ねぎし丸昇のお持ち帰りおでん

荒川区東日暮里にあるねぎし丸昇は、おでんと大学芋のお持ち帰り専門店だ。「荒川区民が選んだおみやげ品」として有名な大学芋だけでなく、薄口のおでんが好評の有名店だ。今回は、ねぎし丸昇のお持ち帰りおでんを紹介する。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇のおでん

JR鶯谷駅から徒歩10分程度、住宅街を進んだ先にねぎし丸昇がある。地元民から愛され、多くの著名人も通うことからTVなどのメディアで多数取り上げられている。

大学芋だけでなく、おでんも絶品! ご高齢の夫婦が営業するねぎし丸昇

ねぎし丸昇は88歳の店主と80歳のおかみさんが営業を続け、45年以上の歴史を誇る。大学芋が有名なお店だが、売上げの8割はおでんなのだという。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇

赤と黄色のにぎやかな装飾の店構えなので、近くに行けばすぐに見つけられるだろう。左側がおでん、右側が大学芋を販売するスペースに分かれている。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇

おでんを購入するときは「おもちかえりおでん入口」と書かれたドアから入る。店主やおかみさんは優しい方たちなので、緊張せずに奥へ向かおう。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇

入口のドアの脇には大きなおでん鍋が確認できる。見本用として鍋からあげているおでん種もある。バラエティ豊富なおでん種を目の前にして、心が踊ってしまう。急かされることはないので、質問しながらじっくり選ぶといい。店主やおかみさんはそれぞれ詳しく説明してくれる。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇

鍋の脇にはメニューが掲載してある。おでん種は29種類。丸昇オリジナルの袋詰め「山のさち」はぜひ頼んでおきたい。TVで紹介された当時は売り切れ続出だったが、現在は問題なく購入できる。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇

大根は三浦半島産のものを使用し、別の鍋で1日から3日間ほど仕込むそうだ。下茹でしてから薄めた醤油で煮て、完璧な状態に仕上げていく。こちらもぜひオーダーしておくといいだろう。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇

店主の大場康裕さんは88歳という年齢ながら、現在も元気に営業を続けている。山形県で生まれて築地で育ち、脱サラ後に老舗料亭に勤めて技術の研鑽を重ねた。大学芋とおでんという組み合わせは甘い、しょっぱいを同時に味わえるようにという理由から選んだそうだ。おかみさんは80歳、明るく優しくてとても素敵な方だ。筆者の質問に快く答えていただき、お店についていろいろと紹介していただいた。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇

ひととおりおでんを頼んだあと、大学芋も頼んだら「この場で食べていって」と誘っていただき、かつてイートインスペースだった場所に通していただいた。温かいお茶まで用意していただいてなんだか恐縮してしまう。しかも「おかわりはいかが?」と細やかに気を遣っていただいた。かつておでんを頼むと長野のお漬物をサービスで出していたこともあるという。

大学芋は荒川区の「区民が選んだ荒川みやげ」に選出された品だけあって、とても美味しい。蜜がとろっとしていて、非常になめらか。さつまいもの甘味がしっかりと伝わり、ほくほくとした食感がありながらしっとりしている。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇

イートインスペースは、令和元年(2019年)に施行された消費税の軽減税率(8%と10%のもの)によってやめることになったそうだ。かつての入口には貼り紙がしてあり、お持ち帰りの店であることを強調している。おかみさんは「倉庫がわりになっちゃって散らかっているけど」と笑っていた。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇

その場で食べることはできなくても、ぜひ訪れた際には見学させてもらうといい。丸昇の歴史やお店を愛する人々の気持ちが壁一面に広がっているので、眺めているとなんだかじーんとしてくる。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇

TVや雑誌の取材写真や社会科見学に訪れた子どもたちのメッセージ、常連客が書いたポストイットなどが貼られている。おかみさんは「こんな賑やかな時代もあったのよ」と懐かしんでいたが、最近のものも多く長年お客さんから愛されていることが分かる。

おかみさんには筆者と同じくらいの娘さんがいらっしゃるそうで、実の息子のように接してくれた。長い世間話の最中に筆者が「歳をとると親孝行したくなるものですね」と言うと、おかみさんは「なんだか涙が出てきちゃうわ」と目を潤ませながら微笑んでいた。とても愛嬌があって、優しくて、素敵な方だ。

