グランド小池商店のできたておでん

今回は多摩川の河川敷で70年以上営業を続けるグランド小池商店のできたておでんを紹介しよう。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店(外観)

グランド小池商店は読売ジャイアンツと関わりが深く、ファンの間では聖地として知られている。長年お店に立たれていた初代店主ご夫婦に代わり、現在では長女の高橋文子さんが営業を続けている。

ジャイアンツファンの聖地として知られるグランド小池商店

今回の目的地であるグランド小池商店は多摩川の河川敷にある。最寄り駅は東急東横線と目黒線が乗り入れる田園調布駅だ。

東京都大田区田園調布:田園調布駅

西口を出て銀杏並木を進み、15分ほど歩くと多摩川の河川敷に辿り着く。それなりに勾配があるので、無理せず自分のペースで歩いていこう。

東京都大田区田園調布

高級住宅街を抜けると広々とした景色が広がる。多摩川の先に見える高層ビル群は武蔵小杉のタワーマンションだ。天気の良い日は富士山を望むこともできる。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店(外観)

グランド小池商店は坂を降りてすぐのところにある。おでんのほかに焼きそばやアイスクリームなどのスナック類、ビールやワンカップといった酒類やソフトドリンクが充実している。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店(内観)

初代店主の小池三郎さんが昭和26年(1951年)に創業したが、昭和30年(1955年)に読売ジャイアンツが多摩川グラウンドを使用し始めると選手たちが頻繁に訪れるようになった。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店(内観)

王貞治や長嶋茂雄、桑田真澄や松井秀喜に至るまでジャイアンツの選手たちが常連客となり、ファンの間でも聖地として知られるようになった。とりわけ長嶋さんとの親交が厚く、おかみさんのまつさんが亡くなられた際にはお通夜に訪れたそうだ。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店(内観)

店舗の建替えによって内装が変わった今でも、当時の雰囲気を残すように気を配っているという。壁一面に選手たちのサインや写真が敷き詰められ、彼らが使用したバットも展示されている。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店

三郎さんは2022年に101歳で亡くなり、現在は長女の文子さんとご主人のおふたりでお店を切り盛りしている。文子さんは多くの人たちに愛され、ご両親が築き上げてきた味を守りたいとおっしゃっていた。

長嶋さんも愛した伝統のおでん

おでんは大きな鍋でじっくりと煮込まれている。おでん汁は初代の頃からの継ぎ足しで、店舗を改装する際も冷蔵保存して大切に育ててきた。文子さんに代替わりした現在でも、長嶋さんをはじめとした選手たちが愛した当時の味を楽しめる。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店のできたておでん

出汁は鰹節のほかに煮干しや鶏ガラを使用し、濃口醤油で味付けしている。おでん種はどれも褐色に染まっているが、煮詰まることはなく常に最高の状態を保っている。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店のできたておでん

大根、玉子、ごぼう巻、生揚げ、ちくわぶ、がんもどきなどの定番ものが揃い、フランクフルトとはんぺんは注文後に温められる。4種類の盛り合わせとなるが、リクエストすれば好みのおでん種に変更することができる。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店のできたておでん

席に着いてビールを注いでいると、すぐにおでんが運ばれてきた。今回は大根、玉子、焼ちくわ、ごぼう巻の組み合わせとなる。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店のできたておでん(大根)

大根は非常に柔らかく、箸を入れると簡単に切り分けられる。汁は濃い色をしているが味付けはやさしく、ふっくらとした出汁の香りが心地よい。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店のできたておでん(玉子)

玉子は表面がぷつっと弾力が出るまで煮込んであり、中まで味が染みている。出汁のうまみとクリーミーな黄身の味わいを同時に楽しめる。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店のできたておでん(ごぼう巻)

ごぼう巻はふわふわとしたすり身の食感が心地よく、絶妙な煮加減でうまみを逃していない。どのおでん種も丁寧に調理されており、それぞれの個性をうまく引き出している。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店のできたておでん(フランクフルト)

少し経つと別注文のフランクフルトが運ばれてきた。串に刺さっていてかなりのボリュームがある。ふっくらとしたやさしい肉の甘みが心地よい。縁日の露店で食べるような懐かしさを感じるが、からしをつけると味が引き締まってお酒のアテになる。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店(メニュー)

別注文の種はフランクフルトのほかにはんぺんもあるが、長く煮ると本来の美味しさを損なうものなので、注文を受けてから調理するのは非常に理にかなっている。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店の焼きそば

おでんのほかに焼きそばも頼んでみた。キャベツの具材に紅生姜と青海苔がかけられたシンプルなものだが、多摩川の河川敷で食べると格別の味わいとなる。フランクフルトと同様に、口に運ぶごとに童心に帰るような心持ちになる。

多摩川の雄大な姿を一望できる、最高のロケーション

グランド小池商店はおでんや焼きそばを味わうだけでも訪れる価値があるが、多摩川の河川敷というロケーションも素晴らしく、ぜひ一度訪れてみるといい。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店から見る多摩川の風景

店内は4人掛けのテーブルが5つほどあるが、天気のよい日は屋外の席で楽しみたい。青く広い空のもとで季節の野花をのんびりと眺めながら食事を楽しむことができる。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店から見る多摩川の風景

お店の正面の道路を上がれば多摩川の雄大な姿を一望できる。すぐ下に見えるのはかつて巨人軍が使用していた多摩川グラウンドだ。現在は大田区が管理しており、一般でも利用できる。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店から見る多摩川の風景

陸橋を渡る東急東横線を眺めることもできる。人もそれほど多くないので、お店の近くでピクニックするのもいいだろう。

東京都大田区田園調å布:グランド小池商店

グランド小池商店には土手散策を楽しむ家族連れや地元の常連客が訪れ、ほのぼのとした雰囲気が漂う。初代店主やおかみさんを慕う人々が多かったが、現在は文子さんのあたたかい人柄に惹かれて通うお客さんも多い。

彼女は何年か別の勤め先で働いたあとにお店に戻り、長年ご両親を手伝ってきた。グランド小池商店を通じてさまざまな縁に恵まれ、多くの人たちと交流ができたことに感謝しているという。気さくで物腰は柔らかく、何時間でもお話をうかがいたいと感じる素敵な方だった。

東京都大田区田園調布:グランド小池商店のできたておでん

文子さんの代でお店を閉じる予定だが、できるかぎりご両親の思いを引き継いでいきたいという。のどかな多摩川の風景を楽しみながら、思いやりのこもったおでんをぜひ味わってみてほしい。

グランド小池商店の基本情報

グランド小池商店
〒145-0071 東京都大田区田園調布4-46-10
03-3721-3233
定休日:月曜・火曜(但し祝日は営業)
営業時間:10:30~17:00

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