浅草鷲神社酉の市のおでん種観測

毎年多くの参拝客が訪れる浅草鷲神社の酉の市。参拝客だけでなく出店される露店の数も半端ないのだが、おでんを提供しているお店もたくさんあった。「東京おでんだね」はおでん種やさんを紹介するメディアなのだが、今回は少し趣向を変えて鷲神社の酉の市のおでんについてさらっとリポートしたいと思う。

東京都台東区千束 鷲神社酉の市

関東屈指の賑わいをみせる浅草鷲神社の酉の市

動員数は約80万人、露店は約750店という関東屈指の賑わいをみせる浅草鷲神社の酉の市。「酉の市発祥の地」と伝えられているだけあり、商売人がこぞってご利益(ごりやく)を得ようと熊手を求めにやってくる。一般参拝客も多く、海外からの観光客も年々増えているようだ。今年は三の酉まであり、その日が連休に重なるため人でごった返していた。お祭りならではの熱気が立ち込めていたが、夜はかなり冷え込んだので自然と足が温かい食べ物へと向かう。

多くの露店がおでんを提供、おでん種も様々

東京都台東区千束 鷲神社酉の市:おでん

熱燗とおでんの盛り合わせを頼んで冷えた身体を温める。メインの大根、白滝、こんにゃく、はんぺん、結び昆布などがお任せで盛り付けられていた。仕込みは完璧でどれも味がよく染みている。この他、おでん鍋を覗くと玉子とちくわ、そして関東のおでんに欠かせないちくわぶがあった。毎年このお店で飲んでいるが、店主がほぼひとりで回していて忙しそうだ。おでんは調理が楽だし寒い日は人気なので、ぴったりのメニューなのだろう。

東京都台東区千束 鷲神社酉の市:おでん

二軒目に向かう途中、おでんを提供している露店をたくさん見かけた。何十人も座れる席を確保しているお店では、大根、はんぺん、こんにゃく、ちくわ、さつま揚げ、玉子、ごぼう巻き、鳴戸巻き、がんもどきがスタンバっていた。中規模から大規模の露店の飲み屋では必ずといっていいほどおでんのメニューがあった。

東京都台東区千束 鷲神社酉の市:おでん

屋台のようにこじんまりとしたおでん屋も多かった。牛すじ、フランクフルト、結び昆布、はんぺん、がんもどき、こんにゃく、もち巾着、白滝、厚揚げ豆腐のほか、練り物は餃子巻き、野菜ボール、うずら巻き(巣ごもり)だろうか。

東京都台東区千束 鷲神社酉の市:おでん

もう一軒は、厚揚げ豆腐、白滝、ちくわぶ、こんにゃく、つみれ、がんもどき、はんぺん、フランクフルト、もち巾着、牛すじの他に練り物はおそらくごぼう巻き、大きめのボールは何だろうか。

はんぺん、こんにゃく、白滝は不動の人気、大根は確認できなかったお店もあるが必ずラインナップされているだろう。この辺りは地方に偏らず全国的に食べられているおでん種だ。牛すじは関西由来だが、もはや全国区のおでん種となった。フランクフルトを入れるお店も多かった。東京生まれとしてはちくわぶが比較的多くのお店にあったのが嬉しかった。

家庭用に比べて飲み屋のおでんは練り物が少ない印象なのだが、意外に複数種類を揃えているお店が多かった。チョイスとしては、やはり定番のごぼう巻きとうずら巻きが多いようだ。

こうして観察してみると、人気のおでん種は各店同じように揃えているが、お店によって異なるチョイスをしているものもある。見かけたときに仕込んでいなかっただけかもしれないが、浅草の酉の市は多くの露天商が各地から集まるので、おそらく異なる業者から仕入れているのだろう。

元々おでんは露天で売られており、お酒とともに楽しむ料理だった。家庭で食べるようになったのは、顆粒の出汁の素が普及した戦後からだという。酉の市のような場所でおでんが提供されるのは当然といえば当然のことである。
かつての商売人たちも鷲神社に訪れた帰りに露店に入っては、ゆっくり熱燗とおでんで身体を温めたのかもしれない。色々と規制がうるさい世の中になってしまったが、このような活気のある風景は残ってほしいものだ。

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