今回はおでんのロールキャベツの調理方法を紹介する。基本の作り方からさっぱり食べられる鶏挽肉と豆腐、野菜、魚を使ったものまでさまざまなバリエーションを紹介しよう。
洋食のロールキャベツが和食のおでんに加わった由来は定かではないが、おでんの出汁との相性は抜群で、今や定番のおでん種としてその地位を確立している。
- ロールキャベツの歴史とおでんとの関係
- キャベツの種類と選び方、保存方法
- 基本のロールキャベツの作り方
- 鶏挽肉と豆腐のロールキャベツ
- 鮭(魚)のロールキャベツ
- 野菜のロールキャベツ
- 薄切り肉とゆで卵のロールキャベツ
ロールキャベツの歴史とおでんとの関係
ロールキャベツは日本でもお馴染みの家庭料理となったが、発祥は現在のトルコがあるアナトリア半島だといわれている。キャベツではなく葡萄の葉で肉や米を包んだ「ドルマ」という料理で、ヨーロッパや中央アジア、アラブ社会などに伝わっていったという。世界各国にはさまざまなロールキャベツがあり、例えばクロアチアやルーマニアなどの東欧ではキャベツの漬物を用い、北欧フィンランドではオーブンで焼き煮にする。
日本では明治26年(1893年)10月4日、福沢諭吉が創刊した「時事新報」でロールキャベツの原型となる「キャベーヂ巻き」の献立がはじめて紹介された。これにちなんで10月4日は「ロールキャベツの日」となっている(参考:ヤマガタ食品株式会社「ロールキャベツの日」)。なお、ロールキャベツは和製英語で英語では「cabbage roll」という。
おでんに入れるようになった由来は定かではないが、現在では定番のおでん種として認知されている。干瓢で巻く方法は日本独特のものだ。
東京のおでん種専門店でも販売しており、葛飾区立石の増田屋(立石)や荒川区西尾久の九州屋蒲鉾店、豊島区池袋の佃忠(池袋)などさまざまなお店で販売している。
ロールキャベツが有名なおでん料理店は京都の伏見にある「べんがらや」だ。ロールキャベツの中には来店客の「幸せの芽」が出るように正月に用いる縁起担ぎの野菜、クワイが入っている。
キャベツの種類と選び方、保存方法
キャベツは季節によって種類があり、春キャベツと冬キャベツ、そして冬キャベツを改良した夏キャベツに分けられる。
春キャベツは葉がふんわりとしてみずみずしく、サラダなど生食に向いている。冬キャベツは葉に厚みがあってしっかりしているので加熱料理に向いている。夏キャベツは春と冬の両方の特徴を兼ね備えており、生でも加熱でも美味しい。
キャベツを選ぶ際は芯の切り口が太すぎるものや外側にある緑色の葉が傷んでいたり、乾燥しているものは避ける。春キャベツは葉の巻きが緩いもの、冬キャベツは逆にしっかり葉が詰まったものを選ぶといい。ずっしりと重いものもよいとされている。
キャベツの保存は芯をくり抜いて、水で湿らせたキッチンペーパーを詰めておく。さらにポリ袋に入れて緩く口を縛り、冷蔵庫で保存する。芯はマリネにしたり、出汁の材料にするなど工夫次第で活用できる。
基本のロールキャベツの作り方
今回はおでんに入れるロールキャベツの調理方法を紹介するが、基本的に通常の作り方で問題ない。
中に入れる具材の定番は挽肉(肉だね)だが、合挽き、豚挽肉、鶏挽肉と好みで選ぼう。合挽きは牛の脂の甘みが楽しめ、鶏はあっさり、豚は両者のバランスが取れた味わいとなる。肉のうまみをたっぷり含んでいるため、おでんの味にも影響し、多少おでん汁が濁るのため別鍋で調理する方法も考えられる。創作レシピとして挽肉の代わりに薄切り肉を用いる場合もある。
おでん料理は具材が豊富でボリューム感があるため、肉だねではなく野菜や魚を包んでもいいだろう。また、豆腐や高野豆腐、すりおろしたレンコンなどを使用してさっぱりとした味にしてもいい。
