魚河岸にルーツを持つ増田屋蒲鉾店(庚申塚)

増田屋蒲鉾店(庚申塚)は「お婆ちゃんの原宿」として親しまれる巣鴨の地蔵通り商店街のすぐそばにあるおでん種専門店だ。東京にあるほかの増田屋とはすこし異なる、魚河岸にルーツをもつ最後の1軒だ。2代目店主に詳しくお話を伺い、そのルーツを探ってみた。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)の冷やしおでん

前回東京おでんだねが増田屋(庚申塚)に訪れたのは2年前。活動を始めてまもない頃だったので、満足した記事を書くことができなかった。今回の取材はそのリベンジというわけだ。

魚河岸にルーツを持つ増田屋蒲鉾店(庚申塚)

豊島区西巣鴨にある庚申塚商栄会は、旧中山道にある庚申塚から西に延びる商店街だ。「お婆ちゃんの原宿」として親しまれる巣鴨の地蔵通り商店街につながっており、のどかな雰囲気を漂わせている。

東京都豊島区西巣鴨:庚申塚商栄会

昔は非常に賑わっていたそうだが、最近は鮮魚店など生活の基盤となるお店が閉業しつつあるそうで利用客が減少しているそうだ。それでも元気に営業を続けるお店はまだまだ残っており、昔ながらのたたずまいを見学するだけでも面白い。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)

増田屋蒲鉾店(庚申塚)は庚申塚商栄会の東側、都電(都営荒川線、東京さくらトラム)の庚申塚駅の近くにお店を構えている。戦後まもなく築地市場にあった蒲鉾仲卸の増田屋から暖簾分けして開業し、現在は2代目店主が営業を続けている。

築地の増田屋は女優の中田喜子さんの実家であり、日本橋の魚河岸時代から続く老舗だった。戦前は小田原町(築地6丁目)でお店を営業していたという。
増田屋(庚申塚)の2代目店主によると、お父様である初代店主のお母様(御祖母様)が中田喜子さんの御祖父様と兄弟姉妹の関係で、製造した蒲鉾を卸していたという。

築地の増田屋はほかの増田屋と同じく増田屋会(詳細は記事「増田屋の系譜」参照)に所属していたが、ルーツは異なるのだという。増田屋は大きく立石店などのものと魚河岸のものに分かれており、過去に意気投合してひとつになったそうだ。

増田屋蒲鉾店の系譜図
増田屋蒲鉾店の系譜図:クリックして拡大

手元にある増田屋会の系譜図を調べてみると、まず御徒町店増田屋総本店の中山彦太郎氏の名前があり、そこから茶や町、岩井町、福井町、番町と分かれている。茶や町から連なるのが今も営業を続ける立石店綾瀬店堀切店京成小岩店などで、番町から連なるのが築地店や増田屋(庚申塚、上図では巣鴨)だ。たしかにこのふたつが2大系統となっている。

店主の姓はどちらの系統も「中山」が多く、創始者の中山彦太郎氏の親類なのだろう。系統は分かれても、どこかでつながりがあったのかもしれない。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)

店内に掲げられている木製の看板には築地の増田屋だけでなく立石店の屋号も確認でき、増田屋会の絆が見てとれる。この看板は初代の頃からのものだそうだ。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)

さて、そろそろ増田屋(庚申塚)に話を戻そう。
ショーケースには揚げ蒲鉾のおでん種が14種類ほどが並ぶ。サツマ揚、イカ天、シューマイ巻、ウインナー巻など定番ものが中心だ。カレーボールはほかのおでん種専門店のものより大きめのサイズだ。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)

揚げ蒲鉾以外のおでん種は魚のすじやはんぺん、つみれ、牛すじなどが揃えてある。はんぺんは銚子の嘉平屋、白滝やこんにゃくは向島の柳澤商店のものだ。以前は魚のすじやはんぺんは自家製だったが、原材料の入手や販売量の関係で外から仕入れている。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)

できたての調理済みおでんも一年を通して販売している。夏場も売れ行きはいいそうだ。巣鴨地蔵通り商店街の散策のお供としても最適だが、公園などに移動してマナーに気をつけながら楽しもう。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)

