今回は、おでんの玉子・半熟玉子の作り方を紹介しよう。おでん種の中でも人気ランキングの上位に入る玉子は固茹でが定番だが、最近は半熟のものも人気だ。「おでんと一緒に煮込んだら固茹でにしかならない」と思いがちだが、ちょっとした工夫で半熟のものを楽しめる。
用意するもの
おでんの玉子といっても要はゆで卵なので、用意するものはシンプルだ。しかし、きちんと綺麗なゆで卵を作りたい場合は、下記のものを揃えておくと安心だ。なお、おでんに使う半熟玉子を確実に作るためには、それなりに準備が必要になる。
- 卵(鶏卵)
- 水(茹で用)
- 氷水(ゆで卵の冷まし用)
- 鍋
- おたま(玉子の投入用)
- 菜箸(玉子の回転用)
- キッチンタイマー(正確な茹で時間を計る)
- ボウル(ゆで卵の冷まし用)
- 穴あけ器(安全ピンで代用可)
半熟玉子用
- おでん汁
- フリーザーバッグ(蓋つき容器で代用可)
- キッチンペーパー(少ないおでん汁でも染み込ませやすくする)
ゆで卵の下ごしらえ
卵を茹でる前にいくつか下ごしらえをしておこう。面倒な場合はこのステップをとばしてもかまわないが、慣れていない人はやっておくと失敗が少ないと思う。
ゆで卵を作るときに、もっとも気をつけたいのが温度差だ。卵の殻は、お湯に入れる際の急激な温度変化によって割れてしまうことがある。このため、下記の2点の手順をふんでおく。
- 冷蔵庫から取り出したら、しばらく放置して常温に戻す
- 水の状態から卵を茹ではじめる
実際には、おたまなどを使ってやさしく投入してあげれば、沸騰したお湯に入れても割れることは少ない。今回は茹で時間をきっちり計るために沸騰状態で投入したが問題なかった。ちなみに多少ヒビが入っても、中身がこぼれることはあまりない。
また、殻を剥きやすくするために、卵の丸いほう(尖っていないほう)に小さな穴を開けておく工夫がある。安全ピンなど尖ったもので開けることができるが、専用の穴あけ器が100円ショップで簡単に手に入る。穴を開けることにより、実際に剥きやすくなったかどうかは… まあ、感覚的には失敗はなくなったように思う。また、産みたてのものは炭酸ガスが抜け切っていないため剥きづらいので、産卵日から1週間ほど置くといい。
茹でるときはキッチンタイマーで時間を計る
卵の下ごしらえが済んだら、いよいよ茹でる手順に移る。
鍋にふきこぼれない程度に水を張り、沸騰するまでぐらぐらお湯をわかす。水の状態から卵を入れてもよいが、沸騰してからでもかまわない。その際は前述のとおり、おたまなどで卵をゆっくり沈める。
黄身が片寄らないように、菜箸でくるくるとやさしく回転してあげよう。しばらくすると固まるので、水から投入した場合は沸騰するまで、沸騰した状態で投入した場合は最初の1分程度回転させる。
なお、上の写真では雪平鍋を使っているが、卵はアルカリ性なので雪平鍋が黒ずみやすい。琺瑯などアルミ以外の鍋を使ったほうが無難だが、黒ずんでしまったら水にクエン酸を加えてしばらく沸騰させると綺麗になる。お米のとぎ汁で酸化被膜を作り直すことも忘れずに。
ここで気をつける点は、時間をきちんと計ること。固茹での場合ならざっくり10分〜12分程度と考えればいいが、半熟の場合は1分単位で黄身の状態が変化する。必ず、キッチンタイマーを使うようにしよう。
今回は沸騰したお湯の状態から、3つの卵を6分、8分、10分で茹で分けることにした。
完成したゆで卵を半分に切ってみる。左から、6分、8分、10分のもの。6分のものは完全に半熟で、切ると黄身がとろりと溢れてくる。8分のものは半熟ながらもほどよく固まっていて扱いやすい。10分はそろそろ固茹でになろうというところか。好みに合わせて作り分けたい。
失敗しない卵の殻剥き
さて、これからは茹で上がった卵の殻剥きについて解説していこう。
卵が茹で上がったら、水を張ったボウルに入れて冷ます。このとき、あらかじめ冷たい氷水を用意しておくといいだろう。熱湯と氷水の温度差で卵が収縮するが、中身と殻に収縮差があるため、卵殻膜(殻の内側の白く薄い膜)と本体の間に隙間ができ、剥きやすくなる。
冷ます時間は環境にもよるが、だいたい10分もすれば問題ない。
さらにポイントとして、流水にさらしながら殻を剥くと綺麗に仕上げることができる。剥き方は殻の破片ひとつひとつを剥いでいくよりも、ある程度のかたまりでぽろっと外していくことを心がけると、指や爪で傷つけることが少ない。殻よりも卵殻膜を剝くイメージだ。なお、茹で時間が短いと白身部分が柔らかいので、傷つけないように慎重におこなう。
ここまでがゆで卵の基本的な作り方だが、もう一歩進めておでんに使う半熟玉子を作ってみたいと思う。
おでんに使う半熟玉子の作り方
固茹でのゆで卵の場合、すぐにおでん鍋に投入してもかまわないが、半熟の場合はすこし工夫が必要だ。といっても、おでんが完成してから投入すればよいだけだ。
卵の黄身は65〜70℃前後で固まるらしい(卵が固まる温度について:青山学院大学教授 福岡伸一)。おでんの適温は80℃前後なので長く入れたままだと黄身が固まってしまうが、しばらくは半熟の状態をキープする。
しかし、直前に入れたら味の染みた玉子はできない。この場合には、煮卵(味玉)を作る要領で下ごしらえしておけば対処できる。
作り方はとっても簡単だ。おでんの汁とともにゆで卵をフリーザーバッグや容器に入れて、冷蔵庫で1日ほど寝かせておけばOK。味が染みこみにくいと感じる場合は、冷蔵庫に入れる前におでん汁と卵を温めて、火を止めたらしばらく放置しておくとよい。ただし、固まらない温度で調理することが大事だ。
色付けとして、おでんの汁に蕎麦つゆなどを加えて濃いめの色にしてもいい。写真はおでん汁に浸したキッチンペーパーで卵を包みこみ、少ない汁でも味が均一になるようにしている。
そして、できた玉子がこれだ。玉子の表面が茶色くなり、ほんのり味が染みているのがわかる。おでんに入れないで、そのまま食べてももちろん美味しい。
ゆで卵の調理はそんなに難しくはないが、実はいろいろ奥が深かったりする。茹で具合のこだわりも人それぞれなので、一緒におでんを食べる人たちを喜ばせるために少し研究してみてはいかがだろうか。ちなみに東京おでんだねの筆者は、固茹でが好きだったりする。