今回は港区唯一のおでん種専門店、福島屋のお弁当を紹介しよう。福島屋は新型コロナウイルス対策の流行以降、さまざまなテイクアウト商品を販売している。
福島屋といえば、自宅調理用のおでん種のほかに八丁味噌を使用した味噌おでんが有名だ。店舗2階で飲食ができ、ランチや夕食を楽しむことができる。
東京おでんだねでは新型コロナウイルスが流行する直前の2019年に福島屋を紹介していたが、その後に魅力的なテイクアウト商品が揃っていった。今回はのり弁を中心に、福島屋のテイクアウトの魅力に迫りたいと思う。
革新を持って伝統の味を守る福島屋
福島屋は大正10年(1921年)に創業した老舗のおでん種専門店だ。TVなどのメディアでも多く取り上げられ、著名人にもファンが多い有名店だ。
100年以上の歴史を誇り、港区で唯一のおでん種専門店となった福島屋だが、その歴史は多くの努力と創意工夫によって築き上げられてきた。
二代目店主が蒲鉾を作るかたわらでお持ち帰りのおでんを始めたが、二代目が急逝した後はおかみさんがお店を切り盛りしていた。三代目となる藤田剛生さんはおかみさんと共に飲食業を始め、平成18年(2006年)に店舗を飲食店に改装し、8年後に全面リニューアルした。味噌おでんの開発にも着手し、現在では季節を問わず多くのお客さんに親しまれている。
常に革新を繰り返しながら伝統の味を守り続けてきた福島屋は新型コロナウイルスにも果敢に立ち向かっていく。テイクアウトの需要に応えるべく、お弁当の販売を開始したのだ。
店舗を訪れると、店頭で調理したおでんが迎えてくれる。夏場はおでん種の量は減るが、1年を通して本格的なおでんを味わうことができる。
大根や玉子、揚げ蒲鉾といった定番のものから、トマトやエリンギなど変わり種も揃う。利尻昆布とカツオとサバの合わせ節で出汁をとったおでん汁は、深みのある味わいとなっている。
2階ではゆったりとしたテーブルで食事を楽しめるが、1階もカウンター席が設けてある。ランチなどで時間をかけずにさっと食べたいときに重宝しそうだ。
今回の目的であるのり弁はショーケースに並んでいるが、お店の方に伝えればすぐに取り出してくれる。お目当ての商品がなくても声をかければ「今作っています」「奥から出してきます」などと対応してくれる。
のり弁は複数のおかずが乗った豪華なもので、通常の刻んだ揚げ蒲鉾とこんにゃくのほかに、牛すじ煮込みを加えた「極(きわみ)」の2種類がある。さらに、牛すじ味噌仕立てのハンバーグが乗った「匠(たくみ)」もラインナップに加わった。牛すじのうまみが詰まった味噌のソースと、厚みがあり肉汁をたっぷり含んだハンバーグの組み合わせはかなり魅力的だ。限定品なので売り切れる前に購入することをおすすめする。
おでんやお弁当のほかに、福島屋の人気メニューである焼売やチーズの入ったさつま揚げの「薩摩とろチー」、餃子を詰めたさつま揚げの「薩摩チャオズ」もお持ち帰りできる。
もちろん、自宅調理用のおでん種も販売している。手づくりの揚げ蒲鉾はおでんにしなくとも、器に盛るだけでおかずやおつまみになる。「揚げ蒲鉾の楽しみ方」という記事にまとめているので、好みの味わい方を見つけてほしい。
店員の方は非常に親切で、お忙しいにもかかわらず丁寧に解説していただいた。2021年に創業100周年を迎え、それを記念したプレミアムギフト券を販売していると教えていただいた。かなりお買い得なため、人気は上々だという。
テイクアウト専用のスタンプカードも配布している。スタンプが15個集まると500円の金券として利用できる。500円で1スタンプ押してくれるので、すぐにいっぱいになることだろう。
極上の味わいながらコスパのよい福島屋ののり弁
今回は通常ののり弁と「極(きわみ)」の2種類を購入した。早速自宅で味わってみることにしよう。
おでん種専門店が作るお弁当らしく、どちらも練り物がふんだんに用いられている。見た目以上にボリュームがあり、これで価格が1000円を切るのは驚きだ。
大根や玉子などのおでん種は汁気を切ってあり、海苔やご飯がふやける心配がない。小さな容器に入ったおでん汁が付いているので、食べるときに振りかけよう。こうした細かい配慮が素晴らしい。
のり弁は海苔とご飯の間に鰹節がたっぷり敷き詰められている。後述する刻んだ揚げ蒲鉾や牛すじと絡めると、さらに味わい深くなる。
通常ののり弁に入る揚げ蒲鉾とこんにゃくは賽の目に刻んであり、ご飯と絡みやすくなっている。「かおり揚げ」と思われる揚げ蒲鉾は人参やごぼうなどが入っており、甘みと塩味が心地よく調和している。魚のすり身も味わい深く、手づくりの素晴らしさを感じられるはずだ。
「極(きわみ)」に入る牛すじは脂のふくよかな甘さを存分に楽しめる。牛肉のうまみもぎっしり詰まっており、ご飯がいくらでも食べられてしまう至福の味だ。長時間じっくり煮込んであるので柔らかく、ご飯によく絡んでくれる。
2種共通のおかずたちも味わってみよう。最初に目を奪われるのは彩りが美しいエビのフリッターだ。香ばしく仕上がっており、エビの美味しさを余すことなく味わえる。
一般的なのり弁の磯辺揚げはちくわを用いるが、福島屋でははんぺんを使用している。ふわりとソフトな食感でありながら、しっとりとしていて魚のうまみも感じられる。衣に散りばめた海苔の香りも素晴らしい。
鶏手羽元は甘辛の味付けで、白ゴマがまぶしてある。箸で骨から身を簡単に取り外すことができ、柔らかくぷりぷりとした食感を楽しめる。お弁当にはおしぼりが付いているので、手で掴んでかぶりついてもいいだろう。
しそ天は表面だけでなくすり身の間にも紫蘇の葉が挟み込まれているため、清涼感のある香りが抜群に感じられる。ボリュームのあるお弁当だけに、この清々しさが胃袋を気持ちよくリセットしてくれる。
おでんの大根はじっくり煮てあり、飴色から褐色に色付いている。おでん汁をかけて食べても美味しいが、そのままでも十分に汁気を含んでいる。大小2つ入っているのも嬉しいところだ。
玉子も褐色に染まるほど煮込んであるが、ぱさぱさせずしっとりとした食感をキープしている。少し崩してのり弁と一緒に食べても美味しいだろう。
おでんとのり弁という異色の組み合わせながら、味へのこだわりと食べる人への心配りが詰まった非常に完成度の高いのり弁だった。こうなるとハンバーグなどほかのお持ち帰り商品にも俄然興味がわいてくる。福島屋は訪れるたびに新たな発見があるので、ぜひ足を運んでみてほしい。
福島屋の基本情報
福島屋
〒106-0045 東京都港区麻布十番2-1-1
03-3451-6464
定休日:火
営業時間:11:00~21:00(ラストオーダー)
福島屋のWebサイト(麻布十番商店街のWebサイト)