蒲元のおでん種

蒲元は江戸川区の江戸川共栄商店街にあるおでん種の専門店だ。最近は惣菜専門店として知られているが、亀有の蒲鉾屋から独立後、40年以上の歴史を持つれっきとしたおでん種やさんなのだ。

アーチが可愛らしい江戸川共栄商店街

蒲元がある江戸川共栄商店街に向かうため、都営地下鉄新宿線の瑞江駅に降り立った。

東京都江戸川区:瑞江駅

瑞江駅周辺は隣の一ノ江駅や篠崎駅に比べて店舗が多く便利なわりに、江戸川区の他の繁華街よりも家賃相場が低いそうだ。都内では比較的遅めの昭和61年(1986年)開業ながら、利用者数は年々増加している。

東京都江戸川区江戸川一丁目:江戸川共栄商店街

瑞江駅から南東に10分くらい歩くと、江戸川共栄商店街にたどり着く。上の写真は商店街の中心部で、十字に交差した道に店舗が並んでいる。

東京都江戸川区江戸川一丁目:江戸川共栄商店街

江戸川共栄商店街は「エトワールモール」という愛称がつけられている。
商店街の入り口や十字路には立派なアーチが建てられている。以前は人形のからくりがあったそうだが、現在は動かないようだ。店舗の大部分は住宅に変わってしまったが、それでも元気に営業する店も多い。また、フリーマーケットなどのイベントも開催しており、地元の老若男女に愛されている。

昔なつかしい風情が漂う蒲元のお店

蒲元は商店街中心部あたりに店を構える。ドアや仕切りのない建物の構造は、最近ほとんど見かけなくなった。

東京都江戸川区江戸川一丁目 江戸川共栄商店街:蒲元

向かって右側では天ぷらや揚げ物を販売している。おかみさんにお話を伺ったところ、いちばんの売れ筋はこれらのお惣菜なのだそうだ。開業当初はおでん種専門店でスタートし、次第にお惣菜も始めたという。午後は煮物も販売するそうだ。この周辺で働く人や主婦たちの強い味方になっているに違いない。インターネットで蒲元を検索すると、おでん種やさんとしてではなく、惣菜屋として紹介されている。

東京都江戸川区江戸川一丁目 江戸川共栄商店街:蒲元

実際に訪れるまでおでん種を売っているか心配だったが、店中央の冷蔵ショーケースにしっかり並んでいた。名札がなかったが、おかみさんが指を差しながら教えてくれた。ボール、カレーボール、イカ巻などスタンダードなものばかり。カレーボールはできたばかりだと言って、串に刺して試食させてくれた。
魚のすじは銚子の糸川商店のもので、はんぺんも同じく銚子の嘉平屋のものだった。

東京都江戸川区江戸川一丁目 江戸川共栄商店街:蒲元 東京冷凍機工業

冷蔵ショーケースには古いプレートが貼ってあった。「東京冷凍機工業」という社名があり、「東京・杉並」という所在地が記載されている。検索すると葛飾区西水元に同名の会社があったが関連性は不明だ。ペンギンのマークが厨房機メーカーのホシザキに似ていて可愛らしい。こういった情報に乏しいものを掘り下げていくのも面白いかもしれない。

東京都江戸川区江戸川一丁目 江戸川共栄商店街:蒲元

店の左側ではできたての調理済みおでんが販売されている。その数21種類。ちくわぶもちゃんとラインナップされている。ほとんどが名前だけでどのような種だか理解できるが、木の葉揚だけはわからなかった。一般的には木の葉の形をした練り物を指すが、ごぼうのささがきが入っていることもある。次回来たときに調べてみよう。

東京都江戸川区江戸川一丁目 江戸川共栄商店街:蒲元

お店の奥には使い込まれた擂潰機(らいかいき)が見える。ヤナギヤ(柳屋鉄工所)のものだろうか。現在でも使われているかわからないが、これまで多くの練り物を作ってきたことだろう。擂潰機は高価なものなので、修理ができなくなると廃業してしまうおでん種やさんが多いと聞く。

おでん種を選びながら、しばし蒲元のおかみさんにお話を伺った。物静かな方で黙々と仕込みをされていたが、話しかけると気さくに応じてくれた。
蒲元の創業は昭和50年(1975年)で、元々は亀有の蒲鉾店(佃忠ではないそうだ)で働いていたという。同じお店で働いていた方も一緒に江戸川共栄商店街に移り、それぞれ独立してお店を開いたのだそうだ。

開業当初は江戸川共栄商店街に多くの買い物客が訪れ、中央の道は人が通れないくらいだったという。客足が減少したのは瑞江駅が開業してからで、人の流れが商店街から駅方向へ変わったのだという。瑞江駅は昭和61年(1986年)開業なので、30年の間に少しずつ衰退していったのだろう。

東京都江戸川区 小松菜グルメスタンプラリー:蒲元

「蒲元の情報があまり見つからなかった」と話したら、江戸川区のイベントにはよく参加していると言って「小松菜グルメスタンプラリー」の冊子を見せてくれた。小松菜の名は江戸川区の小松川の地名に由来している説があり、栽培している農家も多いという。蒲元も小松菜コロッケを販売しているので冊子で紹介されている。おでんだけでなくこちらも美味しそうだ。
その他にも江戸川区役所に頼まれて、葛西で行われるイベントなどに出店しているそうだ。イベントで蒲元を知ったなら、ぜひ店舗まで足を運んで昔なつかしいお店の雰囲気を味わってもらいたいものだ。

