今回は関東屈指の古刹である深大寺と神代植物公園のおでんを紹介したいと思う。
厄除けで有名な深大寺とその裏にある神代植物公園。深大寺の周辺には多くの蕎麦屋が営業しており、おでんも提供されている。また、神代植物公園の売店ではおでんを販売している。自然と歴史あふれる深大寺で、のんびりとおでんを味わってきた。
関東屈指の古刹、深大寺
調布駅から2kmほどの場所にある街、深大寺。関東屈指の古刹である深大寺の周辺には風情のあるお店がいくつも立ち並んでいる。
深大寺は奈良時代の天平5年(733年)に開創したとされ、東京都でいえば浅草寺に次ぐ古いお寺だ。日本三大だるま市のひとつ「深大寺だるま市」が開催されることでも有名だ。
休日や祝日になると多くの参拝客や観光客で賑わう。深大寺周辺の土壌は蕎麦栽培に適しており、400年ほどの歴史がある。深大寺の周辺では20軒近くの蕎麦屋が並んでおり、蕎麦だけでなく蕎麦饅頭など蕎麦粉を使ったメニューが人気を集めている。
深大寺山門の隣にある甘味処「あめや」の店先では蕎麦粉を使ったそばぱんが販売されていた。玄米粉とそば粉を使って自家製造した蒸しパンで、高菜、あんこ、キーマカレー、惣菜の4種類がある。
別のお店を覗くと味噌田楽が売られていた。田楽は茹でた豆腐やこんにゃくに味噌をつけた食べ物だが、おでんのルーツといわれている。訪れた日は寒かったので、多くの人たちが買い求めていた。
深大寺周辺は自然も多く古き良き雰囲気を残したお店がたくさん集まっており、観光には絶好の場所となっている。それほど広くないので、食べ歩きをしながら散策するといいだろう。
蕎麦屋の店先にはメニューが掲げられており、ほとんどのお店でおでんを取り扱っていることがわかる。各店で自慢の料理も異なるので、じっくりと眺めてお店を決めるといいだろう。
玉乃屋で十割蕎麦とおでんを楽しむ
深大寺の裏手にある坂を上っていくと都立神代植物公園がある。入り口のひとつである深大寺門の向かいには玉乃屋と松葉茶屋という2軒のお蕎麦屋さんが営業している。
都立神代植物公園は深大寺よりも高い位置にあるので、バスで訪れるのであれば深大寺まで行かずに途中下車するといいだろう。深大寺から目と鼻の先なので歩いていけるが、急勾配の道のりなのでご注意を。
どの蕎麦屋もそれぞれの魅力があり選ぶのを迷ってしまうが、今回は玉乃屋を紹介したいと思う。玉乃屋は屋外の席で季節を楽しみながら、石臼挽き自家製粉のそば粉を使用した本格的な十割蕎麦を楽しめる。
玉乃屋の店内は杉皮屋根の落ち着いた雰囲気で、懐かしさと親しみやすさにあふれている。屋外の席は景色が素晴らしいが、お店の歴史が染みついた建物を眺めながら食事をするのもおすすめだ。休日は混雑するので、早めに訪れるのをおすすめする。
メニューは自慢の十割蕎麦を中心としながら、外二(蕎麦粉84%、つなぎ16%の手打ち)蕎麦のラインナップも豊富だ。おつまみや甘味も豊富に揃えているので、食事以外に立ち寄ってもいいだろう。
席に着いたら、とりあえず目的のおでんと深大寺ビールを頼んでゆっくりお店の雰囲気を楽しんでみる。さつま揚げを中心とした丁寧な盛り付けが、上品でぬくもりのあるおもてなしの心を感じさせる。
玉乃屋のおでんは5種類のおでん種となっており、さつま揚げ、イカ巻、焼ちくわ、こんにゃく、結び昆布となっている。練り物中心とは珍しいが、蒲鉾店を愛する東京おでんだねとしては嬉しいかぎり。また、ごぼう巻ではなくイカ巻というのも珍しい。
おでんをつまみながら外の風景を眺めていると、ほどなくしてお蕎麦も運ばれてきた。今回は太打ちの田舎蕎麦に鴨せいろの「鴨田舎」をオーダーした。
蕎麦粉だけで作られているのにコシもしっかりしていて喉越しもいい。季節ごとに北海道や茨城県の農家から蕎麦の実が多くなる前に収穫した「早狩り」のものを使用しているという。
鴨せいろは鴨のうまみもしっかりしていて極上の味わいだ。少し遠出したなら、やはり贅沢して美味しいものを楽しみたいものだ。おでんと一緒にゆっくり、じっくり味わいたい。
神代植物公園の自然を眺めながら、おでんを楽しむ