それでは早速、基本となるロールキャベツのレシピを紹介していこう。4個ほど作る想定で挽肉120gを基準にしている。
材料はキャベツ4枚、好みの挽肉120g、玉ねぎ60g、パン粉4.5g(小さじ1弱)、卵1/3個、塩1.5g(小さじ1/3弱)、胡椒少々。
キャベツは芯を包丁でくり抜いたあと、外側の葉から丁寧に1枚ずつ剥がしていく。キャベツを丸ごとラップしてレンジで加熱(600Wで5分程度)すると柔らかくなって剥がしやすいが、流水を葉の間に入れながら水の重みを利用して剥ぐこともできる。
どの葉がいちばん外側なのかを把握してから、芯側から剥がしていく。水道水を流し込んで少しずつ剥がしていくと、あるとき葉の全体がモクッと分離する感触が掴めると思う。
鍋に水を入れて火をかけ、沸騰したらスプーン1杯ほどの塩を入れ、キャベツの葉を投入していく。芯を中心に3分ほど茹でたら取り出し、冷水に浸す(浸す工程は省略してもいい)。
適度に水気を取ったらキャベツの芯を包丁で削ぎ落とす。削ぎ落とした芯はみじん切りにして肉だねに加えてもいい。
芯をすりこぎなどで叩いて繊維を柔らかくする方法もある。今回は削ぎ落としと叩く工程を一緒に行った。
キャベツの下ごしらえが完了したら、次は肉だねに取り掛かる。玉ねぎはみじん切りにして、挽肉とパン粉、卵、塩、胡椒と一緒にボウルに加える。
手を氷水などで冷やしてから、握るようにして材料が満遍なく混ざるようにこねる。挽肉は潰すようにしっかりこねたほうがソフトな風合いになるので、手抜きをせず丁寧に作業するといいだろう。
肉だねが混ざったら俵型に成形する。作りたい個数を基準にするならボウル内で等分に切り分けてから成形する。好みの大きさを基準にするなら、ひとつずつ成形してもかまわない。余った肉だねは肉団子のおでん種として利用できる。
キャベツの葉をまな板に敷いて肉だねを包む。キャベツは芯を手前にして、肉だねを中央手前に配置する。
キャベツと肉だねを前方に向かって包んでいくが、1周巻いたら片側(上写真では左側)を畳んで反対側はそのままにしておく。
包んでいる途中で畳んでいない側の葉を人差し指の第一関節ほど余らせながら折り込み、最後まで巻いたら余った葉を内側に押し込んで完成だ。
干瓢で結ぶ場合は崩れることはないので、包み方に神経を使わなくてもいい。くるりと干瓢を通して本結びか縦結びにする。無漂白の干瓢はそのまま巻いてもかまわないが、漂白のものは水洗いや塩もみなど下ごしらえをするといいだろう。干瓢についての詳しい説明は「かんぴょう(干瓢)の戻し方とおでんでの活用方法」を参考にしてほしい。
千代田区神田にあるおでん料理店「もんず」(千代田区鍛冶町1-9-19)のロールキャベツは干瓢を十字に巻いている。通常の巻き方よりもしっかりと固定されるし、見た目も個性が出て面白い。
干瓢以外に戻した昆布やスパゲッティ、爪楊枝などを利用して留める方法もある。
ロールキャベツをすべて巻き終えたら、おでんの鍋に投入する。なるべく隙間がないように並べて弱火で20分程度煮る。中まで火が通れば食べられるが、キャベツをより柔らかくしたい場合は40分から1時間程度煮てもいいだろう。肉の灰汁(あく)が出るので、こまめに取り除いておく。
挽肉を使ったロールキャベツは肉のうまみが溢れ、おでんの味をさらに深めてくれることだろう。なにもつけずに食べても美味しいが、柚子胡椒や八丁味噌をつけて味に変化を与えてもいいだろう。
鶏挽肉と豆腐のロールキャベツ
もっとヘルシーにロールキャベツを楽しみたいなら、挽肉に豆腐を混ぜた肉だねがおすすめだ。
鶏挽肉にはもも肉と胸肉の2種類があるが、もも肉はジューシーで満足感があり、胸肉はさっぱりとしている。豆腐は木綿のほうがまとまりやすい。
ロールキャベツを4個つくる想定であれば、肉だねは120gとして、鶏挽肉60g、豆腐60g用意する。ほかの材料は前述の基本のロールキャベツと同量だ。
