味自慢のやまやのお持ち帰りおでん

味自慢のやまやは、足立区の五反野にある持ち帰り専門のおでん屋さんだ。1年を通してしみしみのできたておでんのほか、たこ焼きやお好み焼きも販売している。今回はやまやのお持ち帰りおでんを紹介しよう。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまやのおでん

店主の女性との会話も楽しく、ついつい立ち話が長くなってしまう。子どものころの人情あふれる商店街の思い出が呼び起こされる素敵なお店だ。

新旧のお店が集まる五反野駅

東京スカイツリーラインの愛称で知られる東武鉄道伊勢崎線の五反野駅。北千住駅から2駅、上野駅まで約15分というアクセスの高さを誇り、サミットストアなど生活に必要なお店も充実している。ライトノベル作家の伏見つかささんが住んでいたことでも知られている。

東京都足立区中央本町:五反野駅前通り銀座会

駅の「五反野」という名称は江戸時代にあった綾瀬村の新五郎新田の小字(こあざ、土地の小区画の名称)である「五段野」が由来とのことだが、現在はその地名はなくなっている。ちなみに品川区の五反田は「水田の区画が5反しか取れなかった土地」という名称の由来があるそうだ。

五反野駅の改札を出ると、五反野駅前通り銀座会という商店街が広がる。チェーン店も多いが、長年営業を続ける昔ながらのお店もある。商店街からすこし離れてしまうが、駅から南西に向かうと曙湯という雰囲気たっぷりの銭湯があったり、大正13年(1924年)創業の天ぷらのお店である甲子(きのえね)などがある。

サミットストア五反野店はサミットにとって成長の礎をつくった最重要店舗だ。創業以来、赤字が続いたサミットの体質を変え、その後の発展につながる足がかりとなったお店だそうだ(参考:中日新聞:会社を救った歴史的店舗が歓喜の新装開店! 「サミットストア五反野店」)。

東京都足立区中央本町:珍来 五反野駅前店

五反野には中華チェーンの珍来が2店舗、近くの梅田店と梅島店をあわせると4店舗が営業している。珍来は関東で30店舗以上を誇り、系列店で修行してから独立開業する暖簾分けに近い形態で店舗を増やしてきた。地域によって少しずつ味が異なるが、どのお店でもボリュームたっぷりで満足度の高い料理を提供している。

女性店主の人柄が魅力の味自慢のやまや

味自慢のやまやは五反野駅前通り銀座会を北に向かい、珍来を越えたあたりにある。おでんのほかに、お好み焼きやたこ焼き、季節によってはかき氷なども販売している。お持ち帰り専門だが、お店の前にあるミニテーブルで食べることもできる。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまや

やまやは今年で46年目とのことなので、昭和50年(1975年)創業ということになる。店主の地元である足立区の江北で28年ほど営業を続けていたが、地域の再開発計画によって都営住宅団地の建替えが決定し、客足が遠のいたことから五反野に移転した。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまや

ガラス越しに美味しそうなおでん鍋を覗くことができる。じっくりと汁につかったおでん種が美味しそうだ。秋冬だけでなく、春夏の暑い時期でも販売している。大量発注も受け付けているそうだ。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまや

女性の店主がとっても素敵な方で、彼女との会話を楽しみにしているお客さんも多い。江北時代の話を伺ったが、その頃がいちばん楽しかったそうだ。ちょうど東京おでんだねの筆者は荒川を挟んだ向かいの豊島五丁目団地で育ち、店主の息子さんと同じくらいの年齢だったことから、店主が懐かしむ時代の雰囲気をありありと想像できた。時代は変わってしまったが、五反野の人々とふれあうことで楽しい思い出が増えていることだろう。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまや

おでんのメニューは鍋の脇に貼られている。合計28種類あるが、特筆すべきはフライがあることだ。フライは荒川区の南千住で「にくまん」と呼ばれ、ローカルのおでん種として有名だ。詳細は「南千住地域限定のおでん種、にくまん」という記事でまとめているので参考にしていただきたい。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまや

