おでんの茶飯・とうめしの作り方

今回はおでんの茶飯・とうめしの作り方を紹介する。おでんにおいての茶飯はおでん汁で炊き込んだご飯のことで、屋台などのおでん屋さんで提供されてきた。作り方はとても簡単なので、好みの具材を入れて楽しもう。また、日本橋「お多幸本店」の名物料理、とうめしの作り方についても紹介したいと思う。

おでんの茶飯の作り方

醤油で炊く?お茶で炊く?茶飯の由来

ネットで「茶飯」を調べると、大きくふたつのレシピがあるようだ。ひとつは「醤油ベースの汁で炊いたもの」、もうひとつは「お茶で炊いたもの」だ。

おでんの茶飯の作り方:奈良茶飯

少し調べてみたところ、茶飯の起源として「奈良茶飯」があった。奈良茶飯は奈良の東大寺や興福寺で古くから食されてきた茶粥が発祥で、お茶で炊いたご飯に大豆が入っていた。江戸では浅草金竜山の料理茶屋で振る舞ったとされている。(参考:奈良のうまいものプラザ【食】奈良は日本の食文化発祥の地(鉄田憲男))。また、川崎宿では万年屋や亀屋といった料理茶屋でも提供されており、東海道中膝栗毛でも登場し、弥次さん、喜多さんが食べている。

おでんの茶飯の作り方:奈良茶飯の材料

江戸時代の寛永13年(1636年)から寛永20年(1643年)に作られた料理書「料理読本」には、より詳しい奈良茶飯(なら茶)のレシピが記載されている。それによると、袋に入れたお茶を小豆と一緒に煎じて、大豆とお米を混ぜて塩や山椒を加えて炊いたもので、栗を入れても良し、とのことだ。(参考:古典料理の研究 -寛永十三年「料理物語」について- 松下幸子、山下光雄、冨成邦彦、吉川誠次、P216

名飯部類 (教育社新書―原本現代訳)杉野権兵衛著、福田浩、島崎とみ子訳

別の書物も調べてみよう。教育社から刊行された「名飯部類 (教育社新書―原本現代訳)」(1989年、杉野権兵衛著、福田浩、島崎とみ子訳)には、享和2年(1802年)に書かれた炊飯関連の料理書「名飯部類」のほかに、江戸時代の炊飯ものの料理書が複数掲載されている。

「名飯部類」にも奈良茶飯がいくつか載っているが、こちらも塩を入れると書いてある。初期の茶飯の味付けは塩をつまんで入れるくらいのシンプルなものだったようだ。実際に「料理読本」のレシピで奈良茶飯を作ってみたが、塩だけのほうが大豆や小豆、お茶の香りと味わいが引き立っていた。

しかし、名飯部類よりも前に書かれた「料理伊呂波庖丁」(宝暦元年、1751年)には、煎茶に醤油と酒を入れるという記載がある。ここからは推察だが、奈良茶飯(茶飯)はほかの炊飯料理の味付けの影響を受けながら醤油や出汁を入れるようになり、次第にお茶を使わないものが出現したのかもしれない。

さらに、おでんが田楽から現在のような汁で煮たものに発展することで、おでん汁で炊く茶飯が普及していったのかもしれない。

なお、醤油ベースの茶飯は黄枯(きがら)茶飯とも呼ばれる。浜松周辺の遠州地方では桜飯やさくらごはん、おさくらと呼ばれている。

おでんの茶飯の作り方

うんちくはこのくらいにしておいて、早速茶飯のつくり方を紹介しよう。とはいっても本当に簡単なので、拍子抜けしてしまうかもしれない。

用意するもの

  • お米
  • 出汁(水1リットルで削り節20g、昆布20g):8
  • 醤油:1
  • お酒:1

出汁+醤油+お酒は、おでん汁の素、もしくは麺つゆのみ、醤油のみでも可

お好みで用意するもの
  • こんにゃく
  • 油揚げ
  • 干し椎茸
  • ひじき
  • 炒りごま

出汁と醤油とお酒で炊けば、ほぼ完成だ。決まったレシピはないが、一般的な東京のおでん汁に近づけるために鰹と昆布の合わせ出汁にする。しかし、おでんのお供としての茶飯なので「ちょっと薄いかな」程度でちょうどよい。こだわっても大差はないのでほどほどにしておこう。

