丸山晶代さん(ちくわぶ料理研究家)インタビュー

今回は「ちくわぶ料理研究家」として活躍する丸山晶代さんのインタビューをお届けする。駄菓子屋文化が根付いた東京下町の足立区で育ち、ちくわぶは常に身近な存在であり続けた。丸山さんはちくわぶの魅力を多くの人たちに伝えようと、レシピの考案やイベントの開催、テレビやラジオの出演、そして書籍の執筆まで手がける。東京のおでんになくてはならないちくわぶの魅力を、丸山さんの「ちくわぶ愛」を通して紹介できればと思う。

丸山晶代さん(ちくわぶ料理研究家)
ちくわぶ料理研究家の丸山晶代さん(赤羽の一番街シルクロードにて)

– 丸山さんは足立区の新田のご出身だそうですね。あの辺りは駄菓子屋文化が色濃かったと記憶しています。

丸山さん:はい、「こぶつゆ」ラーメンで有名なセキノ商店など、3軒の駄菓子屋がありました。学校が終わると駄菓子屋へ向かい、駄菓子のほかに「ぼった」と呼ばれるもんじゃ焼き、おでんを食べていました。

東京都足立区新田
丸山さんの育った足立区新田。トーアスチール製鉄所があった広大な跡地は再開発され、風景は変わりつつある

セキノ商店にはぼったが食べられる小屋があって、はしごを使って中に入りました。焼き台はひとつしかなく、子どもが4人入ればいっぱいになるような場所でした。
ぼったは月島のもんじゃのように土手を作るほど具材は入っていなくて、少量のキャベツが入った生地を薄く焼いて、お煎餅のようにして食べます。今の食べ物とは比較にならないくらいシンプルなものでしたが、子どものお小遣いで空腹を満たすことができました。

東京都足立区新田:セキノ商店
セキノ商店(足立区新田3-15-10)の外観。現在でも多くの子どもたちが訪れる

焼き台の清掃は子どもたちに任せられていたり、上級生の先客がいると空気を読んで「今日はこぶつゆにしよう」と切り替えたりして、子どもなりに社会性を身に付けたと思います。家から持ち出したソーセージや玉子を内緒で生地に混ぜて、店主のおばちゃんに怒られたのも懐かしい思い出ですね。

東京都足立区新田:セキノ商店のこぶつゆ
セキノ商店名物のこぶつゆ。かつては30〜40円で販売していた

こぶつゆも大好きだったので、自分で再現してみたことがあります。試行錯誤を繰り返して同じ味になったときは嬉しかったのですが、やっぱりおばちゃんが作ってくれたものをお店で食べるのがいちばん美味しいのだと分かりました。

東京都足立区新田:セキノ商店
今年で86歳のセキノ商店の店主のおばちゃん。子どもたちの悪さを今もよく覚えていて、懐かしそうに微笑んでいた

おでんも少ないお小遣いでお腹を満たせるものでしたが、ウインナー巻などは高かったので、ボールやカレーボール、そしてちくわぶを買っていました。セキノ商店近くの公園や2丁目の銭湯の前に出ていたおでん屋台も利用していましたが、私が小学2年生のときに親が駄菓子やおでんを売るお店を始めたあとは、そこでおでんを食べていました。

東京都足立区新田:セキノ商店

冬の寒い時期などはこぶつゆやおでんのちくわぶが恋しくなって、お財布と相談しながらやりくりしたのを思い出します。

– 幼少期からちくわぶを食べていたのですね。いつごろまで駄菓子屋に通ったのですか?

丸山さん:小学高学年になると行く回数は減りましたが、高校くらいまでは親のお店で値札貼りや仕入れなどの手伝いをしていたので駄菓子屋とおでんは身近な存在であり続けました。また、ちくわぶは母が料理によく入れていました。私はひじきの煮物や筑前煮に入ったちくわぶが大好きで、たまに入っていないと猛烈に抗議していました。

– ちくわぶは駄菓子屋とお母さまの料理の思い出でもあるのですね。

丸山さん:私にとってちくわぶはずっと身近な存在だったのですが、大人になってから「ちくわぶはおでんにしか入れない」という友人の言葉を聞いて愕然として寝込むほどでした(笑)。もっとちくわぶの魅力と可能性を多くの人たちに伝えたいと思い、ちくわぶ料理研究家になろうと決意しました。

ちくわぶの筑前煮

– ちくわぶ料理研究家として、ちくわぶを具体的にどのようなイメージで広めたいと思っていますか?

丸山さん:活動を始める前のことですが、東京以外の出身の方とおでん屋に行く機会がありました。そのときにちくわぶを食べてもらったのですが、反応はいまいちでした。「こんなに美味しいのになぜだろう」と不思議に思ったのですが、私が幼少期に経験したようなちくわぶの思い出がないからだと悟りました。私が東京以外の名産物をさほど美味しくないと感じることがあるように、ちくわぶもバックグラウンドがないと美味しいと感じにくいのだと思います。

はじめて食べたちくわぶが美味しく調理されていない場合もあります。味が染みてない、ゴムみたい、粉っぽい、消しゴムみたい、グズグズでなんの歯応えもない、そんな経験をしたらまた食べたいとは思いません。それであれば、おでんに入れた場合の美味しい調理方法や、おでん以外の違う食べ方も提案してみようと思いました。焼いたり、唐揚げにしてみたり、とにかくいろいろなレシピをたくさん考案することにしました。そうすることで、今までちくわぶに対して無反応だった方々にも受け入れてもらえるようになりました。
その後はレシピ以外にも、テーマソングやキャラクター作りなど、できることはなんでもやってみようと活動しています。

最終目標は私が育った駄菓子屋文化の思い出のように「東京下町のおでんといえばちくわぶ」として認知されることです。イメージは「静岡おでんの黒はんぺん」に近いですね。でも、今はいろいろなアプローチをして、ちくわぶが広く認知される基盤を広げていこうと思っています。

おでん種やさんのちくわぶ

– 以前に比べてちくわぶの流通と認知度はどうですか?

