大竹商店のできたておでん

墨田区八広にある大竹商店は、食料品や雑貨、お菓子などを扱うお店だが、おでんも販売している。今回は大竹商店のできたておでんを紹介する。

東京都墨田区八広:大竹商店のおでん

東京おでんだねではこの数週間、おでん種専門店ではなくお持ち帰り専門のおでん屋さんを紹介している。どれも古きよき味わい深い雰囲気を残しているが、このような形態のお店は日毎に数を減らしている。今回紹介する大竹商店はおでん屋さんではなく街の食料雑貨店なのだが、こちらもかなり希少な存在といえる。

昭和の懐かしい風景が残る墨田区八広

八広は墨田区の北東側、荒川に面した地域だ。住宅街のなかに古い町工場やお店が点在し、昭和の懐かしい風景が今もなお残る。

東京都墨田区八広:京成電鉄八広駅

王貞治さんの出身地としても有名で、かつてご両親が経営していた中華料理屋「五十番」の屋号を引き継ぐ「洋食50BAN」が京成電鉄八広駅の近くにあり、王さんの従兄弟が店主となって営業を続けている。

東京都墨田区八広

八広の町名は昭和40年(1965年)の住民表示実施に伴い、合併する8地区の「八」とその字体から「末広がり」の縁起を担いで「八広」と命名されたそうだ。

東京都墨田区八広

地域のほとんどは住宅街となっており、細い道が幾重にも折り重なっている。ときおり姿を見せる古い町工場が、在りし日の八広の風景を想像させる。

東京都墨田区八広:大竹商店

今回訪問する大竹商店も住宅街のなかにある。細く入り組んだ道を進んでいくと黄色い雨よけテントの建物が見えてくる。同じ通りにクリーニング屋さんもあるので、以前は多くの店舗が軒を連ねていたのかもしれない。

希少な街の小売店、大竹商店

大竹商店は日用品や食品、お菓子などを幅広く扱う小売店だ。現在でいうコンビニエンスストアの役割を担っていた存在といえる。東京おでんだねの筆者が子どもの頃はこのような商店をよく見かけたが、現在では軒並み数を減らしている。

東京都墨田区八広:大竹商店

お店はかなりご高齢の女性店主がひとりで営業している。昭和30年(1955年)以前から続けているそうなので、おそらくは80代後半から90代くらいなのだろう。普段は奥の部屋にいるので、大きな声で呼びかけてみよう。はっきりした口調でお話され、非常に聡明な方だった。

東京都墨田区八広:大竹商店

おでんの鍋は店外に設置してあるので、しっかりと蓋がしてある。夏の間はお休みしているそうなので、おでんが目当てなら秋から春にかけて訪れるといいだろう。

東京都墨田区八広:大竹商店のおでん

お客さんが少ない暖かい時期に訪れたため、おでん種は少々煮詰まり過ぎた感じがする。しかし、なんだかおおらかな雰囲気が漂っていてよい感じ。オーダーすると、店主がほどよい状態のものを鍋の底から選んでくれる。

東京都墨田区八広:大竹商店

おでん種は16種類。子どものおやつとして最適な価格で、最も高いフランクフルトでも100円だ。それにしても、大根が30円というのは驚きだ。

東京都墨田区八広:大竹商店

店内は昭和時代にタイムスリップしたかのようなノスタルジーあふれる空間が広がっている。子どもの頃、こういう雰囲気のお店で駄菓子をよく買ったものだ。カップラーメンやお菓子、飲料などを取り揃えているが、店主が毎朝手作りしているという惣菜パンも興味深い。

おでんはその場で食べるのが基本だが、持ち帰りができるか尋ねてみた。すると、店主は「こうすればいいわね」と言いながら、おでんを入れた発泡スチロール容器をビニール袋に包んでくれた。筆者も手伝ったが、店主に「こっち持って」と言われながらの共同作業はほのぼのとしていて非常に楽しかった。

東京都墨田区八広:大竹商店

大竹商店は自分のおばあちゃんの家のように非常に居心地がよいのだが、住宅街のど真ん中にあるし、地元民のためのお店でもあるので訪れる際は失礼のないように心がけよう。大人数で押しかけて騒いだり、ごみを放置することがないようにしてほしい。

大竹商店のできたておでん

大竹商店では8種類のおでん種を購入した。素朴で渋い雰囲気を漂わせている。

東京都墨田区八広:大竹商店のおでん

時計回りに12時から、大根、がんもどき、ちくわぶ、こぶ、つみれ、さつまあげ、玉子(中央左)、しらたき(中央右)。

東京都墨田区八広:大竹商店のおでん

通常はその場で食べるので、上写真のように発泡スチロール容器で提供される。別容器に移さずにこのまま食べても駄菓子屋や露店の雰囲気を楽しめるだろう。

東京都墨田区八広:大竹商店のおでん

この存在感、いかがだろうか。ほかのお店ではなかなかお目にかかれない貫禄が漂っている。かなり煮てあり全体的に濃いめの味となっているので汁を薄めてもいいが、燗酒や焼酎と合わせると抜群に相性がよい。

雰囲気はまさに駄菓子屋のおでんそのもので、過ぎ去りし子ども時代を懐かしむには最高の味といえる。最近は目まぐるしく物事がうつろい、おおらかな気持ちになることが少なくなったように思う。大竹商店のおでんは自身の価値観を見つめ直すよい機会を与えてくれているのではないかと感じた。

大竹商店の基本情報

大竹商店
〒131-0041 東京都墨田区八広3-24-15
03-3612-1557
定休日:月曜、土曜、日曜、祭日
営業時間:11:00~19:00

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