「お食事処 まえ田」のおでんで浅草情緒を楽しむ

「お食事処 まえ田」は明治40年から台東区浅草で営業を続ける大衆食堂だ。今回はまえ田のできたておでんを紹介したいと思う。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田のおでん

まえ田は50種類以上のメニューを揃えているが、店頭で調理しているおでんと牛すじ煮込みが特に人気だ。100年以上の間、常連客から観光客まで心温まる接客と家庭的な料理で迎えている。

おでんと牛すじ煮込みが人気の「食事処まえ田」

まえ田が営業している浅草の奥山おまいりまちは大衆演劇場の「木馬館」がある商店街として有名だ。洋品店や大衆酒場などが軒を連ね、昔懐かしい風情を漂わせつつも新たなお店が続々とオープンしている。

東京都台東区浅草:奥山おまいりまち

浅草寺のすぐそばなので若者や家族連れ、外国人客などの観光客で賑わっている。地元民や競馬を楽しむ人、木馬館目当ての観客も多い。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田(外観)

まえ田は以前紹介した君塚食堂から2軒ほど挟んだ場所にあり、真向かいは木馬館となっている。明治40年(1907年)創業の老舗であり、現在のおかみさんは初代から数えて4代目となる。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田のおでん

まえ田は50種類以上のメニューを揃えるが、なかでもおでんと牛すじ煮込みが看板料理となっている。文字通りこのふたつは店頭の鍋で調理されており、匂いにつられてやってくるお客さんも多い。訪問したときも若い女性客たちがスマートフォンで撮影をしながら「美味しそう」と鍋を覗き込んでいた。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田の牛すじ煮込み

おでんはバラエティに富んだ種が整然と並べられており、どれもしっかり味が染みている。牛すじ煮込みは丸い大鍋で煮込んであり、一見しただけで牛すじ肉が柔らかくなっているのがわかる。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田(内観)

店内は4名席のテーブルが4つとカウンターが3席ほどある。以前はもっと広かったそうだが、改装後にこの広さになったという。屋外にもテーブル席があり、浅草の景色を眺めながら料理を楽しめる。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田(内観)

木馬館の役者さんや訪問した芸能人のサインがいくつも飾ってあり、繁盛店であることがうかがえる。ドラマのロケに使われたこともあるそうだが、数日後にもTV番組に取り上げられる予定だとお店の方が説明してくれた。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田(メニュー)

メニューは壁一面を覆い尽くすほどたくさん揃っている。蕎麦やうどん、カレーライスやチキンライスなどの洋食系、ラーメンやタンメンなどの中華系、丼物、お酒のおつまみまであり、大人も子どもも楽しめる。お酒もビールや焼酎、ホッピー、酎ハイ各種が揃う。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田(メニュー)

おでんや牛すじ煮込みのほかに、やきめしやあご出し仕立てのうどん、厚揚げが人気のメニューとなる。今回はおでんと牛すじ煮込みをオーダーしてみた。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田(おでんと牛すじ煮込み)

TV中継している野球をお店の人たちと観戦しながらおしゃべりしていると、すぐにおでんと牛すじ煮込みが運ばれてきた。ここは瓶ビールを頼んで、喉を潤しながら熱々のものを楽しむことにしよう。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田の牛すじ煮込み

まずは牛すじ煮込みを味わってみよう。ぎっしりと詰まった牛すじの上にしゃきしゃきとした長ネギがたっぷり乗せてある。発売当初から味を変えておらず、現在まで人気の料理となっている。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田の牛すじ煮込み

牛すじ肉は大きめに切り分けられていて食べ応えがあり、厚みがあるので噛み締めると肉のうまみがじゅわっと広がる。じゅうぶん煮込まれているので柔らかく、脂はとろけるように甘い。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田の牛すじ煮込み

茶色いざらめと醤油で調理した甘辛の味わいが癖になりそうだ。おにぎりと合わせるとさらに美味しくなるという。具材は牛すじ肉とこんにゃくのみを使用している。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田のおでん

おでんもしっかりと味が染みながら、煮崩れしておらず上品な佇まいだ。先代は濃いめの味付けだったそうだが、4代目のおかみさんがつくるおでんは薄味となっている。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田のおでん

薄味とはいいながら、鰹節と日高昆布、あご出汁を加えた汁はうまみが重層的に感じられ、ひとくち含むごとにほっと心が和んでくる。大根も汁のうまみをたっぷり吸い込み、中まで飴色に染まっている。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田のおでん

練り物は山幸蒲鉾のものを仕入れている。山幸蒲鉾は福岡県博多で大正11年に創業した老舗の蒲鉾店だ。肉厚で程よく弾力があり、すり身の美味しさをしっかりとどめている。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田のおでん

おでんはひと皿7種類の盛り合わせだが、種類はお客さんに合わせて選ぶそうだ。たとえばちくわぶに馴染みのない関西のお客さんには別の種を加えるなどの配慮をしている。もちろん1品ずつ好みのものをリクエストすることもできる。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田のおでん

お持ち帰りにも対応しているので、店頭で声をかけるといい。大根や玉子、こんにゃく、揚げ蒲鉾、焼ちくわ、はんぺん、白滝、焼き豆腐など定番のものが揃っている。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田

店内には2代目のおかみさんの写真が飾られていた。以前は牛すじ煮込みと同じような丸い大きな鍋で調理していたという。おでんの老舗では変わらぬ味を売りにしているが、代々で特色ある味付けにしているのも趣があっていい。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田

おでんは煮詰まらないように常に気を配りながら調理されている。お店の方々は非常に気さくで元気いっぱいだが、調理をする手は繊細でこだわりが感じ取れる。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田

外国人客の質問にも丁寧に答え、分け隔てなくおもてなしをする。おそらくは初代から受け継がれてきたまえ田の伝統なのだろう。店頭に飾られていた写真の中のご家族は、皆一様にあたたかな眼差しを向けていた。

東京都台東区浅草:お食事処 まえ田

浅草らしい人情にあふれ、ぬくもりある料理を提供し続けるまえ田に一度訪れてみてはいかがだろうか。

お食事処 まえ田の基本情報

お食事処 まえ田
〒111-0032 東京都台東区浅草2-3-27
03-3841-5807
定休日:木曜
営業時間:10:00〜20:30
まえ田のWebサイト

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