深大寺のおでんの楽しみ方についてもうひとつ、神代植物公園の売店で楽しむおでんも紹介しておこう。
深大寺からは公園の南東にある深大寺門から入園するといい。チケットを購入すれば、当日16時までは再入園が可能だ。
神代植物公園は街路樹などを育てるための苗圃だったが、戦後に神代緑地として公開された後に昭和36年(1961年)に神代植物公園として開園した。約4800種類、10万本・株の植物が植えられている。
ばら園、つつじ園、うめ園、はぎ園など季節の植物が楽しめるエリアが30ブロックほどに分けられている。ばら園の奥にある大温室では珍しい熱帯の植物を鑑賞することができる。
神代植物公園には正門近くに「グリーンサロン」というレストランがあるが、こちらは洋食が中心でおでんは時期によって提供していないこともある。アフタヌーンティーなどを楽しむといいだろう。
お隣の「ガーデンビューロー」にある「神代植物売店」では植物を販売しており、眺めているだけでも楽しい気分になってくる。日本の植物から西洋のものまで幅広く揃えている。
おでんを味わいたいのなら、公園中央北側にある芝生公園まで向かおう。広々とした開放的な空間で、天気の良い日は子供連れで賑わう。高さ6mほどにもなるパンパスグラスは神代植物公園を代表する植物として親しまれている。
芝生広場の北側で営業するのは「パークス神代芝生広場店」という売店だ。パークスは東京都公園協会が東京都内の公園で運営する売店兼休憩所だ。代々木公園や石神井公園などでも営業している。
パークス神代芝生広場店は、おにぎり、たこ焼き、フランクフルト、ソフトクリームからアールグレイティーまで、まさに売店といった感じのバラエティ豊かなラインナップ。おしゃれなカフェよりも心が躍ってしまうのは、筆者がまだまだ大人になりきれていないからなのだろうか。この雑多なメニューの中におでんもしっかりラインナップされている。
おでんはもちろんオーダーするとして、公園一番人気という焼きそばもチョイスしてみた。支払いを済ませると番号札を渡されて、しばらくすると熱々のものを手渡してくれる。店員の方はとても丁寧に接客してくれるが、親しげな雰囲気がにじみ出ていてあたたかい人情を感じさせる。
おでんは極めてスタンダードな味わいで、業務用のレトルトのものだと思われる。おでん種は大根、玉子、こんにゃく、さつま揚げ、ごぼう巻、焼ちくわ、結び昆布の7種類。こだわりのおでんではないにせよ、美しい植物と広々とした景色を眺めながら味わうおでんは格別なのである。
おでんを楽しんだ後は一番人気の焼きそばを頬張ってみる。ぎゅっと詰まったソースのうまみと香りが麺を噛み締めるごとに染み渡り、心が弛緩していくのがよく分かる。青のりと紅生姜は定番だが、やっぱりこの組み合わせが最高なのだと妙に納得してしまった。
のんびり食事を満喫した後は、うめ園まで足を運んで美しい梅の花を満喫した。神代植物公園では季節ごとに美しい花々を鑑賞できるので、訪れるごとにさまざまな魅力を感じることができる。
普段多くの人々に囲まれていると、まわりの人々がどう思うかを意識して生活しなくてはならないと思ってしまうが、深い歴史と豊かな自然に囲まれた深大寺を散策しながらおでんを味わっていると、自分自身がどう思うかを優先していくべきではないかと原点に立ち返ることができる。
人の目を気にせず、肩肘張らず、のんびりと素直な気持ちになって深大寺を散策しながらおでんを味わったのなら、きっと有意義な休日を過ごせることだろう。
玉乃屋の基本情報
玉乃屋
〒182-0017 東京都調布市深大寺元町5-11-3
042-485-0303
定休日:月曜(祝日と重なる場合は翌日)
営業時間:平日10:00~16:00(L.O.15:30)、土日祝9:30~16:30(L.O.16:00)、
玉乃屋のWebサイト
都立神代植物公園の基本情報
都立神代植物公園
〒182-0017 東京都調布市深大寺元町5-31-10
042-483-2300
定休日:月曜、年末年始
営業時間:9:30~17:00
神代植物公園のWebサイト