桧山水産は東京都葛飾区東新小岩のみのり商店会にあるおでん種の専門店だ。新小岩の反対側、江戸川区にも桧山水産があるが、暖簾分けで分かれた別の店だという。上品な味の練り物のおでん種を取り揃えている。
生鮮食品が取り揃うみのり商店会
JR総武線の新小岩駅北口から約6分ほどの場所にみのり商店会という商店街がある。
商店会のWebサイトによると、昭和37年(1962年)12月に「上平井みのり会商店街」として37軒の商店から発足した。「みのり」の名は稲穂が実る秋をイメージしたそうだ。商店街ができる前は田畑が広がるのどかな場所だったが、高度成長期に伴い発展していった。バブル以降は訪れる人が少なくなり店舗も数を減らしているが、商店街の中心あたりは今も買い物客で賑わっている。
お得な値段設定が魅力の桧山水産
桧山水産といえば、東京おでんだねでも紹介した江戸川区の桧山水産がある。お店に立たれていたのはパートの方だったので詳細は確認できなかったが、かつて近くにあった工場から暖簾分けした別系統のお店らしい。
スーパーや肉屋、鮮魚店に囲まれていて辺りは非常に賑やか。桧山水産もお客さんが多く訪れていた。おでん種の他に、切りこぶ、きんぴら、さといもなどお惣菜も販売している。
お店の正面では練り物のおでん種が並んでいた。その数15種類。ボール系は4種類あり、10個以上で販売している。この日は20円引きで1個10円で販売していた。ボール以外はよりどり5枚で300円。こんなに安くて採算が取れるのだろうかと心配になってくる。ひとつひとつの種がプリッとしていてとても美味しそうだ。
おでん汁はチヨダのおでんの味、白滝は神戸物産のものだった。お店には出ていなかったが、ちくわぶとこんにゃくも販売している。
ちくわぶは同じ通りにある三嶋屋という豆腐屋でも販売していたので、そちらで購入した。
惣菜屋「なかむら屋」と喫茶店「白馬」
桧山水産に到着したときは午後1時頃だったのだが、まだ仕込み途中だった。午後2時くらいにすべてのおでん種が揃うとのことだったので、みのり商店会をぶらぶら散策することにした。
商店街に交差する道の信号待ちをしていると、なかむら屋という惣菜屋を発見したので立ち寄ってみた。
お店のおかみさんが「お店の中も見ていって」と勧めてくれたので入ってみることにした。ごぼうやハスのきんぴら、タケノコやかぼちゃの煮物など、何十種類ものお惣菜が並んでいて驚いた。漬物の種類も多いのだが、すべての商品を高齢のご夫婦だけで手作りしていると聞いてさらに驚いた。塩だけで漬けた酸っぱい昔ながらの梅干しを購入しつつ、しばらく店主と立ち話に花を咲かせた。
よい買い物、よい出会いがあり嬉しい気持ちになったが、まだ時間は40分ほど残っていたので喫茶店でコーヒーと軽食をいただくことにした。喫茶店の名前は白馬。みのり商店会で唯一の喫茶店である。
カウンターとテーブル席、10人も入ればいっぱいになろうかという店内は昭和の香りが漂う昔ながらの雰囲気。夜はバー(スナック)になるらしい。ここの店主は60代前半かと思ったら、70代後半で驚いた。とても人懐っこい性格の素敵な方で、お店や商店街のことを色々伺うことができた。常連客も多いそうで、中には高校生の頃から通う女性もいて、すでに40代なのだという。お客さんを精一杯おもてなしする店主の優しさが多くの人を惹きつけているのだろうと感じた。話に熱中しすぎて、1時間半もお邪魔してしまった。ここの焼サンドイッチはこんがりサクサク、卵はふわふわでとても美味しいので、みのり商店街に立ち寄るときはぜひ味わってみてほしい。
控えめな味付けが魅力の桧山水産(東新小岩)のおでん種
東新小岩の桧山水産では11種類を購入。どれも綺麗なきつね色だ。
時計回りに12時から、しょうが天、もやし天、さつま揚、チーズ巻、ちぎり揚げひじき、いか巻、ぎょうざ巻、えび玉ねぎ、スタミナ天、しゅうまい巻(中央左)、うずら巻(中央右)。
大根、ちくわぶなどを下茹でして、あとから練り物のおでん種を投入。例によって練り物は蓋をせずに温める程度にした。桧山水産の練り物は味付けを控えめにしているようだ。練り方はきめ細やかでありながら、ほどよく弾力がある。
さつま揚は具材がなにも入っていないので、練り物の味がダイレクトに伝わる。さらに厚みがあるのでモチっとした食感を堪能できる。うずら巻は玉子が真ん中から顔を出す定番の形状で、練り物の分量バランスがちょうどよい。ちぎり揚げひじきは人参やひじきの他に大豆が入っていた。ひじきをふんだんに使っているだけあって香りが素晴らしい。
スタミナ天はもやしや黒ごま、人参、ニラが入っている。北区の丸健水産のスタミナ揚げに似ているが、こちらは胡椒が入っておらず、大きめで食べ応えがある。
しょうが天は紅生姜の清々しい風味が効いていて美味しい。鼻にツンときてふわっと抜ける清涼感がなんともいえないのだ。
いか巻は棒状のイカが入った定番のおでん種だ。柔らかいのですんなり噛みちぎれるが、噛めば噛むほどイカのうまみが広がって美味しい。
しゅうまい巻は皮の四辺がきちんと練り物から出ていて可憐な印象。中は挽肉がたくさん詰まっており、本格的な焼売の風味がする。
もやし天はシャキシャキのもやしの食感がきちんと残っていて美味しい。えび玉ねぎは玉ねぎの甘みが効いている。また、他の練り物と異なり弾力を抑えてふわふわの食感となっている。
チーズ巻はとろけたプロセスチーズが練り物から溢れ、優しくも濃厚な味。子どもが喜ぶおでん種だ。
ぎょうざ巻は立派なサイズで食べ応えがある。ワンタンのように柔らかくなった皮と、挽肉の餡のうまみが嬉しい逸品だ。
さまざまな生鮮食品や惣菜が揃い、魅力的な喫茶店があるみのり商店会。そして、良心的な価格と上品な味わいの桧山水産のおでん種。東京の宝と呼べるようなこれらの存在が、あまり知られていないのはもったいないと思う。新小岩というと南口が有名だが、ぜひ北口にも足を運んでもらいたい。個人的にはまた桧山水産でおでん種を買って、なかむら屋と白馬の店主たちと再会したいと思う。
桧山水産(東新小岩)の基本情報
〒124-0023 東京都葛飾区東新小岩7-30
03-3691-8122
定休日:日祝
営業時間:10:00~19:30
桧山水産(東新小岩)のWebサイト(かつしか商店街のWebサイト)