武田惣菜店のおでん種

武田惣菜店(武田商店)は世田谷区の尾山台北口商店街にあるおでん種の専門店だ。店名の通り、お惣菜も豊富に取り揃えているが、元々はおでん種やさんとして創業している。

昭和の雰囲気を残す尾山台北口商店街と尾山台いちば

東急大井町線、尾山台駅。昭和5年(1930年)に開業してから駅周辺に商店が立ち並ぶようになり、ハッピーロード尾山台などいくつかの商店街が生まれた。閑静な住宅街でありながら、等々力渓谷に近いこともあって自然が豊かな場所でもある。

東京都世田谷区等々力五丁目:東急大井町線尾山台駅

武田惣菜店のある尾山台北口商店街は駅の北側にある。商店街ではさまざまな催しものが企画され、地域の活性化に貢献している。訪れた日は、もちつき大会の垂れ幕が飾られていた。

東京都世田谷区等々力四丁目:尾山台北口商店街

尾山台北口商店街は南側のハッピーロード尾山台に比べて店舗は少ないが、古くから営業しているお店がたくさんある。特に踏切そばの尾山台駅前ビル1階にある尾山台いちばは昭和21年(1946年)に開業し、70年以上の歴史を持つ。

東京都世田谷区等々力四丁目 尾山台北口商店街:尾山台いちば

尾山台いちばは広いスペースに5軒ほどのお店が入居しており、食料品などを販売している。入居している店舗は古く、八百屋の八百米商店と鮮魚店の魚辰は親子三代に引き継がれてきた老舗だ。

東京都世田谷区等々力四丁目 尾山台北口商店街:尾山台いちば

建物に入ると様々な商品が並んでいて、見ているだけでもワクワクしてくる。以前はこういったマーケットは東京中に存在したが、前回紹介した江戸川共栄商店街の江戸一ショッピングセンターのようにシャッターが下ろされているものも多い。新しく作られるテナントビルでは味わえない古き良き昭和の雰囲気が漂っているので、今のうちに訪問することをオススメする。

おでん種専門店として創業した武田惣菜店

武田惣菜店は約60年ほど(昭和33年頃か)の歴史があり、おそらく現在の店主で二代目だ。

東京都世田谷区 尾山台北口商店街 尾山台いちば:武田総菜店(武田商店)

インターネットで紹介されている店名は「武田惣菜店」だが、看板は「武田商店」となっている。創業当時はおでん種やさんとしてスタートし、その後にお惣菜が充実していった。たこボールという商品がテレビ東京の「出没!アド街ック天国」で紹介されていたが、この日は店頭に出ていなかった。

東京都世田谷区 尾山台北口商店街 尾山台いちば:武田総菜店(武田商店)

お惣菜は種類が豊富で美味しそうなものばかりだった。とりレバーのしぐれ煮や芋がら炒めなど、ごはんに合いそうなものが多い。焼き鳥も売っていて、食べ歩きにも最適だ。以前訪れたときに焼き鳥を購入したが、タレの味付けがよく美味だった。

東京都世田谷区 尾山台北口商店街 尾山台いちば:武田総菜店(武田商店)

さて、肝心のおでん種について紹介しよう。店頭に並んでいた練り物は16種類。他のおでん種やさんに比べて少し種類が少ない気がするが、どれも大きく食べ応えがありそうだ。また、名前は定番だが、明らかに具材の組み合わせに工夫を凝らしたおでん種も多くて目移りしてしまう。

東京都世田谷区 尾山台北口商店街 尾山台いちば:武田総菜店(武田商店)

左側にある冷蔵ショーケースには、練り物以外のおでん種が並んでいた。はんぺんは小田原の鈴廣(浮きはんぺん)、魚のすじは銚子の糸川商店、ちくわ、こんにゃく、白滝は蒲田の樋川商店のものだった。ちくわぶは生ちくわぶを販売していた。

