〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん種

〇佐(まるさ)かまぼこ店は東京都杉並区の堀ノ内の妙法寺門前通り商店会にあるおでん種専門店だ。初代店主と二代目ご夫婦が一緒になって、こだわりのおでん種を作り続けている。道行く地元の人々との挨拶が飛び交うアットホームなお店だ。

厄除けで有名な堀之内 妙法寺と妙法寺門前通り商店会

東京メトロ丸ノ内線の東高円寺から徒歩約15分ほどの距離にある堀之内 妙法寺。創建は元和(げんな)の時代にさかのぼり、厄除けのために全国から参拝客が訪れていたというほどの有名なお寺で、古典落語の演目「堀の内」の題材にもなっている。

東京都杉並区堀ノ内:堀之内 妙法寺

その題目にちなんだ堀之内寄席を開催したり、3日、13日、23日には縁日があったりと賑わいをみせている。また、2013年から始まった千日紅市は、種から育てたセンニチコウの鉢植えを配布するなど妙法寺周辺の賑わいを取り戻そうと地域の人々が開催している。

東京都杉並区堀ノ内:妙法寺門前通り商店会

妙法寺の正面を走る道には30軒前後の商店が集まる妙法寺門前通り商店会がある。環七通りからの入り口には大きなアーチが設置されていて、妙法寺の看板もあってわかりやすい。

東京都杉並区堀ノ内:妙法寺門前通り商店会

妙法寺門前通り商店会は、妙法寺の門前街として古くから発展してきた。堀之内妙法寺の名物の揚まんじゅうを売る清水屋をはじめ、スーパーや青果店など生活に便利なお店が揃っている。

味だけでなく店主たちの人柄が魅力の〇佐(まるさ)かまぼこ店

おでん種専門店の〇佐(まるさ)かまぼこ店は、妙法寺のすぐそば、清水屋の向かいに位置している。
昭和36年(1961年)に妙法寺門前通り商店会の通り沿いで創業し、少し場所を移して現在の場所に落ち着いた。過去にはもう1軒営業していたが、その後に一緒になったそうだ。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

品川区の荏原中延の丸佐かまぼこ店は二代目店主のお母様の弟さん、つまり叔父さんが経営している。荏原中延の店主はこちらのお店で6、7年ほど修行をされていたそうだ。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

初代店主は高知出身なので、土佐から名前をとり「〇佐」となった。阿佐谷北の松山通り商店街にあったお姉さまのお店で2、3年(おそらく阿佐谷北3-27-9にあった小松屋かまぼこ店と思われる)、高知市の老舗である永野蒲鉾店で3年ほど修行をされたのちに独立された。なお、永野蒲鉾店は2014年11月末で閉業している。明治11年(1878年)から136年続く名店だったそうで、店主いわく永野蒲鉾店での修行の日々はとても有意義であったそうだ。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

正面右のショーケースには練り物のおでん種が並ぶ。その数は14種類。今回はなんと、初代店主のご厚意によりお店の内側から撮影させていただいた。美しいきつね色に揚がった姿がとても美しい。後方にある調理場で次々とおでん種を揚げ、できたてのものが追加されていく。魚はマグロやイトヨリダイなどを使っている。この日はクロカワカジキ(クロカジキ)が入ったそうだ。初代店主いわく、魚のすり身やつみれを作るのに最高なのはホッケだという。以前は頭のついた生のホッケが手に入ったが、今では数が少なくなってしまった。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

練り物以外のおでん種は11種類。つみいれはイワシの他にマグロなどが入った手作りだ。はんぺんは銚子の嘉平屋の菊水、魚のすじは銚子の糸川商店、焼ちくわは青森のイゲタ沼田焼竹輪工場のものだ。おでん汁は定番のチヨダのおでんの味と正田醤油(綾瀬)のふたつを用意している。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

右手にはできたておでんを店頭販売している。仕切り板に分けられたおでん種が美しい。この日は雨がぱらつき少し寒かったので、おでんの湯気が漂い美味しそうだった。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん

初代店主におすすめのおでん種をチョイスしていただき、もやし揚げ、しいたけ揚げ、焼ちくわ、こんにゃくをごちそうになった。通常は屋根のないお店脇のベンチに座るのだが、雨が降っていたので配送用の自転車の荷台をテーブルに見立て、椅子を出していただいて特製の席ができあがった。ここは屋根があるので濡れずにおでんを楽しむことができる。初代店主のご厚意に感謝である。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

この方が初代店主である濱田友則さんだ。
東京おでんだねの筆者が異常に東京のおでん種専門店に詳しいことを知って、とても親切にさまざまなことを教えてくださった。この面差し、とても経験が豊富で、優しそうで、素敵ではないだろうか。〇佐かまぼこ店に1時間ほどお邪魔していたのだが、道行く地元の人々が通りすぎるたびに店主たちに挨拶をしていた。おでんの味もさることながら、この人柄が〇佐かまぼこ店の最大の魅力だ。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

