美奈福のお持ち帰りおでん

美奈福は東京都中央区日本橋人形町にあるおでん屋さんだ。先代のおかみさんの人柄や、65年以上継ぎ足した出汁が染みたおでんが魅力の名店だ。現在はおかみさんの娘さんたちがお店に立ち、お持ち帰りのおでんのみとなったが、その魅力は色褪せることがない。

東京おでんだねでは東京のおでん種専門店をメインに取り上げているが、今回はできたてのおでんを持ち帰れるお店を紹介したいと思う。容器に移せばすぐに食べることができるし、おでん汁が染みた本格的なおでんを味わうことができるので、家でも大活躍することだろう。

人形町の名物おでん屋さん、美奈福

人形町の南北に延びる人形町通りと大門通りに挟まれた道は、道幅が狭いが魅力的なお店がたくさんある。人形町今半本店、浜町漬の浜の院本店など、江戸の老舗の雰囲気漂うお店が集中している。

東京都中央区日本橋人形町

今回紹介する美奈福は、この通りの甘酒横丁を挟んで南側にちょこんとたたずんでいる。

東京都中央区日本橋人形町:美奈福

美奈福は昭和28年(1953年)創業で、雑誌などのメディアでも取り上げられる有名店だ。以前は店内でおでんを楽しめたが、現在ではお持ち帰り専門店となっている。

美奈福でもっとも有名なのがお店を切り盛りするおかみさんだ。割烹着姿で調理する姿が素敵で、お客さんにやさしく接していた。現在は95歳なので引退し、娘さん姉妹2人が営業を続けている。おかみさんが引退したらお店を閉めるなんていう話も聞いていたので、すこしだけ安心だ。

東京都中央区日本橋人形町:美奈福

お店の角に設置されたカウンターからおでんをオーダーする。「本日ウィンナー巻きあります」など絵のついたお知らせが微笑ましく、あたたかい気持ちにさせてくれる。

東京都中央区日本橋人形町:美奈福

カウンターから覗くとじっくりと煮込まれたおでんが確認できる。出汁は特選の本枯鰹節と煮干しで取って、ザルでこしてから一旦沸騰させて翌日使うそうだ。もちろん継ぎ足しをするので、創業当時から数えると65年以上の秘伝のおでん汁に仕上がっている。

注目の練り物のおでん種は、千葉県銚子のおでん種業者から仕入れているという。練り物はいくつか種類があるが、ひとつの業者ではなく複数のお店のものを使っているという。「いろいろな味があると飽きずに食べられる」工夫なのだそうだ。

東京都中央区日本橋人形町:美奈福のメニュー

こんにゃく、たまご、しらたきなどの定番もの、ちくわぶ、すじ(白身魚)など関東、東京の地域もの、ほたて貝やたこのような時価の海鮮ものなど21種類が揃う。単品でもオーダー可能だが、セットでも購入できる。

東京都中央区日本橋人形町:美奈福

おでんを頼んでビニール袋に入れてもらう。アツアツの状態なので、家が近ければ温めなくてもすぐに食べられる。ビニールに描かれたイラストがとてもよい。ちなみに電話番号はお店の名前の3729(ミナフク)だ。

複雑さと繊細さを兼ね備えた美奈福のおでん

今回はおまかせ12個のセットを購入した。「3個いくら」というおでん種もあるので、実際は12個以上だ。

東京都中央区日本橋人形町:美奈福のおでん

時計回りに12時から、こんにゃく、がんもどき、つみれ、ごぼう巻き、しらたき、焼きちくわ、ほたて貝、さつまあげ、はんぺん、たまご(中央上)、こんぶ(中央下)。

東京都中央区日本橋人形町:美奈福の辛子

おでんを購入すると、一緒にからしも入れてくれる。すでに練ってある状態で、取り出せばすぐに使える。味の雰囲気はチヨダのものだろうか。ちょうどよい練り加減だ。

東京都中央区日本橋人形町:美奈福のおでん

おでん種にほんのり色がつき、くたっとしている。家庭では真似のできないしっかり味の染みたおでん屋さんのおでんだ。食べなくっても美味しいということがわかってしまう。

東京都中央区日本橋人形町:美奈福のおでん

はんぺんやしらたきはもちろんシミシミ。おでん汁は鰹の透き通った風味だけではなく、煮干しでふくよかな味となり、さまざまなおでん種から染み出た出汁によって複雑さと繊細さが増している。ごぼう巻きはじゅうぶん柔らかくなりつつも、きちんと魚のうまみを残している。

東京都中央区日本橋人形町:美奈福のおでん

さつまあげは人参が入っている。たしかにごぼう巻きのすり身とは練り加減が微妙に違うような気がする。がんもどき、たまごは汁がしっかり染みていて、色も美しい。ほたて貝はじゅわっとホタテのうまみがあふれ出て、噛めば噛むほど天国へ近づくような幸福感に満たされる。

東京都中央区日本橋人形町:美奈福のおでん

焼きちくわもくたっといい感じになっている。ちくわの味がほのかに逃げつつも、おでん汁の味が染み込み、両者が渾然一体となった絶妙な美味しさを楽しめる。こんにゃくもこんぶもめちゃくちゃうまい。

東京都中央区日本橋人形町:美奈福

美奈福は先代のおかみさんが頑張ってこられて、最近はお店を手伝ってきた娘さん姉妹にたすきが渡った。おでん屋さんにかぎらず、どの飲食店、どの業態の店舗も、変わらぬ品質を守っていくのは大変なことなのだと思う。練り物を仕入れているという銚子でも、だんだんとおでん種やさんが減ってきたそうだ。最近はつみれを仕入れていたお店が閉業し、別のお店のものに替えなくてはならないという。

「いつもそこにある」ための苦労は並大抵のものではない。しかし、受け手はその苦労に気づかず、当たり前のように感じてしまう。気がついたら突然なくなってしまうなんていうことがないように、頻繁に訪れては味わい、愛し、感謝できればと思う。

美奈福の基本情報

〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2-11-12
03-3666-3729
定休日:日曜、祭日
営業時間:12:30~18:00

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