市販のおでん汁の素や麺つゆを使っても美味しくできあがる。葛飾区立石の増田屋墨田区京島の大黒屋墨田区東向島の八幡屋文京区大塚の栄屋蒲鉾店などにはオリジナルのおでん汁があるので、おでん種専門店のものを使ってもよいだろう。

阿部善商店:茶飯の素

なお、宮城県塩釜市の阿部善商店からは茶飯の素が販売されている。食塩、醤油、砂糖、鰹節エキス、牡蠣エキスなどが含まれており、とても興味深い商品だ。

おでんの茶飯の作り方

おでんの茶飯は具が入っていないのが定番だが、好みでこんにゃくや油揚げを入れても美味しい。このほか、干し椎茸やひじきなどを入れてもよいが、あくまで茶飯はおでんのお供。五目ご飯ではないので、シンプルにしておいたほうがいいだろう。

通常のご飯を炊くように、炊飯器にお米を入れたら醤油や出汁を溶いた水を規定量まで入れる。具材を加えるならこのときに一緒に入れておこう。多少固めのほうがそれらしく仕上がる。

おでんの茶飯の作り方

スイッチを入れたら、あとは待つだけ。簡単に茶飯が完成だ。
東京おでんだねの筆者としては「おでんはおかず派」なので白米でもじゅうぶん美味しく食べられるのだが、おでんが主食という方も多いだろう。茶飯をあわせると、おでんもご飯も美味しく食べられる。同時に食べなくても、シメとして茶飯を食べてもいいだろう。

おでんの茶飯の作り方:干し椎茸入り茶飯

今回は主張の少ないこんにゃくと油揚げの組み合わせにしたが、干し椎茸を入れても美味しい。さらに炒りごまをかければ、茶飯だけで贅沢な料理になる。おでん汁を残しておいて、次の日に茶飯ベースの炊き込みご飯を作ってもいいし、余ったおでん種を刻んで混ぜて、おにぎりにしてもいいだろう。

日本橋「お多幸」のとうめしを再現

茶飯のバリエーションとして、豆腐をのせた「とうめし」の作り方も紹介しておこう。

東京都中央区日本橋:お多幸本店

とうめしは日本橋のお多幸本店が提供している人気料理で、InstagramなどのSNSでも頻繁に投稿されている。煮込んだ豆腐を茶飯の上にのせたシンプルな料理で、「とうめし」は日本橋のお多幸本店の登録商標となっている。お多幸本店とは別経営の新宿店などでも提供されているが、別の名称になっている。

東京都中央区日本橋:お多幸本店のとうめし定食

この人気料理を再現しようと多くの人たちがレシピを紹介しているが、こちらでも紹介しておこうと思う。もちろん本家のとうめしは長年継ぎ足しされたおでん汁で調理されるので、家庭で作るものとは一線を画す。お店で実際の味を確かめて、研究をしてもらいたい。

用意するもの

  • 豆腐(柔らかめの木綿、絹でも可):1丁
  • 豆腐用の出汁(水1リットルで削り節20g、昆布20g):8
  • 豆腐用の醤油:1
  • 豆腐用の酒:1
  • 豆腐用の砂糖:適量
  • 茶飯用の出汁(豆腐用と同じ):8
  • 茶飯用の醤油:1
  • 茶飯用の酒:1

薬味

  • 長ネギ
  • 七味唐辛子

東京都中央区日本橋人形町:双葉

まず、重要になるのが豆腐の選び方だ。お多幸本店では、日本橋人形町の甘酒横丁にある豆腐屋「双葉」(東京都中央区日本橋人形町2-4-9)の木綿豆腐を使用している。双葉は明治40年(1907年)に深川で創業し、昭和23年(1948年)に人形町へ移転した老舗だ。

