生麩・湯葉・こんにゃく専門の大原本店

台東区台東2丁目にある大原本店は生麩やこんにゃくなどを製造している会社だ。東京の生麩として親しまれていたつと麩をはじめ、おでんに最適なちくわぶや白滝などの食材を幅広く取り揃えている。

東京都台東区台東:大原本店

東京でちくわぶを製造する企業や専門店は減りつつあるが、つと麩もあと数軒を残すのみだという。大原本店はつと麩の製造販売をしており、本社のある台東2丁目と豊洲市場(東京都中央卸売市場)では直売を行っている。今回は東京おでんだねの筆者がアクセスしやすい本社を訪問することにした。

日本で2番目に古いといわれている商店街、佐竹商店街

都営大江戸線の新御徒町駅のすぐそばにあり、古きよき昭和の香りを残す佐竹商店街。日本で2番目に古いといわれている商店街で、明治17年(1884年)から存在するという。

東京都台東区台東3丁目:佐竹商店街

スナック喫茶や洋菓子店、精肉店や洋品店など、ノスタルジックな雰囲気漂うお店がいくつも営業している。テレビドラマや映画、CMのロケ地としても有名だ。

東京都台東区台東:ゼイタク煎餅(重盛永信堂)

佐竹商店街のなかで筆者のお気に入りは重盛永信堂だ。本社は日本橋人形町にあり、ゼイタク煎餅という甘味煎餅が有名だ。佐竹商店街の分店は、創業者の身内の方が経営しているそうだ。

東京都台東区台東:ゼイタク煎餅(重盛永信堂)

ゼイタク煎餅にはさまざまな種類があり、それぞれ個性があって面白い。また、本社が人形町だけあって人形焼も有名だ。お中元やお歳暮に贈ると喜ばれるに違いない。

東京都台東区台東:ゼイタク煎餅(重盛永信堂)

筆者はビンズ煎餅という油で揚げた天豆(そら豆)が入ったものをよく購入する。塩気と煎餅の甘味がほどよく混じり合い、ついつい食べすぎてしまう。

宮内庁御用の老舗、大原本店

大原本店は佐竹商店街を南に抜けた近くにある。「麩」の文字が染め抜かれた暖簾が目印だが、街並みに溶け込んでいるので見逃さないように注意が必要だ。

東京都台東区台東:大原本店

店先にはおすすめの商品などが写真付きで紹介されているので、チェックしておくといいだろう。日曜と水曜、祝日が定休日となるが、1ヶ月分の営業カレンダーを記した紙が手に入るので、立ち寄った際にもらっておくと安心だ。

東京都台東区台東:大原本店

お店に入ると倉庫や工場(こうば)、事務室などがあり、雰囲気は会社そのもの。入り口付近が小売スペースとなるが、こじんまりとした面積に反して商品の種類の多さに脱帽する。

東京都台東区台東:大原本店(価格表)

ショーケースの向かいにある価格表に載っているだけでも75種類以上。料理店や旅館などに卸しているからなのだろうが、生麩や焼麩、湯葉、こんにゃく、白滝でこれだけの種類があるなんて驚きである。

東京都台東区台東:大原本店

大原本店は大正元年(1912年)に個人営業店として創業し、昭和28年(1953年)に株式会社となり現在に至る東京の老舗だ。レジ袋には「宮内庁御用」と記されており、店内には皇居新宮殿の落成披露式典で賜饌料理の調製に参加した際の賞状が飾られている。

東京都台東区台東:大原本店

ショーケース内にはわかりやすいように商品サンプルが置かれている。さまざまな具材を混ぜ込んだ生麩、梅や紅葉(もみじ)、銀杏(いちょう)など季節の自然をかたどった棒麩を眺めているだけで楽しくなってくる。

東京都台東区台東:大原本店

ショーケースの上や奥側の棚にもさまざまな商品が陳列されている。また、セール品もあるので注目してみよう。店員の方はデスクワークをしているので、質問がある場合は声をかけよう。なお、大原本店はオンライン通販も行っているので、遠方の方は利用してみるといいだろう。

