土鍋の目止め

おでんは酒場や家庭だけでなく、料亭などでも楽しめる懐の深い存在だ。調理する鍋も手軽なアルミ鍋からおしゃれな洋風鍋まで、なんでもばっちりと合う。どの鍋を使うかは好みや用途に応じてチョイスしていけばいいが、東京おでんだねのおすすめは土鍋だ。今回は、購入したての土鍋の目止め方法について紹介したいと思う。

三重県伊賀:やまほん陶房の土鍋九寸飴釉

土鍋は陶土で作られた鍋で、蓄熱性が高いことで有名だ。おでんは火にかけすぎると形崩れしてしまうので、熱を穏やかに伝え、火から降ろしても温度を長く保てる土鍋とは相性がいい。

土鍋はペタライトなどを練り込んで割れにくくしたものが出回っているが、昔ながらの陶土のみで作られた土鍋の魅力も捨てがたい。空焚きすると割れてしまったり、きちんと乾かしていないことによってカビが生えてしまったりと面倒なのだが、「育てる」楽しみがあり、愛着がわいてくるのだ。

上の写真の土鍋は三重県伊賀市にあるやまほん陶房の土鍋九寸飴釉だ。あたたかみのある飴釉の色となめらかなフォルムが美しい。普段は昔から使っている白い土鍋を使用しているが、バックアップ用として半年ほど前に購入した。

三重県伊賀:やまほん陶房の土鍋九寸飴釉の目止め

土鍋を購入したら、まず「目止め」という作業を行う。鍋の表面にある細かな気孔を米のとぎ汁やおかゆ、片栗粉などのでんぷん質で埋めて、水漏れを防止するのだ。使い込んでいくと気孔は細かい貫入(かんにゅう)と呼ばれるひび割れを起こすが、鍋自体の強度は増す。また、目止めは食べ物の臭いや色を付きにくくする役割も果たすそうだ。

さて、さっそく目止めの工程に移っていこう。まずは、土鍋全体を水洗いし、一晩かけて完全に乾かす。

土鍋の目止め:ホクレン農業協同組合連合会の片栗粉

目止めの材料は米の研ぎ汁が有名だが、でんぷんの量が心許ないので片栗粉を使う。土鍋に水を入れて、片栗粉を一割程度入れてかき混ぜ、弱火で30分から1時間ほど煮る。片栗粉以外におかゆを炊く方法もある。伊賀焼の窯元で有名な長谷園では、おかゆを炊く方法を推奨している。

三重県伊賀:やまほん陶房の土鍋九寸飴釉の目止め

じっくり煮込みつつ、たまにかき混ぜて様子をみる。火を止めたら1時間上放置して、完全に熱が覚めるまで待つ。その後は中身を取り出して、土鍋を水洗いする。

三重県伊賀:やまほん陶房の土鍋九寸飴釉

ふたたび一晩ほど乾かして、水気が残っていないか確認しよう。とくに、底面は要注意だ。濡れている場合はきちんと拭き取らないと、火にかけたときに土鍋が割れる原因となる。

三重県伊賀:やまほん陶房の土鍋九寸飴釉とおでん

これで、調理の準備がすべて整った。ガス台にかけていきなり強火にするのではなく、弱火で土鍋が熱に馴染むように立ち上げていく。おでんも強火は厳禁なので、土鍋のペースに合わせればおのずと美味しいおでんができあがる。

土鍋といえば、中国で使用されている砂鍋もおすすめだ。こちらは日本の土鍋よりももろく、ひび割れ防止のために針金で補強してある。東京おでんだねでは中華料理用に使っているが、おでんにもとてもよく合う。この砂鍋は横浜中華街の照宝などで購入できる。

使い終わったら水洗いし、カビの発生を防ぐためにしっかり乾かそう。洗剤は使ってもよいが、気孔に入り込んでしまうので水だけのほうが望ましい。焦げ付きが気になる場合は重曹を加えた水を入れておくと汚れが浮き出て取れやすくなる。その後はふたたび目止めをするのを忘れずに。

よい鍋、よい食器を使うことで、おでん種専門店の職人たちが丹精込めて作ったおでん種をより深く、より楽しく味わえると思う。今後のおでん種ライフの選択肢として、参考にしていただければさいわいだ。

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