東京都中央区日本橋人形町:双葉の木綿豆腐

双葉の木綿豆腐の表面は、たしかにお多幸日本橋本店のものと同じように見える。1丁の大きさも同じように感じる。

東京都中央区日本橋人形町:双葉の木綿豆腐

まず、豆腐の水切りを行う。ただし、あまり水を抜きすぎてしまうとお多幸本店のとうめしのような柔らかな食感が得られない。筆者がつくったときは水切りをきつめに行ってしまったが、パックから豆腐を取り出したら、手の上で軽く振る程度でいいかもしれない。とうめしに使う豆腐はお多幸本店が双葉に特注しているという情報もあるが、今後より深く調査していこうと思う。

双葉の豆腐が手に入らない場合は、柔らかめの木綿豆腐をチョイスするといいだろう。たとえば、株式会社京雅の「いちのとうふ 極もめん」は表面の雰囲気や柔らかな食感がとうめしに向いていた。ただし、三之助(もぎ豆腐店)の只管豆腐のように、柔らかすぎると煮込んだときに崩れてしまうので注意が必要だ。

東京都中央区日本橋:お多幸本店のお持ち帰りおでん

次に豆腐用の煮汁を用意する。削り節と昆布ベースの出汁と醤油、お酒を加え、砂糖も適量追加する。この汁が決め手になるのだが、いちばん手っ取り早いのがお多幸本店のおでん汁だ。お店で持ち帰り用のおでんを購入すると、おでん汁を一緒につけてくれるのだ。「それはあまりにもチート」だって? では、お多幸本店の汁が手に入らない場合は、心持ち砂糖を多めにするのと、濃口醤油に溜まり醤油か再仕込み醤油をすこし加えて色を濃いめにするとうまくいくかもしれない。

ちなみに、お多幸本店の練り物のおでん種は、日本橋の神茂のものを使っている。豆腐もおでん種も日本橋のお店のものを使用するという徹底ぶりだ。

とうめしの作り方(煮込み)

鍋に豆腐と煮汁を加えて最初は中火、次に煮崩れないように弱火で20〜30分ほど煮る。お多幸本店では、表面をすこし焼いてから煮るらしい。
あまり長く煮ると豆腐が崩れてしまうので、火をとめて汁が豆腐に染み込むのをじっと待つ。待つ時間は1時間程度でいいが、こだわる人は何時間待ってもかまわない。

同時に茶飯も用意しよう。とうめしに用いる茶飯もお茶で炊くのか、醤油で炊くのか意見が分かれているが、三井不動産の運営する「まち日本橋」では「醤油で味つけした茶めし」と記載されている。筆者が実際に食べた感想も醤油ベースだと思った。したがって、お茶は入れずに醤油ベースで味付けするといいだろう。このとき注意したいのが、味付けは最小限にとどめることと、すこし固めに炊くことだ。豆腐の煮汁がじゅうぶん甘辛なので、茶飯の味は控えめにしたほうが相性がいい。

とうめしの作り方(完成)

豆腐にしっかり色がついたら、茶飯に乗せて完成だ。このボリューム感、なんともフォトジェニック。前述のとおり、きつめに水切りしてしまったのですこしくたびれているが、まあまあの出来ではないだろうか。甘辛の汁が淡白な豆腐とうまく絡み合って美味しい。お好みで長ネギや七味唐辛子をかけてもいい。

とうめしの作り方(完成)

お多幸本店の持ち帰りおでんとあわせれば、家でお店の味が楽しめる。

茶飯を作るのはとても簡単だが、シンプルな料理だけに意外と奥が深い。また、歴史を探るといろいろと興味深い事柄を知ることができる。今年の秋冬は、おでんのお供に茶飯づくりに挑戦してみてはいかがだろうか。

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