甘味おかめのおでん

今回は甘味おかめのおでんを紹介しよう。民藝に囲まれながら、ゆっくりと出汁のきいた味わい深いおでんを堪能できる。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店

甘味おかめといえばおはぎが有名だが、おでんも同じくらい魅力にあふれている。茶飯などと一緒に味わえるセットも充実しており、それぞれを味わう楽しみもある。今回はおかめ 麹町店でおでんを味わった。

食事を待つ時間さえ心地よい、穏やかな時間が漂う甘味おかめ

甘味おかめは民藝に囲まれながら甘味と食事が楽しめる甘味処だ。麹町店をはじめ、有楽町店と交通会館店の3店舗が営業している。

おかめの前身は1930年代から深川で営業していた二川屋という甘味処だ。終戦翌年の昭和21年(1946年)には「おかめ」の屋号で有楽町に店を構えるようになった。

現在は本店を麹町に移し、有楽町イトシア1階の有楽町店、東京交通会館地下1階の交通会館店の3店舗で営業している。どの店も民藝の家具や器に囲まれながら、ゆったりとした雰囲気で甘味や食事を楽しめる。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店

今回は国立劇場のすぐ隣、Tokyo FMが入るビルの1階で営業する麹町店に訪れることにした。大きな「甘」の字が目印になる。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店

麹町店は広々とした落ち着いた雰囲気となっている。昼どきは人が多いので、時間をずらして利用するといいだろう。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店

おひとりさまでやってきて店員の方々と会話を楽しむ常連客も多い。おはぎやあんみつなどそれぞれお気に入りを注文して、至福の時間を堪能しているようだ。店内中央に飾られている「しる古」の書は書家の久泉氏のものだという。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店

入口は民藝の器や郷土玩具が飾られている。それぞれ趣きがあり、静かにその魅力を放っていた。日本民藝協会が発行する雑誌民藝も販売していた。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店

松本民芸家具の水屋箪笥には陶芸家の柴田雅章氏の大皿が飾られている。柴田氏は日本におけるスリップウェアの第一人者として知られ、兵庫県の丹波篠山で作陶を続けている。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店

大きなおかめのお面は有楽町店に飾られていたものだ。多くのお客さんを優しく迎え入れ、それぞれの人生をあたたかく見守ってきたのだろう。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店

大きな熊手はよし田のものだ。よし田は創業から80年以上に渡って伝統の技法を守り続ける老舗の熊手商店だ。浅草の「浅草おでん大多福」にも飾られており、東京おでんだねでもこちらの熊手を贔屓にしている。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店(メニュー)

メニューを開きおでんを探すと、いろいろと見つかった。茶飯がついた「茶めしおでん」のほか、赤飯や栗おこわがセットになったものもある。もちろん、単品での注文も可能だ。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店

注文を済ませて温かいほうじ茶を飲みながら店内を見渡す。テーブルと椅子は手入れが行き届いており深みのある鈍い光を放っている。食事を待つ時間さえ心地よい、何とも贅沢な空間だ。

丁寧な味付けのなかに懐かしさが漂う、甘味おかめのおでん

ほどなくしてテーブルに茶めしおでんが運ばれてきた。茶飯とおでんのほかに漬物がつく。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店(茶めしおでん)

おでん種は大根、玉子、はんぺん、こんにゃく、ごぼう巻、焼ちくわ、結び昆布の7種類。定番の組み合わせにどこか懐かしさと安心感を覚える。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店(茶めしおでん)

お店で出汁を取り、じっくりと丁寧に煮ているという。鰹のほかに、ふわっと香る昆布が心地よい。さらに大根や練り物などのうまみも合わさるが、調和が取れており上品さも兼ね備えている。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店(茶めしおでん)

おでん種は煮崩れせず、それぞれ個性ある食感が保たれている。丁寧でありながら安心感のある、どこかお婆ちゃんの手料理を思い起こさせる懐かしさがある。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店(茶めしおでん)

茶飯は白胡麻をかけていただく。ほどよい味付けと白胡麻の香ばしさが食欲をそそり、おでんとの相性も抜群だ。漬物の塩味もよいアクセントとなっている。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店(甘辛弁当)

おはぎがついた「甘辛弁当」も紹介しよう。おはぎのほかにおでん、茶飯のおにぎり、お吸い物、漬物のセットになっている。おはぎは種類が選べ、今回は胡麻にした。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店(甘辛弁当)

おでんは大根、はんぺん、ごぼう巻、焼ちくわ、結び昆布の5種類となる。「甘辛」の名前のとおり、異なる味を楽しめる贅沢な品だ。

このお弁当を見て、ふと荒川区東日暮里にあるおでんと大学芋の専門店「ねぎし丸昇」を思い出した。甘いものとしょっぱいものは相性がよく、どちらかを食べればもう一方が恋しくなる。このふたつを同時に味わえるなんてとても贅沢なことだといえる。

東京都千代田区有楽町:甘味おかめ交通会館店

麹町店以外の2店舗も非常に魅力的だ。有楽町店は再開発のため平成19年(2007年)にリニューアルしたが、200年以上前に建てられた旧家の大梁を移築しており、古き良きものとモダンさが融合している。入口にある小鹿田焼の壺も小鹿田好きの筆者にとっては興味深い。

交通会館店は古民家調の内装に芹沢銈介氏の型染が並んでおり、昭和の雰囲気をそのまま残した懐かしさにあふれている。

東京都千代田区有楽町:甘味おかめ交通会館店

交通会館店の店先にはメニューのサンプルが飾られており、おでんの品々がずらっと並んでいる。このようなところにもレトロな雰囲気をとどめていて心が和む。

東京都千代田区麹町:甘味おかめ麹町店

めまぐるしく変わる東京のなかで、戦後から変わらぬぬくもりのある味と居心地よい空間を提供する甘味おかめ。おでん好きや甘党の方、民藝をこよなく愛する方はもちろん、誰でもあたたかく迎えてくれるため、ぜひ一度訪れてみてほしい。

甘味おかめの基本情報

おかめ 麹町店
〒102-0083 東京都千代田区麹町1-7 フェルテ麹町1・7 1F
03-5275-5368
定休日:土日祝
営業時間:10:30~18:00
甘味おかめのWebサイト, Instagram

おかめ 有楽町店
〒100-0006 東京都千代田区有楽町2-7-1 イトシアプラザ 1F
03-3211-0585
定休日:月曜(月祝営業、翌火休)
営業時間:11:00~20:00

おかめ 交通会館店
〒100-0006 東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館B1F
03-3216-6008
定休日:日祝
営業時間:11:00~19:00

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