おでんの里芋の調理方法

今回はおでんの里芋の調理法を紹介しようと思う。里芋は料理によって下ごしらえが若干異なってくるが、おでんに最適なものを紹介したいと思う。

おでんの里芋の調理方法

里芋は日本で稲作よりも先に栽培が行われ、縄文時代から食べられていたという。ねっとりとした食感とほのかに甘みのある味は和食との相性がよく、旬となる秋から春に親しまれていたが、現在は一年中流通している。

おでんにおいて「芋」といえばじゃがいもが有名だが、里芋を入れる家庭も多い。紀文食品が調査した「紀文・47都道県 家庭の鍋料理調査2022」(おでんの具と地域性)によると、里芋の喫食率は西高東低の傾向で、とりわけ北陸や九州地方が高い。東京のおでん種専門店ではほとんど見かけないが、おでん料理店で取り扱っていることが多い。

たくさんある里芋の種類

里芋にはたくさんの種類がある。それぞれの特徴や旬を把握しておくと、より美味しく味わうことができる。東京のおでん料理店の老舗「浅草おでん大多福」の4代目である舩大工安行さんは、おでんの里芋について以下のように語っている。

私の店では、常時ジャガイモの他にもう一種類おイモを入れています。お酉さんの十一月から一、二月までは八ツ頭です。その後春はエビイモ、京イモ、夏場は里イモ、秋口に赤目イモと変わっていきます。これらのイモは時季がはずれると美味しく食べられなくなるのです。

(引用:舩大工安行. おでん屋さんが書いたおでんの本. 三水社. 1989. p. 76.)

個性の異なる品種をそれぞれ最も美味しい時期に味わう。ほかの野菜も然りだが、とても趣のある料理の楽しみ方だと思う。

おでんの里芋の調理方法:さまざまな種類の里芋

里芋は東南アジア原産でタロイモの仲間となる。食用するのは肥大した茎の下の部分で、親芋から子芋が増え、さらに子芋から孫芋が増えていく。品種によってどの部分を食べるかが異なり、たとえば土垂(どたれ)という品種は子芋を食べ、関東のおせち料理に使われる八つ頭は親芋と子芋の両方を食べる(例外もある)。ちなみに葉柄の部分はズイキや芋がらと呼ばれ、こちらも食用となる。

おでんの里芋の調理方法:土垂(どだれ)

里芋の代表的な品種といえば土垂と石川早生(いしかわわせ)だ。土垂よりも石川早生が少し小さいが、どちらもとろりとした粘りがあり、煮崩れしにくい。煮物をはじめとしてあらゆる料理に使われる。土垂はほぼ通年流通しているが旬は10月から12月、石川早生は8月から9月となる。

おでんの里芋の調理方法:えび芋(京芋)

えび芋は別名「京芋」とも呼ばれ、湾曲した形と横縞の模様がエビのように見える京野菜のひとつ。京都はもちろんだが静岡県で多く栽培されている。通常の里芋よりもほくっとした粉質の食感にほんのりとした上品な甘みが特徴だ。煮崩れしにくいため煮物として使われることが多く、老舗のおでん料理店でも使用されることが多い。11月から1月くらいまでが旬となる。

おでんの里芋の調理方法:殿芋(頭芋)

えび芋の親芋部分は「頭芋」や「殿芋」と呼び、京都では正月のお雑煮に用いられる。「頭(かしら)が取れる」ように縁起物として家長や長男が食べる。

おでんの里芋の調理方法:八つ頭(八頭)

同じく正月に食べられる八つ頭(八頭)は親芋と子芋が完全に分かれないため8つの頭があるように見えることからその名が付いた。関東地方で親しまれており、浅草酉の市の縁起物として販売されていたことで有名になった。立身出世のほか子孫繁栄の願いが込められているという。

おでんの里芋の調理方法:八つ子(八つっ子)

八つ子(八つっ子)は八つ頭の孫芋のことで、正月明けに青果店に並ぶことがある。食感は八つ頭と同様に粘りが少なくほくっとしている。旬は12月から2月くらいまでだ。

おでんの里芋の調理方法:たけのこ芋(京いも)

たけのこ芋は細長い形が特徴で、宮崎県産のものは「京いも」という名前で流通している。同じ「京」がつく芋でもえび芋とは品種が異なる。棒状でぬめりもほとんどないので皮が剥きやすい。粉質でほくほくとした食感が楽しめ、煮物にも最適だ。9月から3月頃が旬となる。

おでんの里芋の調理方法:セレベス

芽が赤いセレベスは「赤芽芋、赤目芋」や「大吉芋」などと呼ばれており、ぬめりが少なく皮剥きもしやすい品種だ。親芋、子芋ともに食べられ、旬は初冬の11月から12月ごろとされる。

おでんの里芋の調理方法:さまざまな種類の里芋

このほか、新潟県の砂里芋(さりいも)が有名な大和早生(やまとわせ)など、里芋にはたくさんの種類がある。味や食感も異なるのでいろいろな種類を試してみるといいだろう。

里芋の選び方と保存方法

里芋を購入する際は泥がついたものを選ぶようにすると品質が落ちにくい。また、表面はしっとりして縞模様がはっきりしているもの、ふっくらと丸みがあるものがよいとされている。

里芋の保存方法:新聞紙に包み冷暗所で保存

保存する場合は新聞紙やキッチンペーパーに包んで冷暗所で常温保存する。里芋は低温障害を起こすので冷蔵庫には入れないほうがいい。また、水分はカビの発生原因となるため霧吹きなどで湿らせるのは避けるべきだ。冷凍庫では1ヶ月ほど保存できる。