つと麩やちくわぶなど、おでんに適した大原本店の商品たち

興味深い商品がたくさん並んでいたので迷ってしまったが、つと麩やちくわぶを中心におでん種として味わえるものを購入した。

東京都台東区台東:大原本店のおでん種

お麩というとお吸い物や精進料理専門の食材のように思うが、おでんとの相性もかなりよい。おでんに加えると、いつもより上品な雰囲気が漂うのは気のせいだろうか。

東京都台東区台東:大原本店のビニール袋

先述の「宮内庁御用」と記されているレジ袋が上の写真だ。ネット販売に「大原本店 楽天」とあるが、どうやら自社通販サイトのオープンを機に退店したようだ。

東京都台東区台東:大原本店の白つと麩

まずは注目のつと麩から紹介していこう。つと麩は東京の生麩として江戸時代から親しまれており、日本橋弁松や令和2年(2020年)に閉業した木挽町辨松の折詰弁当に入っていた甘煮が有名だ。つと麩の「つと」は「苞」と書き、これは「包む」と同語源になる。ちくわぶ料理研究家の丸山晶代さんの著書「ちくわぶの世界」によると、ちくわぶ発祥の候補のひとつだといわれている。大原本店では上写真の白つと麩だけでなく、青(緑)や赤色のものも揃えている。

東京都台東区台東:大原本店の白つと麩

とろりとした食感が魅力で、甘辛く煮るととても美味しい。現在では東京でも京生麩が主流になりつつあるが、大原本店のほかに築地の角山本店も製造している。

東京都台東区台東:大原本店のつと麩(調理)

つと麩は発酵したグルテンを使用しているので、匂いを消すために下茹でしてから使う。冷凍してある場合は水に浸けて柔らかくしてから包丁で適当な長さに切り、沸騰したお湯で下茹でするといい。鍋の底に沈んだつと麩が浮かんだら完了のサインだ。

東京都台東区台東:大原本店の白つと麩

筆者の味の印象は「とろりと柔らかいちくわぶ」だ。煮加減にもよるが、食感はとろとろなのに味は染みすぎておらず、フレッシュな味わいを楽しめる。味を染み込ませたい場合は、煮る前に油で素揚げにするといい。ちくわぶファンにもおすすめしたい美味しさだ。

東京都台東区台東:大原本店のちくわぶ

ちくわぶは包装していない生のもの(通称ハダカ)を選んだが、真空パックのものも販売している。製造は工場に委託しているが、昔からの付き合いがあり「大原本店のものと言っても差し支えない」という。ちなみにちくわぶの角の数は8つあった。

東京都台東区台東:大原本店のちくわぶ

下茹でを行ったが、生ちくわぶのためさっと煮るだけでじゅうぶん柔らかいと思う。それでいて、長く煮ても型崩れを起こしにくい。つと麩の柔らかさも魅力だが、ちくわぶのお腹にたまる満足感も捨てがたい。

東京都台東区台東:大原本店のちくわぶ

こちらは後日購入した真空パックのちくわぶだ。真紅の三つ鱗が格好よい。生のものに比べて保存期間が長いので、こちらを選択するのも有りだ。

東京都台東区台東:大原本店の黒こんにゃく

こんにゃくはさまざまな種類があり、黒色のほかに白色、辛子入りの赤色、海苔入りの緑色のものがある。また、玉こんにゃくやねじりこんにゃくなど形状が異なるものも揃っている。珍しいところでは、近江八幡の特産物である「二保こんにゃく」(滋賀県近江八幡市のオサ平商店)もある。

東京都台東区台東:大原本店の黒こんにゃく

大原本店のこんにゃくは老舗のおでん屋も認める品質と味で、日本橋の「お多幸本店」(中央区日本橋2-2-3)や「新橋お多幸」(港区新橋3-7-9)でも使用されているそうだ。