ねぎし丸昇のおでん種

おかみさんとの会話に後ろ髪をひかれながら、自宅へと戻る。ねぎし丸昇では11種類のおでん種を購入した。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇のおでん

時計回りに12時から、大根、山のさち、こんぶ、ちくわぶ、肉ボール、つみれ、あつあげ、長崎あげだし、しゅうまい巻(中央左)、玉子(中央右)、すじ(中央下)。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇のおでん

お持ち帰り用として購入すると、たくさんおでん汁を入れて、二重のビニールに包んでくれた。おみやげ用として大学芋も購入すると、おかみさんは「うちの店のものじゃないけど」と言いながら、手提げ袋にも入れてくれた(帝国ホテルのもの!)。さらに、練りからしも「ひとつじゃ足りないわね」と2つ加えてくれた。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇のおでん

調理する際の注意書きも一緒に入れてくれた。「蓋をせず、煮立てないように弱火で温める」という一般的なものだが、おでんを作り慣れていない人はつい煮すぎてしまう。お店で完璧な状態で調理してあるので、温めるだけでいいのだ。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇の大学いも

大学芋もビニール袋と紙で丁寧に包んでくれる。注目は木札や暖簾が描かれた包装紙だ。下町である根岸の雰囲気が素晴らしく表現されている。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇の大学いも

中に貼られているシールに描かれた江戸文字もかっこいい。大学芋の原料となるさつまいもは明治9年(1876年)創業の甘藷問屋である川小商店から仕入れているという。「よい問屋さんにめぐり会えて本当に幸運だった」とおかみさんがおっしゃっていた。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇のおでん 江戸うすくち

さて、いよいよおでんに話題を移すが、まず、丸昇の最大の特徴といえる「江戸うすくち」のおでん汁を味わってみよう。昆布出汁のまろやかな味わいが印象的で、刺々しさがなく飲みやすくありながら、しっかりとしたコクがある。料亭で修行した店主の高い技術の結晶だ。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇のおでん

大根は大きいが、中までしっかりとおでん汁が染みていて、飴色に染まっている。別の鍋で醤油と一緒に煮ているため、ほかのおでん種に比べて濃いめの味付けだが、とてもまろやか。玉子はおでん汁に浸かって鈍い褐色に染まっている。弾力と黄身の旨味を残しつつ、ほかのおでん種と調和している。つみれはイワシの風味が濃く、地味深い味わいがなんともいえない。しゅうまい巻は背丈が高く、焼売の挽き肉の濃厚さと魚のすり身のまろやかさが交わって美味しい。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇のおでん 山のさち

山のさちはTVで話題になった丸昇オリジナルのおでん種だ。油揚げのなかに、しめじ、椎茸、舞茸、エノキタケ、きくらげ、人参、昆布が入っている。この具材の種類を紹介すれば、山のさちの美味しさはきっと伝わるのではないかと思う。複雑ながらも調和のとれた、豊かな旨味が口のなかで踊る。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇のおでん

長崎あげだしは人参、ごぼう、きくらげ、枝豆などが入った贅沢なおでん種だ。豆腐と魚のすり身がブレンドされていて、ふわりとした食感がいい。おそらく長崎県の杉永かまぼこのものだろう。昆布はとろとろになっていて、おでん汁と一緒に味わうとこの上なく美味しい。肉ボールは鶏肉の旨味がぎっしり詰まっており、まろやかなおでん汁とあいまって豊かな味わいが舌を襲う。すじは柔らかく、ほどよく残ったサメの旨味が口のなかにじんわりと広がる。ちくわぶやあつあげもじゅうぶん汁を吸い込んでいるが、小麦粉、大豆とそれぞれの持ち味を保っている。

東京都荒川区東日暮里:ねぎし丸昇

ねぎし丸昇は、おでん、大学芋ともに店主のこだわりやおかみさんの気配りがしっかりと味に反映されている。それらを味わうだけでも素晴らしいが、お店に訪れたときに触れるおふたりの人柄によって、さらに愛着がわき、唯一無二の体験となる。かなりのご高齢のためお身体だけは気をつけていただきたいが、これからも丸昇を愛する人々に喜びの味を提供していただけたらと思う。

ねぎし丸昇の基本情報

ねぎし丸昇
〒116-0014 東京都荒川区東日暮里4-2-2
03-3807-0620
定休日:日曜、祭日
営業時間:10:30~19:00(大学芋は11:00から)

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