福島屋のおでん種

福島屋は東京都港区の麻布十番商店街にあるおでん種専門店だ。大正10年創業の老舗ながら、店舗の2階で飲食業をはじめたり、名古屋名物として有名な味噌おでんを提供するなど常にチャレンジし続ける名店だ。

観光客と地元民の生活がうまく共存する麻布十番商店街

江戸時代から麻布山善福寺の門前町として栄えてきた麻布十番商店街。多くの老舗やおしゃれな店舗が立ち並ぶ全国的にも有名な商店街だ。

東京都港区麻布十番:麻布十番商店街

外国の高級車が行き交い、おしゃれな人も多くてハイソな雰囲気が漂っているが、昭和テイストを残す生活臭あふれる店舗も多くあり、観光と地元民の生活がうまく共存している商店街といえるだろう。

大正10年創業の老舗でありながらも革新を続ける福島屋

福島屋は各メディアで取り上げられているおでん種の有名店だ。麻布十番という立地だけでなく、店舗の2階で飲食業をはじめたり、名古屋名物の味噌おでんを提供するなど、さまざまな工夫を凝らし話題となっている。芸能人や知識人にもファンが多い。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋

大正10年(1921年)創業という歴史を持つことから由緒としても申し分なく、老舗の風格も漂わせる。2階のメニューに書かれている紹介によると、福島県出身の創業者が静岡県の蒲鉾店で修行したのち、東麻布で自家製蒲鉾店として開業し、戦後に麻布十番の現在地に移転したそうだ。福島出身なので「福島屋」なのだ。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋

現在の店主は三代目。麻布十番商店街のインタビューによると、持ち帰りおでんをはじめたのが二代目で、その後は二代目の奥さま(三代目のお母さま)が営業していたが、二代目が亡くなったことをきっかけに三代目が後を継いだとのこと。現在人気の飲食業は2006年に開始し、2014年に店舗を全面リニューアルした。

落ち着いた店内でおでん定食を味わう

おでん種を購入するまえに、福島屋を語るうえではかかせない2階の飲食スペースにお邪魔してみた。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋

店舗を入って左奥に階段があり、2階に上がるとテーブル席とカウンター席がある。今回はゆったりとしたテーブル席に着席した。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋

店内は落ち着いた雰囲気でおしゃれな感じである。これなら女性ひとりでも気軽に入れそうだ。店員の方々はやさしい表情の女性が多く、お年を召した方もいる。おしゃれでも堅苦しくなく、商店街のなじみのおでん種やさんの雰囲気を残している。入店したのは開店間際の11時半頃だったが、20分もすると席はほとんど埋まってしまった。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋

おでんは5点盛り2種、10点盛りがあるが、単品でもオーダーできる。おでんの定食は通常のおでんを盛り合わせた昔おでん定食と、八丁味噌で仕上げた味噌おでん定食の2種類がある。また、このほかにおでん3品と牛すじ味噌、豚の角煮などを含んだ麻布十品定食、シュウマイ定食や角煮定食などもある。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋

今回は昔おでん定食と味噌おでん定食をオーダーした。しばしビールを味わいゆっくり待つ。やっぱりお昼からのビールは最高に贅沢だ。福島屋ではビール以外にも日本酒や焼酎、ワインなどお酒が充実している。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋の昔おでん定食

まずは昔おでん定食を味わってみる。おでんの盛り合わせ内容は、大根、はんぺん、がんもどき、昆布、しらたき、利休揚。練り物は日によって異なるそうだ。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋の昔おでん定食

おでん汁は利尻昆布とカツオとサバの合わせ節で出汁をとっているそうだが、カツオが強めの印象だ。昆布出汁をきかせる関東風というよりは、関西風に近いのではないかと思う。ふんわりと上品な香りがただよう。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋の昔おでん定食

大根やしらたき、がんもどきにおでん汁がよく染みわたっていてとても美味しい。はんぺんは嘉平屋の菊水だと思うが、こちらもふわっと口の中でとろけて美味しい。利休揚げはスタンダードながら、落ち着いた味わいが心をほっこりさせる。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋の味噌おでん定食

お次は味噌おでん定食だ。大根、玉子、豆腐、牛すじの組み合わせ。真っ黒の八丁味噌がすごい。福島屋に置いてあったパンフレットによると、2015年の販売後も試行錯誤して作り上げられたそうだ。当初はほかの味噌も加えたオリジナルブレンドだったが、長時間鍋に入れているとしょっぱくなってしまったという。その後に八丁味噌100%に切り替え、具材もしぼって再発売。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋の味噌おでん定食

「一年を通して売り上げに変化がない」という理由で味噌おでんをはじめたそうだが、たしかにお酒にもよく合い何度も通いたくなる美味しさだ。訪れた日は天気がよく汗ばむくらいだったが、お客さんがとても多かったので店主のねらいは的中したといえるだろう。大根や玉子、豆腐は味噌が染みわたり、牛すじは柔らかく肉の旨味がじゅわっと溢れ出てくる。薬味として別売りの柚子胡椒を加えても美味しい。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん大根の唐揚げ