東京都台東区台東:大原本店の黒こんにゃく

食感はぷりんと弾力がありながら柔らかく、隠し包丁をすればおでん汁がよく馴染む。ほのかに漂うこんにゃく芋の風味もちょうどよい塩梅だ。

東京都台東区台東:大原本店の1個詰白滝

白滝も有名店に多く採用されている。とりわけ、浅草雷門にある近江和牛の老舗「松喜」(台東区雷門2-17-8)で販売している白滝として有名なようだ。

東京都台東区台東:大原本店の1個詰白滝

大原本店にはひと口サイズの結び白滝も生産しているが、購入したのは「1個詰白滝」と呼ばれる手巻き白滝だ。手巻き白滝は男性の握りこぶしより少し大きいくらいに巻かれており、輪ゴムか結草(いわいそ)とよばれる紐で縛ってある。1本の長さが非常に長いので、自分で結ぶ際には重宝する。詳しくは「おでんの白滝の結び方・巻き方」をご覧いただきたい。

東京都台東区台東:大原本店の白滝

太さはほどよく、弾力のある噛み心地とおでん汁の抱き込みの両立を実現している。すき焼きにも入れてみたが、甘辛い割り下にも非常によく合った。

東京都台東区台東:大原本店の車麩(3回巻/15切)

新潟県などの北陸地方が発祥といわれる車麩(新潟県三条市のマルヨネ)もある。大原本店ではこのほかに、渦巻き模様のある観世麩や庄内地方の特産品である板状をした庄内麩、近江八幡の丁字麩など、全国各地のさまざまな焼き麩を揃えている。

東京都台東区台東:大原本店の車麩(3回巻/15切)

調理前は比較的コンパクトなサイズだが、煮ることによってひとまわり膨らむ。戻してから使ってもいいが、そのまま煮たほうが味がよく染み込む。

東京都台東区台東:大原本店の車麩(3回巻/15切)

車麩のおでん種といえば金沢おでんが有名だ。汁をたっぷりと吸い込んでふわふわになるが、箸で掴んでも意外に崩れることはない。ジューシーかつ焼き麩独特の香ばしさも加わって非常に美味しい。

東京都台東区台東:大原本店の梅麩(天着/小)

大原本店は彩り美しい棒麩もたくさん揃えている。今回購入したのは梅の花の形をした梅麩で、このほかに桜やあやめ、ナス、紅葉や銀杏、柿などがある。季節によって使い分けたいところだ。

東京都台東区台東:大原本店の梅麩(天着/小)

棒麩は輪切りにすることによって美しい造形が姿を現す。冷凍のものは水に浸ければすぐに柔らかくなる。

東京都台東区台東:大原本店の梅麩(天着/小)

おでんに入れる場合は汁の色が移らないように直前に入れるか、色の薄い汁を使用しよう。見た目の印象そのままの上品な味で、つと麩とはすこし趣が異なる。

東京都台東区台東:大原本店の細工麩セット

熟練職人の手によって生み出された細工麩は見ているだけで豊かな気持ちになってくる。基本は1種類6個単位で販売しているが、直売店では6種類セットも販売している。椀種やお吸い物に使用するが、工夫次第でおでんに活用してもいいだろう。

東京都台東区台東:大原本店

つと麩は東京発祥でありながら地元で生産するのは数軒に留まり、東京出身の方でも大半はその存在を知らない。大原本店には末長く江戸の伝統の味を守り続けてもらいたいと思う。

大原本店の基本情報

大原本店
〒110-0016 東京都台東区台東2-22-2
03-3836-1261
定休日:水曜、日曜、祝日
営業時間:6:00~16:00(自粛期間中は7:00~15:00)
大原本店のWebサイト
大原本店の通販サイト

大原本店(東京都中央卸売市場 豊洲市場店)
〒135-0061 東京都江東区豊洲6-5 水産仲卸売場棟4F
2店舗あり、中央通り店がプロ向け、二号店が一般向け
03-6633-0098
定休日:市場に順ずる
営業時間:5:00~12:00(現在は10:00まで)

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