豆腐はキッチンペーパーや布巾で2重に包み、豆腐の2倍ほどの重しをのせて水気を取る。このとき、均一に重さがかかるようにトレーなどをはさむといいだろう。時間は30分程度で問題ない。時短をしたい場合はレンジも使用可能だ。玉ねぎはみじん切りにしておく。
ボウルに鶏挽肉、豆腐、みじん切りにした玉ねぎ、パン粉、卵、塩、胡椒と一緒にボールに加える。
手は氷水などで冷やしておき、材料すべてが満遍なく混ざり合うようによくこねる。その後の作り方は基本のレシピと同様だ。
豆腐が入っているためふわふわの食感となり、脂のしつこさもなくさっぱりと味わうことができる。鶏肉や豆腐はおでんにおなじみの具材なので、ほかのおでん種とも違和感なく馴染むことだろう。
鮭(魚)のロールキャベツ
次に紹介するのは鮭の切り身を使ったロールキャベツだ。おでんは魚を使った具材が豊富なので、非常に相性がいい。
魚を使ったロールキャベツにはさまざまなバリエーションがある。鮭だけでなく、タラやマグロを使用してもいい。また、つみれなどすり身を使うロールキャベツもあるが、今回は揚げ蒲鉾などのおでん種と差別化をはかりたかったので、切り身をそのまま使用することにした。
鮭は甘塩鮭の切り身を使用する。手に入りやすくて味付けも不要、下ごしらえも簡単だ。
切り身の皮と骨を包丁などで取り除き、好みの大きさに切り揃える。大きさが不揃いの場合は、複数まとめて一緒に巻いてしまえばいい。おでん鍋で煮れば、あっという間にできあがりだ。
野菜のロールキャベツ
複数の野菜を使用したロールキャベツはおでん汁がたっぷり染み込みつつ、甘みのある野菜のうまみを存分に味わえる。
おでん汁への影響も少なく、味の調和も取りやすい。栄養バランスや彩りを考えつつ、冷蔵庫の余った野菜も活用できる。
今回は人参とインゲン、椎茸をメインにして、余った玉ねぎとキャベツの芯を加えることにした。
人参は細切りもしくは千切り、インゲンは1/3程度に切り、椎茸は荒めのみじん切りにする。人参と椎茸は軽く茹でておき、火を通しておく。茹で汁はおでんに加えてもいいだろう。
キャベツの上にすべての種類の野菜をのせて巻いていく。手巻き寿司の要領で、切ったときに美しい断面になるように配置するといいだろう。
ちなみに、台湾の「亞東甜不辣」というお店には具材を入れないロールキャベツが存在する。キャベツとおでん汁のみのシンプルな味だが、それゆえに美味しさが際立つ。自宅でも簡単にできるので一度試してみてほしい。詳しくは「台湾のおでん、甜不辣、黑輪、關東煮」を参考にしていただきたい。
薄切り肉とゆで卵のロールキャベツ
最後に薄切り肉とゆで卵を使ったロールキャベツを紹介しよう。肉と卵という贅沢な組み合わせで、満足感もばっちり得られる。
キャベツに薄切り肉を重ねてくるくると巻いて作る。鶏卵は丸ごと1個入れるが、うずら卵を2、3個並べて巻いてもいい。
今回は豚ロースを使用したが、薄切り肉は牛でもいいし、バラ肉でもかまわない。また、ベーコンを使ってもいいだろう。
作り方はゆで卵を固茹でに仕上げるか半熟にするかですこし変わってくる。
固茹での場合は卵を10分程度茹でて殻を剥き、キャベツ、薄切り肉を重ねた上に置いて巻いていく。おでん鍋で20分程度弱火で煮て、肉に火が通れば完成だ。
半熟にしたい場合は肉に火が通るまで卵を煮ると黄身が固まってしまうので、あらかじめ薄切り肉に火を通しておくか加熱処理済みのベーコンを使用する。卵を6分程度茹でて殻を剥いて、キャベツと薄切り肉の上に置いて巻き、弱火で3分程度煮れば完成だ。
ロールキャベツは手間がかかるといわれているが、実際に調理してみるとそれほど面倒ではない。キャベツの彩りがおでんを華やかにし、味に深みも出る。今回の記事を参考にしながら、自分好みのロールキャベツをおでんに加えてみてほしい。