おでんの海老(エビ)の考察と調理方法

今回はおでんの海老(エビ)の考察と調理方法の紹介をする。通常、海老は揚げ蒲鉾の具材として用いられるが、そのまま煮たおでん種も存在する。

おでんの海老(エビ)の考察と調理法

東京おでんだねではこれまで東京すべてのおでん種専門店を訪問したが、揚げ蒲鉾などに加工していない海老は見たことがなかった。一部の家庭や居酒屋のおでんなどでは親しまれているようだが、すくなくとも東京では一般的なおでん種として認知されていない。しかし、東京のおでん屋台に海老のおでん種が存在していたと思われる手がかりが見つかった。

「ど根性ガエル」に登場した海老のおでん種

その手がかりとは昭和40年後半に人気を博した漫画「ど根性ガエル」だ。主人公ひろしと平面カエルのピョン吉が繰り広げるドタバタコメディで、アニメ化もされている。

海老のおでん種は原作11巻「火事おでんの巻」、アニメ版(1972年度版)では60話(120話)の「火事は見たいしおでんは食いたしの巻」に登場する。

アニメ「ど根性ガエル」60話(120話)「火事は見たいしおでんは食いたしの巻」より ©︎吉沢やすみ/オフィス安井・TMS
アニメ「ど根性ガエル」60話(120話)「火事は見たいしおでんは食いたしの巻」より ©︎吉沢やすみ/オフィス安井・TMS

ひろしとピョン吉がおでん屋台に訪れ、いくつかのおでん種と一緒に「エビ」をオーダーすると、アニメ版では有頭海老が明確に描画されていた。

原作では「エビ」の台詞はあるものの海老自体は明確に描かれていなかった(剥き身の海老らしきものは見える)が、その後の台詞で「そこの一番おっきいの」とリクエストしている。

もしも「エビ」が揚げ蒲鉾の「海老巻」や「海老天」を省略した台詞なら有頭海老の描写はアニメ制作者の勘違いになるが、海老巻や海老天はほとんど同じ大きさなのに対して、通常の海老は個体ごとに大きさの違いがある。このことから、揚げ蒲鉾ではないのだと確信できた。さらに、原作13巻、アニメ版55話(110話)「お酒はこわいの巻」にも「エビちゃん」という台詞が登場し、原作では剥き身の海老らしきものが描画されていた。

おでんの海老(エビ)の調理法:おでんの海老の完成(串)

「火事おでんの巻」が掲載されている原作11巻と「お酒はこわいの巻」掲載の原作13巻は昭和48年(1973年)発売、舞台は原作者の吉沢やすみ先生の自宅がある練馬区石神井だ。空想で描いていないのであれば、昭和40年代の東京のおでん屋台で海老が提供されていたことになる。
また、先生のご出身は山梨県山梨市だが、筆者は山梨や中部地方周辺のご当地おでんで海老のおでん種の存在を知らない(東京も然りだが)。ほかに有力な手がかりが見つかっていないので非常に根拠に乏しいが、もしも本当に提供されていたら新発見だ。

ちなみに、海老以外に登場したおでん種は、昆布、はんぺん、餃子巻、じゃがいも、ちくわ、タコ、こんにゃく、ごぼう巻となり、アニメ版では里芋、玉子、ごぼう煮、がんもどきが加わる。また、1981年版のアニメ(新・ど根性ガエル)9話(17話)では、ちくわぶも登場する。

海老が入った揚げ蒲鉾のおでん種

前述のとおり、東京のおでん種専門店には海老のみのおでん種は揃えていないが、海老が入った揚げ蒲鉾は存在する。それらをすこし見てみよう。

増田屋蒲鉾店(葛飾区 鎌倉) おでん種:エビ巻き

最も有名なのが「海老巻」だ。ボイルしたむき身の海老を魚のすり身で包んで揚げたもので、多くのおでん種専門店で製造されている。

東京都葛飾区鎌倉 千代田通商店街:増田屋蒲鉾店のおでん種 えび巻き

ぷりぷりの海老と弾力のある魚のすり身が見事に融合しており、揚げ蒲鉾の王様と言っても過言ではない美味しさだ。ほかのおでん種よりも値段が高めだが、それを補って余りある魅力を兼ね備えている。

