今回は目黒区唯一のおでん種専門店、柳屋蒲鉾店の手づくりはんぺんを紹介しよう。
柳屋蒲鉾店のはんぺんは全国蒲鉾品評会の最高賞である農林水産大臣賞を2度受賞しており、そのほかの商品でも数多くの受賞歴を誇る。今回は三代目店主がつくるこだわりのはんぺんを詳しく紹介したいと思う。
数々の受賞歴を誇る目黒区唯一のおでん種専門店、柳屋蒲鉾店
東急目黒線武蔵小山駅から徒歩7分、都道420号(鮫洲大山線)を学芸大学駅方面に向かった先に平和通り商店街がある。
かつては富士館という映画館が通りの中央にあったことから「富士館通り」という名称だったが、終戦後に平和への願いを込めて「平和通り商店街」という名称となった。
商店街の中央にあった二葉フードセンターは肉屋や惣菜屋、魚屋や花屋が入る人気の施設だったが、令和3年(2021年)に83年の歴史に幕を閉じた。昭和の雰囲気を色濃く残す場所が消えてしまったのは寂しいかぎりだが、現在でも商店街は新旧問わずさまざまな店舗が軒を連ね、訪れる人で賑わっている。
柳屋蒲鉾店は商店街の西側、月光泉という銭湯の向かいで営業している。小田原の老舗蒲鉾店で働いていた初代店主が幡ヶ谷で独立した後、昭和26年(1951年)頃に現在の地に移転したという。
現在は三代目店主が営業しており、さまざまな練り物をつくり続けている。お店の正面には、揚げたての商品が所狭しと並んでいる。たとえ売り切れていたとしても、聞けばできあがりの時間の目安を教えてくれる。
長年製造していなかったはんぺんは三代目店主が復活させ、全国蒲鉾品評会の最高賞である農林水産大臣賞を2度受賞したほか、名誉大賞と栄誉大賞も受賞している。
はんぺん以外でも魚のすじ、みつばもんご揚げ2種、海鮮揚げ、いわし団子、五目揚げ、肉ボールが各賞に受賞している。技術はもちろん、練り物にかける情熱を感じざるを得ない。
季節限定の商品も多いので、お目当てのついでに購入するといいだろう。訪れたときはナスに魚のすり身を挟み込んだなす揚を販売していた。なお、はんぺん以外の練り物については「柳屋蒲鉾店のおでん種」という記事をご覧いただきたい。
はんぺんは右側のショーケースにあり、2枚買うとお得になる。魚のすじも手づくりなので、ぜひ手に入れてもらいたい。
上品でありながらしっかりとしたうまみを堪能できる柳屋蒲鉾店のはんぺん
今回ははんぺんだけを購入しようと思ったが、欲望に負けてしまい魚のすじ、なす揚も購入してしまった。こういったときめきを出会えるのも、店舗まで足を運ぶ醍醐味でもある。
はんぺんはおでんにしても美味しいが、繊細な味わいを楽しみたいならそのまま冷やして食べるといいだろう。ほかの食材に邪魔されず、じっくりとその食感やうまみを堪能できる。
アオザメとヨシキリザメを石臼で丁寧に擂りあげ、手作業で成形してから茹で上げる。ふわりときめ細やかでありながらしっかりと舌に残る食感と、上品でうまみのある味を楽しめる。
柳屋蒲鉾店のWebサイトでは、バター焼きなどはんぺんを美味しく味わう調理法を掲載している。今回はそのなかから炙り焼きに挑戦してみた。割り箸や串を2本刺し、表面の色が変わるまでコンロにかざす。醤油をつけてもいいし、そのまま焼いてわさびなどをのせてもいい。表面は香ばしく、中はしっとりとした食感となる。見た目や香りもよく、食欲が増す調理法だ。
魚のすじははんぺんを作る際に使用する1番肉以外のすじ肉をすり合わせ、成型したあとに茹でて完成させたものだ。東京を中心とした関東圏ではお馴染みの練り物だったが、現在は知る人ぞ知る存在になってしまった。
柳屋蒲鉾店ではアオザメとヨシキリザメに加え、マグロのすじ肉を使用している。ふくよかなうまみと時折感じるこりこりとした食感が素晴らしい。刺身のようにして食べても美味しいし、おでんにしてもよい出汁が出る。はんぺんと同様にバター焼きにしても美味しい。
季節限定のなす揚は、ナスに魚のすり身を挟み、油で揚げたものだ。ほかのお店に比べて非常に大きなナスを使用しているため、食べ応えは十分だ。油っぽさは感じられず、さっぱりと味わうことができる。
残暑が厳しい日に取材をしたが、柳屋蒲鉾店には多くのお客さんが訪れてはんぺんをはじめとした練り物を購入していた。数々の賞を獲得し業界のお墨付きを得ながら、地元民にも愛される柳屋蒲鉾店。これからも卓越した技術と味で、多くの人たちを魅了してほしい。
柳屋蒲鉾店の基本情報
柳屋蒲鉾店
〒152-0002 東京都目黒区目黒本町5-33-25
03-3712-5006
定休日:月曜、日曜、祝日
営業時間:11:00~19:00
柳屋蒲鉾店のウェブサイト