現在も伝統的な手法と原料魚を用いてはんぺんをつくり続ける日本橋の老舗、神茂。はんぺんだけでなく、揚げ蒲鉾にも神茂ならではのこだわりが詰まっている。今回はイイダコを使用した「たこ蔵」を紹介しよう。

江戸時代から続くはんぺんの老舗、神茂

東京都中央区日本橋。江戸時代から魚河岸があり、関東大震災で築地に移転するまで近海からさまざまな魚介類が集まっていた。日本の国道や五街道の起点として有名だが、爆発的に人口が増加する江戸の食を支える一大拠点でもあった。

東京都中央区日本橋:日本橋

日本橋魚河岸には蒲鉾を製造する業者も多く存在したと思われる。神茂の創業者である神崎屋長次郎は明暦2年(1656年)に関西から江戸にやってきて、漁業に従事した後に日本橋に蒲鉾店を開業した。

東京都中央区日本橋室町:神茂本店

5代目となる神崎屋新右衛門の頃(天和3年、1683年)になると、鮫肉を使ってはんぺんの製造を行うようになった。当時、サメのひれ(フカヒレ)は幕府の輸入品として利用されており、日本橋魚河岸にはひれを取り除いた鮫肉が取引されていたという。

東京都中央区日本橋室町:神茂本店
神茂のディスプレイには1870年代(明治初期)に撮影された日本橋の写真が飾られている

神茂のはんぺんの味は評判となり、かつては宮内庁の出入りが許されるなど高い評価を得てきた。現在でも昔ながらの製法、原料魚を用い、変わらぬ味を提供し続けている。

揚げ蒲鉾にも垣間見える、神茂の職人技と遊び心

神茂ははんぺんのほかに揚げ蒲鉾も製造している。つくり始めたのは戦後からだが、はんぺんと同様のこだわりが垣間見える。

東京都中央区日本橋室町:神茂「おでんセット」

神茂では12種類ほどの揚げ蒲鉾を揃えており、店頭やECサイトで1種類ずつ購入することができる。どれにしようか迷ってしまう場合には、詰め合わせやセット商品を選んでみるのもいいだろう。調理済みのおでんも販売しているが、自分で調理するなら秋冬限定の「おでんセット」がおすすめだ。

東京都中央区日本橋室町:神茂「おでんセット」

「おでんセット」は、さつま揚、養老揚、白天、がんも、焼竹輪、揚げボール、結び昆布が複数入っている。また、だしの素とからしが付いているので、これだけで美味しいおでんができあがる。大根や玉子、そして「たこ蔵」のような好みの種を加えれば完璧だ。

東京都中央区日本橋室町:神茂「たこ蔵」

今回注目する「たこ蔵」は、イイダコの頭にすり身の帽子を被せた愛嬌のある造形となっている。2020年の販売開始以来の人気商品となっている。

東京都中央区日本橋室町:神茂「たこ蔵」

丸いすり身はたこ焼きを模してあり、紅生姜と鰹節、青海苔が混ぜ込まれている。ふんわりしながらも適度に弾力のあるすり身とクニクニとしたイイダコのふたつの食感が同時に楽しめる。茹でたイイダコのみを味わうのとはまた違った、やさしくふくよかな味わいが口のなかに広がっていく。

東京都中央区日本橋室町:神茂「たこ蔵」

オーブンなどで軽く炙ってもいいし、おでんにして汁と一緒に楽しむのもいい。混ぜ込まれた紅生姜と鰹節、青海苔の風味がとても豊かで上品だ。おでんはもちろん、お酒のおつまみにしてもいいだろう。

東京都中央区:むろまち小路

神茂は揚げ蒲鉾ひとつとっても妥協をせず、見事な味わいを生み出している。それでいて、たこ蔵の造形のように遊び心も忘れていない。ぜひご自身の目と舌で味わって、江戸の職人の矜持(きょうじ)を感じてほしい。

神茂(かんも)の基本情報

神茂(かんも)
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1-11-8
03-3241-3988
定休日:日曜、祝日
営業時間:10:00~17:00
神茂のウェブサイト
神茂のX(Twitter)
神茂のYouTube

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