分厚くて大きいしいたけ揚げに感動していたら、初代店主がお忙しいにもかかわらず、わざわざ調理前の椎茸を持ってきて見せてくださった。さらに、撮影しやすいようにカゴに入ったたくさんの椎茸を持ってきていただいた。どの椎茸も本当に大きく、石突きだけで大人の指くらいある。笠に包丁を入れてあるので味が染み込みやすいだけでなく、噛み切りやすくなっている。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

お話を伺ったあと、初代店主が「調理場も見ていきなよ」と店舗内へ案内してくださった。
〇佐かまぼこ店はメディアに多く紹介されているが、テレビの取材に対しては少々疑問をもち、最近は露出を控えているという。その一方で、雑誌「暮らしの手帖」の2002年の取材は特別だったそうだ。

雑誌「暮らしの手帖 2002年2.3月」(暮らしの手帖社)

2、3名の取材陣が10日も熱心に通いつめ、記事は巻頭10ページの大ボリュームで紹介された。お店で拝見させていただいたあとに筆者自身で中古書を取り寄せてみたが、写真や文章も豊富で、さながら特集記事のようだった。暮らしの手帖社は真摯に紙面づくりに取り組んでいると聞いていたが、さすがだなとうなってしまった。

雑誌「暮らしの手帖 2002年2.3月」(暮らしの手帖社)

このような事情をうかがっていたので、東京おでんだねに対して親切にしていただいたのは本当にありがたく、身の引き締まる思いがした。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

店内では、二代目店主がしいたけ揚げの成形をおこなっていた。素早くもなめらかな手さばきで魚のすり身を形にしていく。実際に間近で見ると、素人では到底真似できない技ということがわかる。「かなり修行をされたのですか」と問いかけると、手を休めずに「まだまだですよ」と笑っていた。初代店主の次男坊だそうで、〇佐かまぼこ店の二代目として活躍されている。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

〇佐かまぼこ店のこだわりのひとつは、油にあるという。
油は頻繁に取り替えて、いつでも綺麗な状態にしている。一部を残すようなことをせず、すべて取り替えているのだそうだ。このため酸化せず、不純物もないので美味しいおでん種がからりと揚がる。

実際に揚げているところを見ると、煙がまったく立っていない。揚げたてのおでん種もキラキラと美しいきつね色だ。「綺麗な油なら美味しく揚がる」という道理はわかっていても、なかなか真似できるものではない。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

しいたけ揚げの成形をしていたと思ったら、今度はごぼう揚げの練りこみ作業を行なう二代目店主。初代、二代目、二代目の奥さま3人が、状況に合わせててきぱきと動いていく。息がぴったり合っていて、本当に無駄がない。しかし、調理場は夏場は暑く、冬はとても寒いという。毎日行なう仕込みや調理も大変な作業だ。おでん種専門店が流行っていたひと昔前でも、3年でやめてしまう店が多かったと初代店主は語っていた。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

揚げる前の魚のすり身も間近で見るのははじめてだったが、とても柔らかそうだ。自分で作るときの参考にしたいところだが、この絶妙な加減はなかなか真似できるものではない。また、技術がないと成形するのも難しいかもしれない。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

擂潰機(らいかいき)は明石鉄工所のものだ。初代店主がわざわざ杵(きね)をセッティングして回転するところを見せてくださった。臼(うす)が熱をもつので、まわりに氷水を入れるという。すり身は自宅の工場で20、30キロほどミンチなどをしておき、この擂潰機で擦るそうだ。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

店頭で販売しているできたておでんに使う大根とちくわぶは、あらかじめおでん汁に漬けて一晩寝かせている。こうすることでシミシミの美味しい状態で提供できる。大根は他のお店でも見たことがあるが、ちくわぶも漬けておくのははじめて見た。

揚げ色が美しい〇佐かまぼこ店のおでん種

こだわりの油や具材、すり身を見せてもらったら、たくさん買わずにはいられない。〇佐かまぼこ店では17種類を購入した。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん種

五目がんも、ごぼう揚げ、しょうが入り、つみいれ、しいたけ揚げ、チーズ巻き、しらたき、いかえび入り、やさい揚げ、枝豆入り、もちきんちゃく(中央上左)、揚げボール(中央上右)、うずら玉子(中央右)、れんこん揚げ(中央下)、もやし揚げ(中央左)。このほかにすじとちくわぶも購入。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん

おでん種はひとつひとつが大きめなので、切ってから入れるとちょうどよい。店内で見せていただいた製造工程を思い出しながら、大事に丁寧に調理させていただく。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん種