神茂(中央区日本橋)のおでん種:海老しんじょ
神茂(中央区日本橋)の海老しんじょ

「海老真丈(しんじょ)」はすりつぶした海老を山芋や魚のすり身に混ぜたもので、ふんわりとした上品な舌触りが特徴となっている。東京のおでん種専門店では日本橋の神茂で販売している。

塚田水産のみつば海老(左)、増田屋蒲鉾店(京成小岩)のえび団子(右)
塚田水産のみつば海老(左)、増田屋蒲鉾店(京成小岩)のえび団子(右)

剥き海老を使用したおでん種はほかに、吉祥寺にある塚田水産の「みつば海老」や増田屋蒲鉾店(京成小岩)の「えび団子」などがある。

桜海老を使った東京のおでん種専門店のおでん種

桜海老を使ったおでん種も数多く存在する。江東区北砂にある増英蒲鉾店の「エビボール」のようにひと口サイズの揚げ蒲鉾や、足立区北千住にあるマルイシ増英の「えび天」のように平たいものなどバラエティ豊富だ。

おでんの海老の調理方法

さて、ここからは海老をまるごとそのまま使ったおでん種の調理法を紹介していこうと思う。

おでんの海老(エビ)の考察と調理法

海老は鍋料理の人気食材であるし、おせち料理の主役である海老のうま煮(つや煮)はおでんとほぼ同じ調味料を使う。したがって、おでん種としても美味しく作ることが可能だ。

おでんの海老(エビ)の調理法:クルマエビ(活海老)

海老は煮物に最適なクルマエビを使用する。もちろん、同じクルマエビ科のブラックタイガー(ウシエビ)やバナメイエビでも美味しい。また、刺身で食べることの多い甘エビやボタンエビでも美味しい。どれもおでんにしたらもったいないと思うかもしれないが、なかには伊勢海老を使う料理店も存在する。

おでんの海老(エビ)の調理法:バナメイエビのボイル

今回は有頭海老を使うが、頭の付いていないボイル済みのものを使ってもいい。有頭のものよりも安価で、手軽に試すことができる。ちなみに、上の写真は築地場外市場で手に入れたバナメイエビのボイルで、大ぶりのものが9匹ほどで500円だった。

おでんの海老(エビ)の考察と調理法

作り方は2通りあり、食べる直前におでん鍋に投入する方法と、あらかじめ調理しておく方法だ。前者は非常に簡単なのだが、今回使うのは生きた海老なのですこし調理しづらい。うま煮のように個別に煮ておくことで、あせらず確実に仕上げられる。

おでんの海老(エビ)の調理法:おがくずでクルマエビ(活海老)を保存する

まずは海老の下処理だ。活海老の場合はおがくずに入れたまま、冷暗所で10℃から15℃で保管する。海老は鮮度が命なので、なるべく購入当日に調理するようにしよう。冷凍の場合は冷蔵庫で解凍するか、3%の塩分を加えた塩水に浸けるか、もしくはフリーザーバッグなどに入れて氷水に浸けて解凍する。

調理の直前に海老をざるに乗せて、水をかけておがくずを落としておく。次に、冷水(氷水)を張ったボウルに入れておとなしくさせる。個体差はあるが20〜30分程度で静かになる。

おでんの海老(エビ)の調理法:鋭利な箇所を切断し形を整える

海老が動かなくなったら、長い髭(触覚)や鋭利な先端部分をキッチンバサミで切り取っておく。具体的には頭(頭胸甲の額角)、足(胸脚)、尾(尾節、通称剣先)だ。

おでんの海老(エビ)の調理法:竹串で背ワタを取る

風味や食感を損なう背わたを取り除く。竹串か爪楊枝を背側から節の間の身に差し込み、背わたを引っかける。背わたを指でつまんで、切れないようにゆっくりと引き抜く。

おでんの海老(エビ)の調理法:串打ち場所の参考

串を刺す場合は丸串を用意する。海老は身が崩れやすいため、引き抜きが容易な丸串が向いている。串打ちは頭側から刺す場合と尾側から刺す場合がある。さらに串を背側に沿わせる方法と腹側に沿わせる方法がある。