さらに、新メニューというおでん大根の唐揚げを頼んでみた。ガーリック風味の衣がからっとした食感ですばらしいが、出汁の染みた大根が柔らかく溶ける。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん大根の唐揚げ

揚げ物にもかかわらず、どんどん口に放り込みたくなる美味しさだ。夏はビールのお供として大活躍することだろう。さて、お腹も膨れて大満足だったが、本来の目的を果たさなければならない。1階に移動しておでん種を選ぼう。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん種

店舗の左側にはおでん種が美しく並んでいる。練り物とそれ以外のおでん種が一緒に陳列されていた。
この日は練り物のおでん種は11種類、そのほかは10種類。季節限定の種もあるらしい。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん種

ちくわぶは北区志茂のちくわぶ専門店、川口屋のものだ。川口屋は大好きなお店なので、パッケージを見つけたときは「おっ」と声が出てしまった。はんぺんは千葉県銚子の嘉平屋の菊水、おでん汁は正田醤油(綾瀬)のボトルが売っていた。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん

おでん種の隣では、できたて調理済みのおでんを販売している。シミシミの大根やしらたき、豊富な種類の練り物のおでん種が美味しそうだ。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん

少し変わったところでは豆腐、人参、エリンギなんていうのもある。家でも試せるだろうが、おでん種専門店の味を知るためにまず購入することをオススメする。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋

トマトも鍋の脇でスタンバッていた。亀有や西武池袋本店の佃忠でも提供しているし、最近では定番になりつつあるおでん種だ。トマトの酸味がおでんの辛みと甘みによく合うと評判だ。

定番ながら丁寧なつくりの福島屋のおでん種

福島屋の数あるおでん種のなかから13種類をチョイスしてみた。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん種

時計回りに12時から、いか天、しそ天、ゲソ巻、生姜天、しゅうまい巻、すごもり、つみれ、えび天、かおり揚、レンコン、もち巾着(中央上)、がんもどき(中央右)、厚揚げ(中央左)。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん

家に帰って調理開始。大根やこんにゃく、白滝などを入れてから練り物のおでん種を投入する。バラエティ豊かで美味しそうなおでんが完成した。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん種

福島屋のおでん種は変わり種が少なく定番のラインナップだが、とても丁寧に作られている。練り物は揚げ色が濃く、弾力が若干強め。イトヨリダイを使用し、無添加で仕上げられている。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん種 かおり揚

人気のかおり揚は魚のすり身にごぼうと人参が入っている。ごぼうの渋みのある深い味わいと人参の爽やかな香りと甘みが絡み合い、王道の美味しさだ。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん種 しそ天

こちらも人気のしそ天は、表面だけでなく魚のすり身のなかにも青じそが挟まれている。彩り、香りともによく、福島屋の人気商品というのもうなずける。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん種

ゲソ巻は定番ながら、噛めば噛むほどイカゲソの旨味が広がって美味しい。
厚みのあるがんもどきは、豆腐がみっちりと詰まっていて食べ応えがある。
すごもりはほどよい大きさで食べやすく、見た目も可愛らしい。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん種 しゅうまい巻

しゅうまい巻は魚のすり身の分量が絶妙で、挽肉の詰まった焼売の味を引き立てている。他のお店のものより小さめのつくりなので、いくつ食べても飽きがこない。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん種

レンコンは単品ではなく袋売りだった。輪切りのレンコンの造形が芸術的だ。ほどよい噛み心地と香りがなんともいえない美味しさだ。
もち巾着は中に詰まったお餅がとろりと溢れ出す。淡白な味なので、おでん汁が染み込んでも上品な味わいを保っている。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん種 生姜天

生姜天は紅生姜ではなく、通常の生姜を使用しているのでヘルシーな雰囲気。シャキシャキとした噛み心地と爽やかな芳香が素晴らしい。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋のおでん種 えび天

えび天には桜エビがたくさん詰まっている。桜エビの豊かな香りと魚のすり身のもちもちした味わいがよく合っている。

東京のおでんの未来に向けて、さらなる革新を

お店に入ってすぐの壁には初代店主たちの古い写真が掲げられていた。どなたも誇りと希望に満ち溢れたよい表情をしている。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋

かつては港区で複数あったおでん種やさんも、現在では福島屋の1軒となってしまった。時代が移り変わり、蒲鉾業界の状況も一変した。また、麻布十番は地下鉄が通って街並みも大きく変化した。激動の時代のなかで福島屋の看板を守り続けるのは大変だったことだろう。

東京都港区麻布十番 麻布十番商店街:福島屋

しかし、福島屋は伝統を守り続けるために、2階での飲食業の開始、味噌おでんの開発など、あえて新たな道を切り拓いてきた。なかなか真似のできることではないが、変化を恐れず突き進む姿勢は他のおでん種専門店でも参考になるだろうし、勇気を分けてもらえることだろう。この先の未来も東京の美味しいおでんを食べ続けられるように、福島屋にはさらなる革新を期待したい。

福島屋の基本情報

福島屋
〒106-0045 東京都港区麻布十番2-1-1
03-3451-6464
定休日:火
営業時間:11:00~21:00(ラストオーダー)
福島屋のWebサイト(麻布十番商店街のWebサイト)

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