フライについて店主にお話を伺うと「フライはカレーボールと共に人気があって、これを目的にやってくる地元のお客さんが多いわね」と言いながら、仕入れているヤマサ蒲鉾のすり身のフライ製品のパッケージを見せてくれた。普通はこういった仕入れ品を見せることをためらうお店が多いが、やまやの店主はとってもオープンだ。このおおらかな雰囲気がとってもチャーミングで、どのお客さんも店主の虜になるに違いない。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまや

北千住のマルイシ増英とは長年の付き合いがあるらしいが、揚げ蒲鉾はマルイシ増英とは異なるものを仕入れているようだ。どの種も大きくて食べ応えがありそうだ。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまや

たこ焼きやお好み焼きも非常に魅力的な雰囲気をまとっている。価格も良心的で、まさに庶民のためのスナックといった親近感がある。年齢をさかのぼれることなら、部活帰りに友達とシェアして食べたかった。

味自慢のやまやのおでんを味わう

味自慢のやまやで購入したおでん種は9種類。フライがあることに興奮してしまい、定番の大根をオーダーすることを忘れてしまった。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまやのおでん

時計回りに12時から、じゃがいも、野菜天、フライ、しらたき、こぶ、カレーボール、たまご(中央左)、すじ(中央右)、ちくわぶ(中央下)。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまやのたこ焼き

おでんと一緒にたこ焼きも購入した。最近流行りの粒の大きいものではなく、ひとつひとつが手頃な懐かしいサイズ。おいしい東京のたこ焼き情報を掲載しているTAKOYAKI.TOKYOさんの感想「舌ではわからない味もある」が最もやまやのたこ焼きの感じを表していると思った。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまやのおでん

お持ち帰りでおでんを購入すると、ビニール袋に入れてくれ、さらに紙袋、ビニールの手提げ袋に入れてくれる。会計の前に店主が「からしは付ける?」と聞いてくれた。チューブのものとは異なり、粉からしから練ったものだと思われる。こういった心配りは本当に嬉しいものだ。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまやのおでん

ビニール袋からおでん種を鍋に移し、弱火であたためればすぐに食べられる。手間ひまかけたしみしみのおでんが手軽に食べられるのは本当に嬉しいものだ。おでん汁や昆布と鰹出汁の非常に優しい味で、家庭で再現するのはなかなか難しいだろう。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまやのおでん

じゃがいもやたまごの色を見れば、その染み込み具合が想像できるかと思う。じゃがいもはメークイン系のものを使用しており、とってもボリュームがある。ねっとりとした食感が魅力で、もちろん味も染み込んでいる。たまごもしっかり煮てあり、燻製のようなかぐわしい香りが漂うほどだ。こぶはとろとろの状態になっていて、ぎりぎり原型をとどめている。おでん汁と一緒に食べると口のなかでとろけ、身体の余計な力が抜けていくようだ。しらたきもたっぷりおでん汁を吸っている。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまやのおでん

野菜天は人参や玉ねぎなどの野菜が入っており、香りもよく魚のすり身のやさしい甘味を楽しめる。ちくわぶはおでん汁をたっぷり吸っており、くたっとした食感が最高に美味しい。すじは全体が褐色に染まるほど汁が染みていて、ふかっとした食感がとてもいい。カレーボールはカレーのスパイスがほどよく残っており、おでん全体とまろやかに調和している。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまやのフライ

フライは汁を吸い込んだ衣がふわっとしていて、とってもジューシーだ。ヤマサ蒲鉾の市阪品を使用しているというが、同じ商品を購入してもこの味は出せないだろう。おでんはおでん種だけでなく、汁や調理の手間ひまによって美味しさが決まるのだ。

東京都足立区中央本町:味自慢のやまやのおでん

味自慢のやまやは子ども時代の懐かしさがたくさん詰まった素敵なお店だ。メディアに登場する機会は少ないが、足立区を代表するおでんの名店といえるだろう。店主との会話がとても楽しいので、五反野界隈に訪れる機会があればぜひ立ち寄ってみてほしい。

味自慢のやまやの基本情報

味自慢のやまや
〒120-0011 東京都足立区中央本町2-24-17
03-3880-3719
定休日:木曜
営業時間:11:00~20:00

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