おでんの海老(エビ)の調理法:第1腹節下部から尾節まで串打ちする

おでんにする場合には、頭が串の後ろ側にくるほうが見栄えがよいので頭胸部から串打ちすることにした。また、有頭なので腹側に沿わせた。刺す場所は頭胸甲と接する第1腹節の下部、そこから尾節まで一気に串を通していく。たいして難しくないので落ち着いて作業しよう。

おでんの海老(エビ)の調理法:頭胸甲と第1腹節の間から第5・6腹節の間まで爪楊枝を刺す

丸く「つ」の字にさせたい場合は頭胸甲と第1腹節の間から爪楊枝を刺し、第5・第6腹節の間まで通しておく。このとき、勢い余って貫通させないように注意しよう。

おでんの海老(エビ)の調理法::おでん汁(煮汁)を用意する

次はいよいよ海老を煮る。海老の煮汁は牛すじタコなどに比べておでんの風味や色に影響しないため、別鍋で調理しなくても大丈夫だ。鍋におでん汁の素と水を入れ、火にかけて煮立たせる。もちろん、おでん汁の素ではなく白だしでも構わないし、出汁や醤油、みりんなどで自作してもいい。海老の発色をよくしたい場合は、醤油などの色の濃い調味料を少なめにしておくといい。

おでんの海老(エビ)の調理法:おでん汁で3分ほど煮る

おでん汁が煮立ったら弱火にし、海老を入れて3分ほど煮る。汁がたっぷり入っている場合は、海老が表面に浮いたら煮上がりのサインだ。

おでんの海老(エビ)の調理法:おでん汁ごと冷水(氷水)で冷却する

火を止めたら海老と煮汁(おでん汁)の一部をボウルに移し、冷水(氷水)にさらしておく。海老は余熱でも火が通ってしまうので、やわらかく仕上げるならこのひと手間は重要だ。これとは別に、海老に不要な熱を入れないために煮汁と別にして冷ます方法もある。

冷めたら海老はおでん汁と一緒に耐熱容器などに移しておき、食べる直前に合流させる。「つ」の字の海老の場合は、手で触れられる程度まで冷めたら爪楊枝を引き抜いておこう。

鍋に残した煮汁はふたたび火にかけ、ほかのおでん種を調理する。おでんの調理方法は「東京おでんの調理方法」を参考にしてもらいたい。

おでんの海老(エビ)の調理法:おでんの海老の完成

これで海老の調理は完了だ。煮汁につけておき、食べる直前でおでん鍋に投入する。煮過ぎると固くなってしまうので、温まったら美味しくいただこう。ご覧のようにクルマエビは上品な桜色に仕上がるが、より強い発色を求めるならブラックタイガー(ウシエビ)がおすすめだ。

おでんの海老(エビ)の調理法:おでんの海老の完成(串)

串に刺した海老も綺麗に仕上がった。おでん鍋に入れる場合は、頭を上にすると見栄えがよくなる。海老の頭や殻などは、軽く水で洗ってから煮出すと出汁が取れる。捨てないで再利用するといいだろう。

おでんの海老(エビ)の調理法:完成後の断面

新鮮なクルマエビを使用し、熱の入れ方も丁寧にしたおかげで味や食感も最高の仕上がりになった。大根やちくわぶのようにおでん汁が身に染み込んでいなくても、海老そのものの旨味が口のなかに広がる。

おでんの海老(エビ)の調理法:バナメイエビを使用したおでん

海老はおでんと相性がいいので、高価なものを使用しなくてもじゅうぶん美味しい。前述のボイルのバナメイエビはおでん汁と一緒に温めるだけのお手軽調理にしたが、非常に美味だった。どの海老を使うにしても、長く煮ないことが美味しく味わうポイントとなる。

おでんの海老(エビ)の考察と調理法

はたして東京のおでん屋台で本当に海老が提供されていたのか、今回の浅い考察だけでは判然としない。今後は資料をあたるだけでなく、おでん種専門店の店主たちにも聞き込みをしていきたいと思う。それはさておき、おでん種としての海老は非常に美味しいので、興味のある方はこの記事を参考に調理してもらいたい。

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