揚げ蒲鉾や玉子、はんぺん、ちくわぶなどが揃ったお得なセットも販売している。おでん汁もたっぷり入っているので、鍋に入れて温めるだけで本格的なおでんが楽しめる。

定番ながらそれぞれに魅力が詰まった増田屋蒲鉾店(庚申塚)のおでん種

今回は前回購入していないものを中心に、9種類をチョイスしてみた。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)のおでん種

時計回りに12時から、ウインナー巻、下足巻、チーズ巻、シューマイ巻、イカボール、エビ入、イカ天、ゴボー巻、ウズラ玉子巻(中央右)。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)の冷やしおでん

今回も夏らしく冷やしおでんにしたが、大根、白滝、こんにゃく、魚のすじを入れて通常の温かいおでんのようなラインナップにしてみた。野菜は旬にこだわらず、レンコン、里芋、ペコロス(小さな玉ねぎ)、ししとうという渋みのあるものを選んだ。

レンコン、ペコロス、ししとうは焼き色をつけるために軽く炒めたが、ほぼ温かいおでんと同じように調理した。しっかり味が染みるように鍋ごと一晩冷蔵庫に入れれば完成だ。冷やしおでんの作り方は「佃忠(田端)のおでん種で冷やしおでんをつくる」の記事を参考にしてほしい。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)のおでん種 イカボール

増田屋蒲鉾店(庚申塚)のおでん種は定番ものが多いが、それぞれの個性をしっかりと感じる堅実な仕上がりとなっている。

イカボールは刻んだイカのほかに紅生姜や人参が入っていて、彩り鮮やか。イカの旨味と人参の甘さ、紅生姜の爽快感が見事に融合している。ごろりとした大きめのサイズなので、食べたときに満足感がある。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)のおでん種 ウインナー巻

ウインナー巻はぷりぷりの赤ウインナーが入っており、懐かしい味を楽しめる。魚のすり身は弾力がありながらもふんわりしていて、噛むごとに魚の旨味がにじみ出る。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)のおでん種 下足巻

下足巻は大きめのイカのゲソが入っている。ゲソの大きさやすり身の量のバランスが絶妙で、定番の安定した美味しさを楽しめる。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)のおでん種 チーズ巻

チーズ巻は魚のすり身の中にプロセスチーズが入っている。魚のすり身の弾力がほかのおでん種よりも強めになっていた。チーズのまろやかな味にほっとする。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)のおでん種 シューマイ巻

シューマイ巻は可愛らしいひと口サイズの大きさ。このサイズで焼売の頭をきちんと外に出すのは至難の技だろう。焼売を取り囲むすり身の薄さは職人の芸を感じさせる。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)のおでん種 エビ入

エビ入は魚のすり身に桜海老を混ぜ込んで扇状に成形している。見た目の華やかさもさることながら、エビの風味たっぷりの香り豊かな味わいも素晴らしい。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)のおでん種 イカ天

増田屋蒲鉾店(庚申塚)のおでん種は手頃なサイズのものが多いが、イカ天は大きめに作られている。ごろりとしたイカとすこし濃いめに揚げられた魚のすり身が印象的なおでん種だ。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)のおでん種 ゴボー巻

定番のゴボー巻は基本に忠実なつくりとなっており、ゴボウと魚のすり身の味をしっかり楽しめる。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)のおでん種 ウズラ玉子巻

増田屋蒲鉾店(庚申塚)のウズラ玉子巻はウズラの頭が出ていない密閉型だ。半分に切ったときの形状が可愛らしい。他店のうずら巻よりも小ぶりながら、魚のすり身の厚みはしっかりしている。

東京都豊島区西巣鴨 庚申塚商栄会:増田屋蒲鉾店(庚申塚)

何軒もあった魚河岸系の増田屋は、増田屋蒲鉾店(庚申塚)で最後の1軒となってしまった。そして、このお店も2代目店主で最後になるという。軒先にはいつも馴染みのお客さんが集まって談笑しているが、お店を閉じればその光景も消えてしまうだろう。とても残念なことではあるが、蒲鉾づくりを通してこれまで何十年も私たちに笑顔を届けていただいた店主には、くれぐれもお身体を優先していただければと思う。

増田屋蒲鉾店(庚申塚)の基本情報

増田屋蒲鉾店(庚申塚)
〒170-0001 東京都豊島区西巣鴨3-9-3
03-3918-1674
定休日:日曜日
営業時間:10:00〜19:30
増田屋蒲鉾店(庚申塚)のWebサイト(庚申塚商栄会のWebサイト)

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