九州屋蒲鉾店のおでん種

九州屋蒲鉾店は東京都荒川区東尾久のおぐぎんざ商店街にあるおでん種専門店だ。中野区野方にあった九州屋からの暖簾分けで創業、昭和49年から営業している。豊富なおでん種と元気な女性たちが魅力の名店だ。

現在も活気あふれるおぐぎんざ商店街

東京都荒川区の東尾久の周辺は、かつてラジウム鉱泉がわいたことで温泉地や三業地(花柳街)として賑わっていた。荒川周辺にある工場で働く人々が多く訪れ、とても活気があったそうだ。筆者の祖母は芸妓として尾久三業地で戦前まで働いていたことがあるので馴染み深い地域だ。

東京都荒川区東尾久:都営荒川線 熊野前駅

現在の東尾久は、都電荒川線がかつての王子電気軌道(王子電車)の名残を残すのみとなり、住宅街が広がる静かな場所だ。

おぐぎんざ商店街は都電荒川線の熊野前駅か、舎人ライナーの熊野前駅、もしくは赤土小学校前駅が近い。昭和34年(1959年)に尾久銀座商店街協同組合が創立、約60年経つ現在でも賑わいをみせる活気のある商店街だ。

おぐぎんざ商店街のアーチは平成11年(1999年)に完成。おぐぎんざ商店街のWebサイトによると、トレードマークは「大きな空のブルーと大地のグリーンがおぐぎんざで出会って、空へ駆け上がる様を表現」しているのだそうだ。

おでん種が豊富な九州屋蒲鉾店

九州屋蒲鉾店はおぐぎんざ商店街の南側、舎人ライナーでいうと赤土小学校前駅側にお店を構えている。昭和49年(1974年)創業、店主は現在三代目となっている。

個性あふれるおぐぎんざ商店街の店舗のなかでも、九州屋蒲鉾店は異彩を放っている。冬場はもちろん、春から秋の暖かいシーズンでも常時30種類以上のおでん種を販売し、お店の前はいつも常連客で賑わっている。テレビなどメディアでも多く紹介されている有名店だ。

九州屋という屋号のおでん種専門店は東京各地に存在したが、このお店以外はすべて閉業している。おぐぎんざ商店街の九州屋蒲鉾店は初代が野方の九州屋で修行をし、暖簾分けでできたお店だ。九州屋はこちらのお店や野方のほかに、江古田、滝野川、石神井、中野、成増にあったという。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店

九州屋蒲鉾店でもっとも目を引くのが、店頭で販売するできたておでんだ。大きなおでん鍋が2つ、品揃えは42種類とたくさんある。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店

串に刺さったウインナーやなると巻、たっぷりとおでん汁を吸い込んだきんちゃくなど、見ているだけでよだれがたれてくる。おぐぎんざ商店街は焼き鳥など食べ歩きにもってこいの品が揃っているが、九州屋蒲鉾店のおでんも見たら食べないわけにはいかないだろう。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店

お店の中央のショーケースにはおでん種がたくさん並んでいる。練り物のおでん種は20種類以上あり、変わり種も多い。三代目のおかみさんいわく「これでも冬に比べたら少ないほう」なのだという。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店

九州屋蒲鉾店は練り物以外のおでん種も豊富だ。下茹でが済んだ大根やじゃがいものほかに、ロールキャベツ、串に刺さったつぶ貝、牛すじ、ウィンナー、自家製のつみれ、すじ、半ペンも揃っている。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 半ペン

半ペンは素敵な絵柄の入った袋に入れられている。板橋区の蓮根にあるえびすや蒲鉾店は九州屋のはんぺんを仕入れている。えびすや蒲鉾店の店主はこちらのお店で働いていたことがあり、その関係で仲がよいのだという。練馬区北町にあるえびすや蒲鉾店も、ここのはんぺんを仕入れていたと思う。

なお、おでん汁はチヨダのおでんの味と正田醤油(綾瀬)、なると巻は静岡県焼津のヤマ正商店のものだった。

おぐぎんざ商店街のおすすめ店

さて、おぐぎんざ商店街には九州屋蒲鉾店以外にも魅力的なお店がたくさんある。その一部を紹介しよう。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:丸栄食品

