目黒食品のお持ち帰りおでん

大田区の雑色駅にある目黒食品は、できたておでんを販売するお店として地元民に愛されている。今回は目黒食品のおでんを紹介する。

東京都大田区西六郷:目黒食品のおでん

目黒食品は商店街から少し離れているが、味がよくて低価格、雰囲気も抜群のお店なので、雑色駅付近に立ち寄ることがあればぜひ訪問してみてほしい。

大田区最大の賑わいを誇る雑色商店街

京浜電鉄本線の雑色駅は、大規模な商店街がありショッピングの街として有名だ。雑色商店街は昭和23年(1948年)に生まれ、大田区で最大の会員加盟数を誇る商店街となった。

東京都大田区仲六郷:雑色商店街

改札を出るとすぐ目の前に商店街が広がり、左側(西側)に向かうと400メートル先まで商店街が続く。目の前にはオーケーストアがあるが、平成28年(2016年)までは雑色駅に本社があったそうだ。

東京都大田区仲六郷:雑色商店街

商店街を歩いてみると昭和の香りを色濃く残すお店が多く、見ているだけでも面白い。焼き鳥などのお惣菜も充実していて、通り過ぎるまでにお財布が空になってしまわないように注意が必要だ。

東京都大田区仲六郷:雑色商店街

お肉屋さんのこの懐かしい雰囲気も、時代が進むにつれて消えてしまうことだろう。グリコのマークがあるのは、かつて雑色駅周辺に江崎グリコの工場があったのと関係しているのだろうか。昔はあらゆる商店街にこういったお店が並んでいた。現在はおしゃれなお店が増えたが、どことなく味気ない気がする。

東京都大田区仲六郷:雑色商店街

アーケードがなくなっても商店街は続く。新旧入り混じったお店が並び、いつまでいても飽きることがない。人通りも多く、非常に活気のある商店街だ。

東京都大田区仲六郷:雑色踏切

今回の目的地である目黒食品へは雑色商店街を西へ進み、JR東海道線と京浜東北線、上野東京ラインが走る雑色踏切を越えていく。なかなか大きな踏切なので、広大な線路の風景を眺めてみるのも面白いだろう。

六郷地域のソウルフード、目黒食品のおでん

踏切を越えるとすぐに、目黒食品にたどり着く。西六郷小学校の目の前にあり、長年小学生たちに愛されてきた駄菓子屋のような存在だ。

東京都大田区西六郷:目黒食品

子どものころから目黒食品のおでんで育ち、大人になっても通う人も多いのだという。地元に根付き、地元に愛される六郷地域のソウルフードだ。

営業開始の12時過ぎに訪れると、すでにおでん鍋はおでん種で埋め尽くされていて、準備万端だった。鍋の脇にあるメニュー表を見ながら、ひとつひとつオーダーしていくと、店主の目黒静恵さんは驚異的な暗算能力を駆使して合計金額を導き出していく。

東京都大田区西六郷:目黒食品

目黒食品は先代のご両親が屋台でおでんを販売をしていたが、昭和60年代に現在の地に店舗を構えて40年以上営業を続けているという。メニュー表の価格を確認すると、その当時の値段と思える圧倒的な安さで驚く。低価格であればおでん種が小さくなるものだが、むしろほかのお店に比べて大ぶりなものばかり。

東京都大田区西六郷:目黒食品

左側の低価格のおでん種は、100円以下という安さだ。トレー皿はその場で食べるためのもの。種のほとんどがひらがな表記なのは、おそらく小学生でも読めるように配慮してのことだろう。

東京都大田区西六郷:目黒食品

店主は「地元に固定的なお客さんがたくさんいて、支えられている」と語り、微笑んでいた。筆者が訪れたときも地元のお客さんがふらりと現れ、メニューを見ずにオーダーしていた。

目黒食品のおでんを味わう

目黒食品では9種類のおでん種を購入した。これだけあって、合計670円という破格の安さ。

東京都大田区西六郷:目黒食品のおでん

時計回りに12時から、だいこん、もちきんちゃく、ちくわぶ、ごぼう巻、こんぶ、さつまあげ、こんにゃく(中央左上)、はんぺん(中央左下)、しらたき(中央)。

東京都大田区西六郷:目黒食品のおでん

お持ち帰りにするとビニール袋に入れてくれ、さらにビニールの手提げ袋に入れてくれる。ゴムでしっかり縛ってあるので汁がこぼれることはない。

東京都大田区西六郷:目黒食品のおでん 練りからしと味噌

おでん種を購入すると、練りからしや味噌をつけてくれる。細やかな気遣いがあって、地元の人々に愛されている理由がよくわかる。味噌は田楽味噌で甘辛く、汁の染みたおでん種によく合う。

東京都大田区西六郷:目黒食品のおでん

軽く弱火であたためれば、すぐに食べることができる。しらたきのしみしみ具合を見ていただきたい。すべてのおでん種が昆布と鰹出汁で、ふっくらとやさしい味わいとなっている。

東京都大田区西六郷:目黒食品のおでん

値段がほかのお店よりも割安ながら、大きさは倍くらいのものもある。大根や揚げ蒲鉾も大きいが、とりわけ白滝が尋常じゃないくらいにボリュームがある。おそらくは成人男性の拳くらいある手巻き白滝と同等かもしれない。口に含むとたくさんのおでん汁があふれ出て、溺れそうなくらいのうまみが押し寄せる。目黒食品でいちばんのおでん種かもしれない。

揚げ蒲鉾は市場(大田市場)から仕入れてくるという。以前は周辺にもたくさんのおでん種やさんがあったが、現在はほとんど閉業してしまったという。東京おでんだねの調査では、大田区は大森駅近くの山王かまぼこ店の1軒を残すのみとなっている。

東京都大田区西六郷:目黒食品のおでん

結び昆布も恐ろしく大きい。大根もいちばん太い箇所のものを使っているようだ。おでん汁がしっかり染み込んでおり、身体も心もあたたまる。こんにゃくもしっかり味が染みている。餅巾着はお餅がとろりと溶け出して、汁と混ざり合って優しい味となっている。

おでん汁は昆布の甘味がまろやかに広がり、鰹のうまみが後を追ってくる。刺々しさがなく、非常に優しい雰囲気をまとっている。こんなに美味しいおでんを低価格で味わえるのはなんとも贅沢だ。

東京都大田区西六郷:目黒食品

おでん種専門店を除いて、最近は手軽に食べられるお持ち帰り用のおでん屋は数えるほどしかない。老舗店や高級店のおでんも格別だが、おでんはやはり庶民の食べ物であってほしい。長い間ひとりで味を守り続ける目黒食品の店主の苦労は計り知れないが、これからも地元の心を形づくるソウルフードを提供し続けてほしい。

目黒食品の基本情報

目黒食品
〒144-0056 東京都大田区西六郷1-50-17
03-3731-9065
定休日:月曜(祭日時は営業)
営業時間:12:00~19:00

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