今回は煮る時間が異なるちくわぶの風合いを比べてみようと思う。
東京ローカルのおでん種として確固たる地位を固めつつあるちくわぶ。もちもちとした食感と味染みが魅力だが、煮加減によって風合いが変わっていく。今回は煮る時間と冷ますことによってちくわぶがどのように変化していくか検証してみよう。
原料は小麦と塩と水のみ、もちもち食感が魅力のちくわぶ
最初に、ちくわぶはどういった食材かをおさらいしておこう。ちくわぶは東京を中心とした埼玉県や千葉県などの首都圏で親しまれており、最近では東京ローカルの食材として注目を集めている。
原料は小麦と塩と水のみで、もちもちとした食感が魅力となっている。ミルフィーユ上に折り重ねた隙間に汁をたっぷり含むため、おでんのほかに筑前煮のような煮物にも活用されている。また、小麦を原料としているので、炒め物やスープ、そして和洋中どんな味付けにも対応するオールラウンダーだ。
東京ローカルでありながら、製造しているメーカーは意外と多い。とりわけ評価が高いのが北区赤羽(志茂)にある川口屋だ。原料は小麦と塩と水のみで、職人の「練り」と「巻き付け」と「伸ばし」の技術を駆使してコシを作り出している。
用途に応じた複数種類のちくわぶを用意している。ほどよい柔らかさで扱いやすい「スタンダード(レギュラー)」、北海道産の小麦を100%使った「内麦(北海道産小麦100%使用ちくわぶ)」、強いコシを持つ「おでん屋仕様(おでん屋さんのちくわぶ)」、阿部善商店とコラボした「東京ちくわぶ」がある。
煮加減による仕上がりの比較
ここからは川口屋のちくわぶを使って、煮加減による違いを見ていこう。
ちくわぶは煮る時間によって食感が変わってくる。短めの場合はもちもちとした弾力を楽しめ、長めの場合は汁が染みてくたっとした食感になる。ただし、ずっと火にかける必要はなく、一旦冷まして時間をおけば煮崩れが防げる。

今回使用したのは先ほど紹介した川口屋のスタンダード(レギュラー)だ。煮崩れせず美しく仕上がるが、もちっとした食感も簡単に手に入る。
よりソフトに仕上げるなら、ハダカと呼ばれるパックしていない商品を選ぶといい。川口屋のものなら北区赤羽の丸健水産でも手に入る。ハダカのちくわぶはおでん種専門店だけでなく豆腐店やこんにゃく店でも手に入るので、近くのお店をのぞいてみるといい。
ネットを見るとちくわぶは下茹でするか否か、という話題があがっているが、紀文食品によれば「おでんの場合は下茹で不要」とある。一方、ちくわぶ料理研究家の丸山晶代さんは下茹でを推奨しているが、これは煮物以外の料理に用いることを考慮していると思われる。また、商品によっては汁が若干濁るので、下茹でしたほうが美しく仕上がると思う。
今回はふたつの煮加減で調理してみた。ひとつめは下茹でせず45分ほど弱火で煮る方法、ふたつめは同様の方法で煮て一晩冷蔵し、翌日ふたたび40分ほど煮る方法を試した。
まずは短めの時間で煮たちくわぶを見てみよう。角がすこし取れ、とろっとした雰囲気が感じられるが、美しい形状を保っている。貴婦人のような白さも印象的で、フレッシュな食感が期待できる。
一晩はさんで煮直したちくわぶも美しい形状を保っている。弱火でじっくり煮たのが功を奏したのだろう。表面の色は短めに煮たものと比べて褐色が強く出ている。煮ているときに汁に触れていない部分があると乾いてしまうので、落し蓋をしてもいい。
ちなみに同じように煮た別メーカーのちくわぶも紹介しておこう。世田谷区の瀬間商店のもので、川口屋と比べて風合いがかなり異なる。いろいろな商品を試して、お気に入りを見つけるといいだろう。

染み込み具合を調べるために包丁を入れてみた。短い時間で煮たものはすこしだけ染み込み具合が足りないように見える箇所があるが、食感はもちもちとしてまったく問題がない。小麦の味わいもよく、フレッシュな印象だ。丸山さんによるとこの状態を「アルデンテタイプ」と称し、女性を中心に人気なのだという。
煮直したものはむらなくしっかり染み込んでおり、見た目だけでも柔らかいことがわかる。もちもち感に加えて、とろりとした食感も感じられる。お酒のアテとしても最適な仕上がりだ。
どちらがおすすめかといえば、両方に軍配が上がるといえる。好みに従って選ぶといいだろう。このふたつだけでなく、さらに自分だけの煮加減を見つけるのも面白い。また、前述のように商品によっても仕上がりが異なるので、おでん種専門店を巡っていろいろと探ってみるのもいい。
ちくわぶ 川口屋の基本情報
川口屋
〒115-0042 東京都北区志茂2-57-1
03-3901-0685
定休日:日祝
営業時間:9:00〜17:00(平日)、13:00〜17:00(土)
川口屋のウェブサイト