九州屋蒲鉾店からすこし南側に歩いた場所にある丸栄食品は、餃子と焼売の専門店だ。約60年前に創業とのことなので、昭和34年(1959年)頃だと思われる。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:丸栄食品

当初は餃子と焼売の卸業として営業し、弁当屋などの業者が顧客だったという。おでん種専門店にも卸していたそうだ。そう、餃子巻きや焼売巻きの種になっていたのだ。筆者はこちらの焼売が大好きなのだが、魅力は味だけではない。二代目のおかみさんがとても上品でお喋り好きなので、お話ししたいこともありつい寄ってしまう。声優の横山智佐似の美人というのもポイントだ。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:丸栄食品のポーク焼売

焼売は野菜、肉、カレー、ポークの中から選べるが、いちばんおすすめはポーク焼売だ。とにかく大きく、挽肉がたっぷり詰まっている。最近はおかみさんの息子さんが修行中だそうで、サイズの加減がわからずさらに大きくなっているという。卸業をやめてから少数を小売するようになったそうだが、後継者ができたのは喜ばしいかぎりだ。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:若どりの店 鳥茂

もう1軒は九州屋蒲鉾店の隣にある鶏肉専門店、若どりの店 鳥茂だ。鳥茂は鳥取県の大山で飼育された大山どり(だいせんどり)を扱っていて、鶏肉の惣菜も豊富に揃えている。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:若どりの店 鳥茂

焼き鳥など魅力的な商品も多いが、筆者はクリスマス時期に販売されるローストチキンがお気に入りだ。予約をしている地元客も多いので品薄だが、食べるとその人気ぶりがわかる。油はすっきりしていながら、肉厚でとても美味しい。また、鳥茂はおかみさんや手伝いをしているお孫さんなどの人柄がとてもよい。おぐぎんざの商店は皆親しげで、地元客でなくとも実家に帰った気持ちになる。

九州屋蒲鉾店のおでん種

九州屋蒲鉾店では17種類のおでん種を購入した。目移りしてしまったが、変わり種を中心にチョイスした。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種

時計回りに12時から、大判揚、イナリ詰、もち巻揚、肉だんご揚、カレーボール、つぶ貝、自家製すじ、スタミナ揚、自家製いわし、かき揚、横詰、玉子巻(中央上左)、つまみ揚(中央上右)、たこボール(中央下右)、しいたけ(中央下中)、ほたて巻揚(中央下右)。このほかに上なると巻も購入。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店 おでん味噌

なお、九州屋蒲鉾店では味噌おでん用の味噌まで販売している。東京のおでん種専門店ではめずらしい。使いきりサイズで扱いやすく、味は濃厚でコクのある甘みが魅力だ。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種

大根などを下茹でしてから練り物のおでんを投入して、さっと温めれば完成だ。たくさんのおでん種が集まっていると心がうきうきしてくる。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種

九州屋蒲鉾店の練り物は柔らかいが弾力はすこし強めで、下町の荒川区を代表するおでん種の食感だ。揚げ色もきつね色で美しい。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種

大判揚は魚のすり身以外になにも入っていないプレーンなおでん種。名前のとおり大きいので、半分に切って食べるとよい。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 肉だんご揚

肉だんご揚は牛すじのように粘りのある細かい肉が入っていて、甘みがあって美味しい。玉ねぎ、紅生姜、キャベツなどを混ぜ込んである。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 たこボール

たこボールは刻んだタコがたくさん入っている。柔らかな魚のすり身に対してタコのくにくにとした食感がよいアクセントになっている。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 カレーボール

カレーボールはカレー粉の分量を抑えめにしてあり上品な味だ。玉ねぎが一緒に混ぜ込んである。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 つぶ貝

つぶ貝はもっちりと弾力のある食感が魅力だ。淡白な味わいはおでん汁によく合う。ちなみにつぶ貝という名は通称で、さまざまな種類がある。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種

九州屋蒲鉾店は横詰やイナリ詰など、ほかのおでん種専門店で見られない変わり種が多い。さっそく食べてその味を確かめてみよう。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 横詰