完成度が高く、満足度の高い武田惣菜店のおでん種

今回、大きめのおでん種を中心に9種類を購入した。ひとつひとつが本当に大きい。

東京都世田谷区 尾山台北口商店街 尾山台いちば:武田総菜店(武田商店)のおでん種

時計回りに12時からしょうが天、お好み揚、野菜たっぷり七味揚、たまねぎちぎり、たっぷりコーン揚、イカ天、いわしつみれ(中央)。この他に魚のすじとちくわぶを購入。

東京都世田谷区 尾山台北口商店街 尾山台いちば:武田総菜店(武田商店)のおでん種

武田惣菜店のおでん種は大きいので、鍋に入れると溢れんばかりの存在感だ。練り物の味は非常にソフト。東京のおでん種やさんの中にはしっかり味付けするところも多いが、武田惣菜店のものは優しい感じがする。「スーパーの安いやつみたいに変なもの入れていないから美味しいよ」と店主がおっしゃっていたが、添加物は一切入っていないので健康面でも安心だ。舌触りは滑らかで柔らかいが、適度な弾力もある。

東京都世田谷区 尾山台北口商店街 尾山台いちば:武田総菜店(武田商店)のおでん種

野菜たっぷり七味揚は名前の通り、人参、ごぼう、もやし、にらなど野菜がたくさん入っている。七味の辛さが主張していて食欲を掻き立てる。ゴロッとした丸い形状も食べ応えがあり満足度がある。

東京都世田谷区 尾山台北口商店街 尾山台いちば:武田総菜店(武田商店)のおでん種

たっぷりコーン揚はこれでもかと言わんばかりにコーンがたくさん入っていて、甘みが口中に広がる。コーンのシャキシャキとした歯ごたえが心地よい。

東京都世田谷区 尾山台北口商店街 尾山台いちば:武田総菜店(武田商店)のおでん種

お好み揚はイカ、ねぎ、人参、ごぼうが入っていて大満足のおでん種だ。とにかく巨大なので半分に切って二人で分け合うとよいだろう。これだけの具材が入っているのだから、美味しくないはずがない。

東京都世田谷区 尾山台北口商店街 尾山台いちば:武田総菜店(武田商店)のおでん種

イカ天はお好み揚に似ているが、イカの風味がより効いている。しょうが天は春菊が入っているが、とにかく生姜の芳香がたまらなくよい。大きく具材もたくさん入っているので、十分に美味しさを堪能できる。

いわしつみれの特筆すべきはその食感。とてもフワフワで、噛むとイワシのうまみがおでん汁と混じり合う。つみれを手作りするおでん種やさんは多いが、それぞれ個性があって面白い。

東京都世田谷区 尾山台北口商店街 尾山台いちば:武田総菜店(武田商店)のおでん種

たまねぎちぎりは、他のおでん種が単品で売られているなか、3個270円のセット販売だ。小さなサイズでもないのに不思議に思っていたが、食べてみて納得した。噛むと玉ねぎの甘みがジュワッと広がって、癖になる美味しさなのだ。確かにこれは1つではもの足りない。すぐにもう1つ食べたくなってしまう。

武田惣菜店のおでん種はひとつひとつの完成度が高く、非常に満足度が高かった。おでん種としてだけではなく、お惣菜としてそのまま食べても美味しいものばかりだった。

店主は一見頑固な職人気質の方かと思ったが、話しかけると気さくに応じてくれた。幼少期からずっと尾山台で過ごし、尾山台いちばで営業を続けているそうだ。擂潰機(らいかいき、魚のすり身をすり合わせる機械)が故障したら店を閉じるおでん種やも多く、世田谷区も武田惣菜店とや亀やの2店舗しか残っていないそうだ(松陰神社前のおがわ屋は2019年4月閉業)。そのように語る店主の表情は少し寂しげではあったが、非常にはつらつとしていて、なんだかこちらも勇気が湧いてきた。店主の隣で黙々とお仕事をしているおかみさんとの息もぴったり合っていて、とても素敵なおでん種やさんだと思った。

武田惣菜店の基本情報

武田惣菜店(武田商店)
〒158-0082 東京都世田谷区等々力4-1-1 尾山台いちば内
03-3702-4642
定休日:日曜
営業時間:10:00~19:00、12:00〜18:00
武田惣菜店のウェブサイト(尾山台北口商店街のウェブサイト)

Scroll to top