「おでん種」という言葉はどの地域で使われている?

「おでん種」は「おでんに入れる具材」の意味として使われている言葉だが、馴染みのない人も多く存在する。今回は「おでん種」という言葉がどの地域で使われているのか簡易的に調査してみたいと思う。

葛飾区立石:丸忠かまぼこ店

東京おでんだねはその名のとおり、おでんにいれる具材のことを「おでん種」と呼称している。しかし、人によっては通じないことがあり、どうやら「おでん種」の使用には地域差があるのではないかと考えた。
今回はGoogle トレンドを使って「おでん種」という言葉がどの地域で用いられているかを調査してみた。

そもそも料理における「種」とは?

「おでん種(おでんだね)」という言葉を調べる前に、まず「種とはなんだ?」という疑問が浮かび上がってくる。広辞苑には「材料。『おでんの—』『すしの—』」(引用:新村出編、岩波書店、広辞苑 第三版)とあり、つまりは料理の材料のことを指す。

お吸い物の「椀種(わんだね)」も主役になる具材のことを指すし、火を通す前のハンバーグの具材(挽肉と刻んだ玉ねぎを捏ねた状態のもの)を「ハンバーグ種」とあらわす例もみられる。ちなみに、寿司の「ネタ」は「種」が江戸時代に流行った倒語によって定着した言葉だ。

Google トレンドで「おでん種」使用の地域差を探る

さて、いよいよGoogle トレンドを使って「おでん種」という言葉が定着している地域を探ってみようと思う。Google トレンドはWebで検索されたキーワードの傾向を知ることができるサービスで、検索された地域を大まかに確認できる。「おでん種」という言葉が「頻繁に検索されている地域=定着している地域」と仮定して地域の傾向を比較すれば、「おでん種」使用の地域差を確認できる。

Google トレンド:おでん種・おでんだね・おでんの具
Google トレンド:おでん種・おでんだね・おでんの具(クリックして拡大)

まずは「おでん種(青)・おでんだね(赤)」と「おでんの具(黄)」で検索ボリュームを比較してみた(上画面)。2004年から2005年頃に「おでん種・おでんだね」が上回った時期もあるが、「おでんの具」が常に優位に立っている。さらに2012年頃から年々ボリュームを増やしているが、なぜこのようなトレンドになっているかはまったく不明だ。食品メーカーやコンビニが流行らせたのか、それともテレビのような影響力のある媒体が広めたのか、興味は尽きない。

Google トレンド:おでん種・おでんだね・おでんの具 地方で比較した内訳
Google トレンド:おでん種・おでんだね・おでんの具 地方で比較した内訳(クリックして拡大)

次に都道府県別で見てみよう。「おでん種(青)・おでんだね(赤)」は東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府で検索されているが、その他の県は「おでんの具(黄)」のみ(上画面、21件以降割愛)。大阪だけは例外だが、この傾向をみるかぎり「おでん種」は東京圏を中心に使われている言葉だとわかる。

Talkwalkerによるおでん種・おでんの具の地域分布
Talkwalkerによるおでん種・おでんの具の地域分布(クリックして拡大) © OpenStreetMap contributors ©OpenMapTiles

念のため、TalkwalkerというサービスでTwitterのハッシュタグ分布も調べてみた。赤色が「おでん種」、紫色が「おでんの具」だ(上画面)。期間は直近1週間のみの短いデータだが、無料使用の制限のためご了承いただきたい。上画面では色でしか分からないが、北海道や近畿地方、福岡で「おでん種」が使用されていることがわかる。詳細をカウントしてみたら合計で42回ほどになった。一方、東京は162回使用されている。「おでん種」は各地域で使われてはいるが、東京圏に集中しているといえるだろう。

東京都江東区三好 江戸資料館通り:美好商店

東京おでんだねの筆者は「おでん種」という言葉が全国区だと思っていたが、この結果を見て認識が間違っていたと言わざるを得ない。筆者は親子3代にわたって東京に暮らしてきたため、視野がかなり狭かったのかもしれない。じつはこのサイトをはじめてから薄々気づいてはいたのだが、あらためて調べてみて確信を得た。また、東京都でも「おでん種」よりも「おでんの具」のほうが2割程度多いが、他県の出身者が多く集まる地域特性上、今後も引き離されていく可能性がある。

こうなると「東京おでんだね」というサイト名や「odendane.com」というドメインは、地域色が強く多くのユーザーを誘引できないものだと後悔するが、東京のおでん種専門店にまつわる記事ばかりなので、まあよしとする(気に入っているし)。

ちなみに、2020年11月時点で営業を続けている東京のおでん種専門店では、約15軒ほどが看板や暖簾などに「おでん種」と明記していた。また、すべてのお店で「おでん種」という言葉は認知されていると思われる(筆者が会話のなかで使用したが、違和感なく受け入れられた)。

東京都北区赤羽:丸健水産

今回の簡易的な調査を通して「おでん種」という言葉が東京圏中心で使われている言葉ということがわかった。その理由や経緯については謎のままだが、機会があればふたたび調査を行っていければと思う。「東京圏ではないけど使っているよ」という情報があれば、ぜひお問い合わせページやSNSからご連絡いただきたい。なお、Google トレンドは抽出の時期や方法によっては検出されないこともある。また、今回の調査は本来の使い方ではないため鵜呑みにしすぎないでいただきたい。

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