東京都江戸川区江戸川一丁目 江戸川共栄商店街:江戸一ショッピングセンター

買い物を終え、しばらく江戸川共栄商店街を散策した。すると、江戸一ショッピングセンターと呼ばれる建物を発見した。現在は閉まっているが、かつては多くの店舗がこの建物の中で営業していたそうだ。隣にあった江戸川区発祥のスーパー、ヤマイチが移転してから客足が減り、和菓子屋の能登屋の閉業を最後にすべてのシャッターが下ろされたという。

東京都江戸川区江戸川一丁目 江戸川共栄商店街:江戸一ショッピングセンター 蒲久

看板を眺めると、なんと「おでん種製造販売 蒲久」という店名を見つけた。蒲元のおかみさんが話していた、亀有で一緒に働いていた方のお店はここなのかもしれない。

東京都江戸川区江戸川一丁目 江戸川共栄商店街:山本豆腐店

帰り際、蒲元の近くにある山本豆腐店で白滝と生揚げを購入する。こちらのお店はメニューが豊富で、おでん種を追加するには最適だ。蒲元に行く予定があれば、こちらのお店もぜひ利用していただきたい。ちなみに白滝は同じ江戸川区の伝田商店のものだった。

スタンダードな種類が揃う蒲元のおでん種

今回購入したおでん種は下の写真の通り。東京下町の極めてスタンダードなラインナップだ。

東京都江戸川区江戸川一丁目 江戸川共栄商店街:蒲元のおでん種

12時から時計回りに、生姜揚げ、ウインナー巻、ゴボー巻、イカ巻、焼売巻き、カレーボール、ボール、生揚げ(山本豆腐店のもの)、五目揚、こぶ(中央上)、ツミレ(中央下)。この他にすじも購入。ちなみに生姜揚げと焼売巻きは名札がなかったので蒲元の正式名称ではない。ひとつひとつのおでん種は大きすぎず、小さすぎずのちょうどよいサイズだ。写真では複数の種が写っていないが、これで1070円というから驚き。

東京都江戸川区江戸川一丁目 江戸川共栄商店街:蒲元のおでん種

大根と玉子を下茹でしてから、こぶや白滝を入れ、最後に練り物を投入する。蒲元のおかみさんが「カレーボールは煮込むと味が汁に混ざるから温める程度に」とアドバイスをくれた。他のおでん種やさんでも「練り物を煮るときは蓋をするな」とか「練り物は必ず油抜きしろ」だとかアドバイスをもらえるが、こういう何気ない心遣いが嬉しいものだ。

東京都江戸川区江戸川一丁目 江戸川共栄商店街:蒲元のおでん種

それでは早速試食開始だ。
蒲元の練り物は味がしっかり付いているので、おでん汁は薄めのものがよく合う。チヨダのものより正田醤油(綾瀬)のものを少なめに稀釈したほうがいいだろう。歯触りは非常に弾力があり、食べ応えがある。ボールは練り物の味がダイレクトに伝わるので必ず加えておきたい。なんと7個で100円だ。
カレーボールはスタンダードながら、なつかしいカレー粉の味わいが広がって美味しい。ボールよりもひとまわり大きく作られている。
ツミレはイワシの風味がふんわりと広がるが、臭みはまったくない。千切りした人参が入っていて彩りがよく、コロンとした丸い形状も可愛らしい。

蒲元(江戸川区江戸川一丁目) おでん種:焼売巻

焼売巻きは練り物の粘りと挽肉のジューシーな味わいが組み合わさって非常に満足感がある。他の店では大きな焼売を入れて挽肉の味を強調するものがあるが、蒲元の焼売は小さめでコンセプトが異なる。練り物の量と焼売の大きさがちょうどよい配分なのだ。

東京都江戸川区江戸川一丁目 江戸川共栄商店街:蒲元のおでん種

生姜揚げは紅生姜の清々しい香りだけでなく、食感がサクサクしている。練り物の味付けがしっかりしているので、生姜の爽やかさが強調される。手頃な大きさで食べやすいのもポイント。

蒲元(江戸川区江戸川一丁目) おでん種:ウインナー巻

ウインナー巻は赤ウィンナーが入っていて、とてもなつかしい味わいだ。断面が非常に可愛らしい。イカ巻は結構太いイカが入っていて食べ応えがあるが、とても柔らかい。

東京都江戸川区江戸川一丁目 江戸川共栄商店街:蒲元のおでん種

ゴボー巻は安定した美味しさだ。山の幸の渋みが程よく練り物に絡まる。筆者が大好きなおでん種なのだが「東京おでんだね」では久々の登場だ。

東京都江戸川区江戸川一丁目 江戸川共栄商店街:蒲元のおでん種

五目揚は人参、玉ねぎ、長ネギ、イカ、生姜が入った贅沢な逸品。彩りも非常に華やかだ。大きめの玉ねぎがサクサクとしていてよいアクセントになっている。生姜の風味もそれぞれの具材の味を引き立てている。

山本豆腐店の生揚げは揚げた表面に香ばしさがあり、白い豆腐の部分は型崩れしない固さを保ちつつ上品な柔らかさがあった。大豆の旨味が口の中に広がってとても美味しかった。伝田商店の白滝は程よい大きさで食べ応えがあった。やはり、小さいものよりも大きめに結んだもののほうがおでんにはよく合う。

古き良き昭和の風情が漂う江戸川共栄商店街と蒲元。時を経るごとに味わい深くなりつつも、失われてしまう危うさも持ち合わせているといえるだろう。この素晴らしい味と文化が残っているうちに、なるべく多くの人たちに訪れていただき、その素晴らしさを共有できたらと切に願う。

蒲元の基本情報

〒132-0013 東京都江戸川区江戸川1-47-5
03-3679-2635
定休日:日曜
営業時間:8:00〜19:00, 11:00~19:30
蒲元のウェブサイト(江戸川区ウェブサイト)

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