山王かまぼこのおでん種

山王かまぼこは、東京都大田区山王の山王商店会にあるおでん種の専門店だ。インターネットにはほとんど情報が載っていないが、約60年の歴史を持つ知る人ぞ知るおでん種やさんだ。

ジャーマン通りの脇にある山王商店会

駅前に多くの商店が集まるJR大森駅。品川駅にも近いため交通の便もよく、非常に住みやすいと評判の街だ。

東京都大田区 大森駅北口

今回紹介する山王かまぼこへのアクセスは大森駅の北口が便利だ。北口の改札を出て西側に向かい、山王口のT字路を環七方面へ向かう。大森駅から1Kmほどあるので、東急バスに乗って馬込銀座の停留所まで行ってもいいだろう。

東京都太田区山王:ジャーマン通り

通りを歩いていくと「ジャーマン通り」という名前を目にする。1925年から1991年まで東京ドイツ人学校があったことに由来し、石原慎太郎が命名したそうだ。賑やかな駅前とは異なり、山王あたりはとても静かで落ち着いた雰囲気がある。かつては実業家や政治家、文化人の邸宅があったという。

東京都太田区:山王商店会

ジャーマン通りと環七にぶつかる脇の道に山王商店会がある。八百屋やコンビニが営業しているくらいの小規模な商店街だが、一番街という北に伸びる商店街と繋がっていて、ちょっとした買い物には便利だろう。
山王商店会がある西大井本通り沿いにも異なる商店街がいくつか見受けられたが、お店は数えるほどしかない。昭和初期頃までは路線バスが走っていたそうで、大田区の重要な道であったそうだ。全100巻の大著「近世日本国民史」の著者で知られる徳富蘇峰(とくとみそほう)の旧居、山王草堂記念館が近くにある。

雰囲気抜群の山王かまぼこの店

山王かまぼこは一番街の通りと山王商店会がぶつかるすぐ近くにある。

東京都太田区 山王商店会:山王かまぼこ

使い込まれた「山王かまぼこ」の看板や冷蔵ショーケースがあり、雰囲気は抜群だ。自転車でふらっと立ち寄る地元客が多く、自転車にまたがったままおでん種を物色していた。

東京都太田区 山王商店会:山王かまぼこ

中央のショーケースには、練り物のおでん種が並んでいる。その数、20種類以上。定番物も多いが、変わり種も多い。さつまいも天やじゃがいも天、ミックス天などが興味をそそる。訪れたときは午後1時過ぎだったが、店主いわく種が揃っているのは正午くらいだそうだ。
こんにゃくや白滝は蒲田の樋川商店、上はんぺんはつきじ伏健、焼ちくわはイゲタ沼田竹輪工場のものだった。生ちくわぶも販売していた。

東京都太田区 山王商店会:山王かまぼこ

おでんセットも販売していた。大小選べ、練り物やそれ以外のおでん種とおでん汁がセットになっている。
店主は男前で他のおでん種やさんの店主に比べて若い方だったが、2.5代目なのだという。おそらく現役の2代目を手伝っているのだろう。創業してから60年ほどだという。地元の馴染み客と楽しそうに談笑している姿が印象的だった。

甘い味付けの山王かまぼこのおでん種

購入したおでん種は9種類。気になっていた変わり種を中心にチョイス。

東京都太田区 山王商店会:山王かまぼこのおでん種

写真の左上から時計回りに五目揚、さつまいも天、ミックス天、じゃがいも天、しいたけ天、げそ巻、つみれ。この他に結び昆布、ちくわぶを購入。

東京都太田区 山王商店会:山王かまぼこのおでん

いつものように大根と玉子、ちくわぶを煮込んで練り物を投入して完成。さて、どんな味だろうか。
山王かまぼこの練り物の特徴は、何と言っても甘い味付けだ。魚のすり身は多少甘みがあるものだが、山王かまぼこのものは味付け自体が甘い。これは初めての経験だ。練り物の出汁が染みたおでん汁もほんのりと甘みを帯び、まろやかな感じになる。食感は滑らかでありながら、適度な弾力がある。

東京都太田区 山王商店会:山王かまぼこのおでん種

五目揚は人参、ねぎ、紅生姜とおそらく通常の生姜も入っている。色合いが美しく、味もさまざまな具材がそれぞれを引き立てている。

東京都太田区 山王商店会:山王かまぼこのおでん種

しいたけ天は椎茸が丸ごと入っていて、口に含んだ時に椎茸のかぐわしい香りが広がる。ぷりぷりとした食感がなんとも心地いい。

東京都太田区 山王商店会:山王かまぼこのおでん種

ミックス天は人参やねぎが入っている。五目揚と似たような雰囲気だが、厚みのある形状でもっちりとした食感を楽しめる。

東京都太田区 山王商店会:山王かまぼこのおでん種

つみれは非常にジューシーで、イワシの風味が口中に広がる。あまり煮込まず直前に入れたほうがよいだろう。
気になるさつまいも天とじゃがいも天は、外見だけでは見分けがつかない。撮影時も非常に混乱した。

東京都太田区 山王商店会:山王かまぼこのおでん種

半分に切って見ると一目瞭然だ。上がじゃがいも天、下がさつまいも天だ。じゃがいも天はジャガイモが少し大きめに切られていて、ほっこりとした食感と味わいが魚のすり身とよく合う。さつまいも天はサツマイモが細かく切られていて、練り物全体に甘みが行き届いている。練り物自体の甘さも合間って、ちょっとしたおやつになるかもしれない。

東京都太田区 山王商店会:山王かまぼこのおでん種

げそ巻はイカのゲソのうまみがしっかり詰まっていて、噛めば噛むほど口の中に味わいが広がる。定番のおでん種だが、東京おでんだねでは初登場だ。

インターネットではほとんど情報が載っていない山王かまぼこだが、約60年の間、地元の人たちに愛され続けてきたおでん種やさんだ。甘い味付けのおでん種は珍しいが、この味で育った地元の人たちには忘れられない故郷の味なのだろう。各地域に残る、そこでしか味わうことのできないおでん種やさんの存在は貴重で、できる限り残り続けてもらいたいと思う。

山王かまぼこの基本情報

山王かまぼこ
〒143-0023 東京都大田区山王1-44−8
03-3771-8394
定休日:日曜、季節により不定休
営業時間:10:30~夕方売切れまで

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