丸山さん:北海道から沖縄まで流通していますが、冬限定のところが多いです。「マツコの知らない世界」が放映されたときは5月の連休だったので、興味を持っても近くで売っていないという声を耳にしました。
カネテツデリカフーズのちくわぶはタカトーがOEM生産していて、現在関西でも通年商品になっています。これはタカトーさんが私のレシピでプレゼンされたことがきっかけだったそうです。

私が活動を始めたころに比べれば、ずいぶんちくわぶが認知されるようになりました。これはちくわぶ好きの有名人の方々が紹介したことが大きいと思っています。リリー・フランキーさんのおでんくんのキャラクターに登場したり、「おまかせ!みらくるキャット団」というアニメにも登場しています。SNSの影響も大きいと思っています。ネガティブなイメージを持たれる方もいますが、話題になるだけでもありがたいと思っています。

– 思い入れのあるちくわぶメーカーはありますか?

丸山さん:北区赤羽にある川口屋さんです。私の地元が赤羽に近いことと、私が運営する「元祖猫商 丸山商店」が以前、赤羽の隣町の王子にあったことが大きいです。直接つながったのはTwitterのフォロアーさんと川口屋さんが知り合いだったことからです。それから工場の見学や製法を教えていただりと、交流が始まりました。

川口屋さんと阿部善商店さんがコラボした「東京ちくわぶ」では、パッケージ裏のQRコードでアクセスできるちくわぶレシピを提供させていただきました。

川口屋のちくわぶ商品
川口屋のラインナップ。上から阿部善商店とのコラボ「東京ちくわぶ」、おでん屋さん仕様、北海道産小麦粉100%の内麦、レギュラー

工場見学の際には、職人さんの手についたちくわぶダコを見せていただき、感動したのを覚えています。また、手間暇かけて作られていることをあらためて知り、ちくわぶを広めていく使命感がさらに増しました。できたてのちくわぶは本当に美味しくて、パン屋さんみたいにゆでたてのものを販売したいと思ったくらいです。

川口屋さんには私がメディアに露出する前から全面的にサポートしていただき、川口屋さんなくしては今の自分がないのではないかというくらい感謝しています。本当に、特別な存在です。

– ちくわぶの魅力と、これからの課題についてお聞かせください。

丸山さん:ちくわぶは小麦粉、水、塩だけで作られたシンプルな食材で、調理法や味付けによって美味しさが変化するのが最大の魅力です。食感ももちもちのアルデンテにしたり、汁を含ませてしっとりさせたり、食べる人の好みに合わせることができます。だからこそ、調理しないとその魅力が発揮されない食材とも言えます。
現在発売されているちくわぶは調理前のものばかりなので、開けたらすぐに食べられて、美味しいと感じるお惣菜のような手軽さが必要なのではないかと思っています。

– 直近の活動と、これからの予定を教えてください。

丸山さん:過去に46回続けた「ちくわぶナイト」というイベントの拡大版、「ちくわぶフェス」を今年10月に渋谷で開催しました。

「ちくわぶフェス!世界初のちくわぶフェスティバル」(2019年10月8日@渋谷)
「ちくわぶフェス!世界初のちくわぶフェスティバル」(2019年10月8日@渋谷)

ちくわぶメーカー各社に参加していただいて今まで交流のなかった業界内のつながりに貢献できたことと、訪れたゲストの方々に喜んでいただいて大成功のうちに幕を閉じることができました。また、「マツコの知らない世界」などのメディアに出演したことも大きな成果です。

「ちくわぶの世界 - 東京下町のソウルフードを味わう」丸山晶代著、渡邉博海(写真 )、ころから株式会社

そして、11月8日には念願の書籍が発売されます。
ちくわぶの世界」というタイトルのとおり、ちくわぶに関するあらゆる情報が掲載されています。ちくわぶの歴史や製法、最終的に原料となる小麦粉まで徹底的に取材しました。小麦粉は日清製粉さん、ちくわぶに関しては主要なメーカーはほぼ取材しています。もちろんレシピも500以上あるもののなかから厳選して収録しています。紙面の制約上、載せられなかったものはブログで少しずつ紹介していこうと思っています。

丸山晶代さんのプロフィール

丸山晶代(ちくわぶ料理研究家)

日本で唯一のちくわぶ料理研究家、猫グッズ通販・丸山商店店長。
1969年東京都足立区生まれ、板橋区在住。
上野忍丘高校家政科卒業後、アパレル、広告代理店、雑貨屋店長、写真屋店長を経てフリーランスに。
子どものころから慣れ親しんでいたちくわぶを広めるために料理方法を考案し、2011年にちくわぶ料理研究家として活動開始。「マツコの知らない世界」をはじめ、メディアの出演多数。

書籍「ちくわぶの世界」販売ページ(丸山商店)
書籍「ちくわぶの世界」販売ページ(Amazon)

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