横詰は魚のすり身に野菜を混ぜたものを油揚げに挟んだおでん種だ。ふわふわのすり身に入った根昆布、桜エビ、人参などが風味を醸しながらも、全体的には淡白な味付け。油揚げの香りがとてもよい。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 イナリ詰

イナリ詰ははんぺんのようにふわっとしたすり身で、おそらく豆腐など混ぜ込んだものだろうか。チーズが入っていて、子どもが喜ぶやさしい味わいだ。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 つまみ揚

つまみ揚は枝豆、桜エビ、玉ねぎが入ったひとくちサイズのおでん種。枝豆の爽やかな風味が口じゅうに広がって美味しい。彩りも美しい。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 しいたけ

しいたけは椎茸の笠の内側に魚のすり身が詰め込まれている。椎茸の身がしっかりしており、噛めば噛むほど椎茸の香りが広がる。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種

定番ものも紹介していこう。どのおでん種も安定した美味しさで、どれを食べるか迷うのも楽しみのひとつだ。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 スタミナ揚

スタミナ揚はニラ、もやし、黒ごま、唐辛子が入っている。それぞれの具材の味の調和がとれていて食べやすい。辛味はすこし強めで、あとをひく美味しさだ。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 かき揚

かき揚は人参ともやし、三つ葉が入っている。スタミナ揚に似ているが、こちらはあっさりとした味わいだ。野菜それぞれのほのかな香りを楽しむことができる。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 玉子巻

玉子巻は通称「バクダン」と呼ばれる魚のすり身に鶏卵がまるごと入ったおでん種。根強いファンが多いが、意外に東京のおでん種専門店で扱っているところは少ない。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 もち巻揚

もち巻揚は黒ごまがまぶしてある。これは練馬区北町にあるえびすや蒲鉾店のもち巻でも同様で、店主同士の親交から影響を受け合っているのだろうか。餅と黒ごまの組み合わせはご想像どおり抜群だ。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 ほたて巻揚

ほたて巻揚はホタテがまるごと魚のすり身に入っている。ホタテの旨味がぎゅうっと凝縮されていて、噛んでいると幸せな気持ちになってくる。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店のおでん種 自家製いわし

自家製いわしはイワシのすり身に根昆布と人参が混ぜ込んである。つみれよりも大判なので、イワシ好きにはたまらないおでん種だ。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店

今回は三代目のおかみさんと、二代目のおかみさんと思われる女性ふたりにお話をうかがった。三代目のおかみさんは若くて綺麗な方だったので「後継ぎがいて安心ですね」と言ったら、「30歳になる息子は別の仕事をやっているので、継がないと言っている」と答えられてびっくりした。三代目で終わってしまうのは残念だが、とにかく九州屋蒲鉾店は元気な女性たちが魅力的なお店である。活気があって、訪れるだけで元気をわけてくれるような気がした。

東京都荒川区東尾久:はっぴいもーる熊野前商店街

おぐぎんざ商店街は非常に活気のある商店街だが、徐々に店舗は減っているという。同じ道に続くはっぴいもーる熊野前商店街も同じくシャッターを閉めたままの商店が多くなってきた。女優の石原さとみが主演した日本テレビ系ドラマ「高嶺の花」のロケ地になるなど、話題も多いので残念だ。筆者はこの商店街にとても愛着があり、とくに甘味処兼喫茶店の高橋屋が閉業したのは寂しい。高齢の店主ご夫婦が魅力のよいお店だった。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街

舎人ライナーが開通してアクセスも便利になり、生活するにはもってこいの場所なので、東尾久地域がより活性化することを願ってやまない。おぐぎんざ商店街のような東京の魅力あふれる商店街と、美味しいおでん種を提供する九州屋蒲鉾店を、もっと多くの人たちに知ってもらいたいと思う。

九州屋蒲鉾店の基本情報

〒116-0012 東京都荒川区東尾久4-31-11
03-3800-0328
定休日:火
営業時間:9:00~19:20
九州屋蒲鉾店のWebページ(おぐぎんざ商店街のWebページ)

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