おでんの里芋の下ごしらえと調理方法

ここからは里芋の下ごしらえと調理方法について解説していこう。おでんに使用するなら別鍋で下茹でをしてぬめりやアクをとっておくといい。ぬめりを取ることで火の通りもよくなり、おでん汁もよく染み込む。また、ぬめりによって汁が泡立ってしまうことを防げる。

おでんの里芋の調理方法:里芋の茹で汁

里芋の茹で汁はほんのり白く濁り、とろみが出る。アクは品種にもよるがそれほど気にならない。美しいおでんにこだわるのであれば別の鍋で下茹でしたほうがよさそうだ。

皮を洗って泥を取り除く

まずは里芋についた泥を洗い落としていこう。里芋がすべて収まる大きさのボウルやタライを用意し、水を張る。里芋を入れて表面についた泥を水に馴染ませたあと、揉み洗いして表面を丁寧に洗っていく。タワシを使って細かい汚れを取ってもいいだろう。

おでんの里芋の調理方法:里芋を洗う

水が汚れたら新しいものに取り替えて、濁らなくなったら完了だ。キッチンペーパーや布巾で水気をしっかり取ったら、新聞紙やざるの上に乗せて天日干しにする。水気をしっかり取れば皮を剥く際にぬめりが出ないので扱いやすい。

おでんの里芋の調理方法:里芋を乾かす

完全に乾くまで時間がかかるので、時短したい場合は表面の水気を拭うだけでも効果はある。なお、皮を剥かずに茹でる場合は乾かす必要はない。

里芋の皮を剥く

次に里芋の皮を剥いていく。皮を剥く方法は、包丁で剥く方法と茹でた後に剥く方法のふたつがある。おでんの場合は先に包丁で剥いてから下茹でするのが一般的だ。

おでんの里芋の調理方法:皮に包丁で切れ目を入れる

茹でた後に剥く場合は包丁でぐるりと皮に切れ目を入れてから、水を張った鍋に入れて下茹でする。適度に柔らかくなったら熱いうちに手で皮を剥く。

おでんの里芋の調理方法:茹でてから皮を剥く

電子レンジで皮剥きと下茹でを同時に行う方法もある。こちらも皮に切れ目を入れた後、耐熱容器に置いて水をひと回しかける。ふんわりラップをして4分ほどレンジした後に皮を剥く。この方法が最も簡単だが、火の通りに偏りがあるので注意が必要だ。

おでんの里芋の調理方法:里芋の六方むき

包丁で皮を剥く場合は里芋の上下を浅く切り落としてから、側面の形に沿って剥いていけばいい。もちろん、ピーラーを使っても構わない。切り口が六角形になる六方むきの場合は、一辺を終えたら対角線上の一辺を剥くようにすると形が揃いやすい。八方むきも同じく対角線上に剥いていくが、最初に四角形に剥いた後に残りの四つの角に包丁を入れると整いやすい。

皮を剥いた里芋は水に晒しておくと変色を防ぐことができ、アクも若干抜ける。10分ほど置いておくといい。

ぬめりで手がかゆくなる場合は酢水に晒すといいといわれている。レモン汁やクエン酸も同様の効果が得られるというが、個人差があるのでビニール手袋をしたほうが確実かもしれない。

里芋を下茹でする

おでんとは別の鍋を用意して里芋を下茹でしていく。鍋に里芋がかぶるくらいの水を入れるが、このとき米の研ぎ汁、もしくは生米を一緒に加えておくとアクが取れやすくなる。

おでんの里芋の調理方法:里芋を下茹でする

水から茹でていき、沸騰しかけたら弱火にして5分から10分程度加熱する。茹で時間は里芋の種類や大きさで変わるので状態を見ながら調整してほしい。ぶくぶくと出てくる泡は吹きこぼれの原因になるので、気になる場合はあらかじめ里芋を塩で揉んで水で流しておくとある程度発生を抑えることができる。

おでんの里芋の調理方法:落とし蓋をする

茹でている間はキッチンペーパーなどを利用して落とし蓋をする。里芋に均一に火が入り、煮崩れの防止にもなる。串を刺して若干固めと思われるくらいになったら火を止める。里芋をしばらく水に晒し、ざるに上げれば下ごしらえは完了だ。

里芋をおでん汁で煮る

下茹でが済んだ里芋をおでん汁で煮れば完成となる。おおよそおでんができあがる10分から15分前に鍋に入れるといいだろう。

おでんの里芋の調理方法:おでん汁で煮る

より味を染み込ませたい場合は、火から降ろした後にしばらく馴染ませておくといい。長時間置く場合は粗熱が取れた後に冷蔵庫で保存する。食中毒の原因となるウエルシュ菌などの増殖を防ぐためだ。おでんの食中毒については「おでんの食中毒の予防方法」の記事を参考にしていただきたい。

おでんの里芋の調理方法:おでん汁で煮る

六方むきなどをして綺麗な状態を保ちたければ別鍋で煮るという方法もある。その場合は落とし蓋をして弱火で10分ほど煮るといいだろう。タッパーなどに移す際は菜箸でも簡単に跡がついてしまうので、細心の注意を払って取り扱おう。

おでんの里芋の調理方法:完成

ほかのおでん種と一緒に鍋に入れてもいいが、おでん料理店のように別の器によそってもいいだろう。千切りした柚子や小口切りした青ネギなどを乗せて彩りを加えると雰囲気が出る。

おでんの里芋の調理方法

里芋の下ごしらえと調理方法は以上となる。手荒に扱わなければ、皮むき、下茹で、煮るだけで美味しい里芋のおでんが楽しめる。里芋の旬となる秋から春にかけてはおでんも美味しい季節、ぜひご家庭で調理して味わってみていただきたい。

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