練り物は揚げ色がとても美しく、雑味のない魚の旨味がこのうえなく美味しい。これもまっさらな油で揚げたからであろうか。ほどよい弾力ときめ細やかな食感が心地よい。
つみいれはイワシのほどよい香りとなめらかな食感がよい。次の日に余ったつみいれを炙って食べてみたが、最高の酒の肴となった。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん種 しいたけ揚げ

しいたけ揚げはとても大きく食べ応えがある。大きいだけに椎茸の香りがふわっと口中に広がり、適度にまぶした唐辛子がよいアクセントとなっている。断面を見ると切れ込みがきちんと入っているのがわかる。秋田県産の生椎茸を使用している。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん種 チーズ巻き

チーズ巻きは串に刺さっているので子どもがその場で食べるときに便利だろう。優しいチーズの味で童心にかえった心持ちになる。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん種

しらたきは干瓢で巻いてあるので食べやすい。大振りなので噛んだときの汁の量と満足感がすごい。
揚げボールは他店よりもひとまわり大きい。シンプルに魚のすり身の味を楽しみたいときにおすすめだ。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん種 いかえび入り

いかえび入りはその名のごとくイカと桜エビがたくさん入っている。とりわけ桜エビの風味がよく、きめ細やかな魚のすり身とよく合う。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん種 もやし揚げ

ベストもやしを使用しているもやし揚げは、〇佐かまぼこ店の人気のおでん種だ。シャキシャキのもやしがふんだんに入っていて、噛んだときの食感がすばらしい。通常の平たいもやし揚げ(もやし天)に比べて厚みがあるので、もやしの食感をより楽しむことができる。これも唐辛子が入っているのでほどよくピリ辛だ。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん種 五目がんも

五目がんもも常連客に人気のおでん種だ。グリーンピース、人参、ねぎ、わかめや茎わかめが入っていて味わい深い。豆腐の自然な甘みもきちんとあり、濃いめのおでん汁だけでなく薄めのもので調理しても合うと思う。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん種

枝豆入りは枝豆の香りがよいだけでなく、彩りも華やかだ。一枚丸ごと食べてもよいが、半分にして食べるとちょうどよい大きさになる。
魚のすじは定番かつ王道の銚子の糸川商店のもので、サメや魚の旨味がしっかりする。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん種 れんこん揚げ

れんこん揚げは平たく切ったレンコン二枚で魚のすり身を挟んでおり、食感が面白い。このあたりの細かいこだわりが〇佐かまぼこ店の職人芸だ。こちらも唐辛子がちょっぴり入っている。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん種 やさい揚げ

やさい揚げは人参、コーン、玉ねぎ、グリーンピース、ごぼう、ピーマンなどが入ったぜいたくなおでん種。彩りと食感、味がさまざまで、一粒でたくさん楽しめる。野菜が苦手な子どもでも食べやすく、喜んでもらえるだろう。

東京おでんの理想郷

〇佐かまぼこ店の取材を終えても、初代店主の笑顔に吸い寄せられてふたたび話し込んでしまった。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店

健康そうな外見からはまったく想像できないのだが、初代店主は現在83歳。若さの秘訣は20年近く続けているウォーキングで、毎日近くにある善福寺川を2キロ30分という驚異的なペースで歩いているそうだ。また、地元の人たちが親しくしてくれるのがとても嬉しく、励みになっているという。近くの幼稚園児たちが道すがら挨拶してくれたり、図画工作で作った飾りをプレゼントしてくれたりして可愛いと微笑んでいた。

その優しい人柄と熟練した技術は二代目ご夫婦に受け継がれている。二代目店主にはおでん種づくりに対する情熱と信念をひしひしと感じた。奥さまは美しい容姿で、接客の手際や雰囲気がとてもよい。
東京のおでん種専門店は、後継者がおらずに店を閉じてしまう店が多い。初代店主が元気に活躍し続け、二代目と奥さまがしっかりとバトンを握り、美味しいおでん種を通して地元の人々を幸せにする〇佐かまぼこ店は、東京のおでん種やさんの理想といえるだろう。

東京都杉並区堀ノ内 妙法寺門前通り商店会:〇佐(まるさ)かまぼこ店のおでん

二日目の味の染みたおでんを味わいながら、ぼうっと初代店主のお顔を思い出す。またふらっと立ち寄って、おでん種を選びながら挨拶を交わしたい。スーパーや通信販売では得られない、最高の食体験がおでん種やさんにはあるのだなと、あらためて感じた。

〇佐(まるさ)かまぼこ店の基本情報

〇佐(まるさ)かまぼこ店
〒166-0013 東京都杉並区堀ノ内3-3-24
03-3313-2469
定休日:日曜(妙法寺の縁日は営業、振替月休)
営業時間:9:00~18:30
〇佐(まるさ)かまぼこ店のWebサイト(妙法寺門前通り商店会のWebサイト)

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