田川商店のお持ち帰りおでん

荒川区のジョイフル三ノ輪近くにある田川商店は、おでんと牛もつ煮込みが有名なお持ち帰り専門店だ。地元民はもちろん、遠方からのファンも足を運ぶ人気店だ。

東京都荒川区南千住:田川商店のお持ち帰りおでん

東京おでんだねは「おでん種やさんでおでんを買って、家で調理して食べる」文化を盛り上げるためにおでん種専門店を紹介しているのだが、調理済みのおでんを提供する素晴らしいお店もたくさんある。田川商店もそのひとつなので、ぜひ紹介しておきたい。

ジョイフル三ノ輪の先にある田川商店

都電荒川線(東京さくらトラム)の終点、三ノ輪橋停留所のすぐ隣にあるジョイフル三ノ輪。昭和の古きよき雰囲気を残すこの商店街の歴史は古く、大正8年(1919年)から続くので100年を超えたことになる。

東京都荒川区南千住:都電荒川線 三ノ輪橋停留所

大手チェーンのお店は数えるほどしかなく、ほとんどの店舗が昔から続く個人経営のようだ。食料品の品揃えが豊富でお惣菜も多い。テレビでもよく取り上げられる東京の名物商店街だが、観光客はそれほど見かけない。昼間にのんびり食べ歩きをしても楽しいし、日が暮れたら「弁慶」(荒川区南千住1-15-16)など本場の下町酒場に繰り出しても楽しい。

東京都荒川区南千住:ジョイフル三ノ輪

ジョイフル三ノ輪にはかつて神崎屋(閉業、東京都荒川区南千住1-21-2)や北千住のマルイシ増英の支店など、おでん種専門店が存在した。数は減ってしまったが、南千住は東京おでんの本場なのである。

東京都荒川区南千住:ジョイフル三ノ輪

ジョイフル三ノ輪をまっすぐ進んでいくと、T字路にぶつかってアーケードが終わる。左に向かえば都電の荒川一中前停留所だが、右に進むと今回の目的地である田川商店へたどりつく。

東京都荒川区南千住:田川商店

田川商店は南千住の地で50年以上営業を続けているおでんと牛もつ煮込みのお持ち帰り専門店だ。当初は味噌を取り扱うお店だったが、次第に現在のスタイルに落ち着いたのだという。テレビ東京の「出没!アド街ック天国」や夕方の情報番組など、テレビを中心に多くのメディアで取材されている人気店だ。

東京都荒川区南千住:田川商店

お店の正面にはおでんと牛もつ煮込みの鍋が並んでいる。対面で注文してお代を渡せば、すぐに商品を渡してくれる。訪れたときは3名ほどお客さんが並んでいた。

東京都荒川区南千住:田川商店

牛もつ煮込みはお玉1杯340円というお値打ち価格で、午後になると売り切れてしまうほどの人気だ。味噌ベースのシンプルな味付けだが、脂身のしっかりしたモツによってクリーミーで濃厚な味わいが楽しめる。調理の関係で時間帯によっては煮込みが浅いときもあるが、自宅で好みの状態に調節することができるので常連客には好評のようだ。

あとでこちらもレビューするが、他店のモツ煮とはひと味もふた味も違う素晴らしいものだ。

東京都荒川区南千住:田川商店

おでんはおでん種をひとつひとつ選ぶことができる。しっかりとおでん汁が染みていて、とても美味しそうだ。おでんも牛もつ煮込みもビニール袋に入れてくれるが、頼めばその場で食べることもできる。

東京都荒川区南千住:田川商店のお持ち帰りおでん

おでん種は変わり種が多い。ウズラが入った野菜天、ベーコンが巻かれた揚げ蒲鉾、どれも東京のおでん種専門店では見ることのないものばかり。揚げ蒲鉾は他店から仕入れているというが(通常、揚げ蒲鉾の製造は職人や専門の機器が必要なのでおでん種専門店やメーカーから仕入れる)、ベーコンが巻かれたものは京都の錦市場にある丸常蒲鉾店の「玉ねぎベーコン天」、もしくは閉業した佃権の「千代田」にそっくりだ。

田川商店のおでん

田川商店では8種類のおでん種を購入した。揚げ蒲鉾はめずらしいものばかりだ。

東京都荒川区南千住:田川商店のお持ち帰りおでん

田川商店はおでん種の名札がないので正式名称は不明だが、時計回りに12時から、いわしつみれ、イカとねぎ、玉子、白滝、ちくわぶ、野菜天、チーズ玉ねぎベーコン天、玉ねぎベーコン天(中央)。

東京都荒川区南千住:田川商店のお持ち帰りおでん

購入するとビニール袋に入れてしっかり縛ってくれ、さらに紙袋に入れてくれる。おでんの場合は練りからしもついてくる。匂いが漏れないので遠方からやってきても安心だ。

東京都荒川区南千住:田川商店の牛もつ煮込み

もちろん、牛もつ煮込みも購入した。とろとろになったモツの雰囲気、写真でうまく伝わっているだろうか。脂身がしっかりしているので、よくあるスカスカの感じがまったくない。

東京都荒川区南千住:田川商店の牛もつ煮込み

味は濃厚でクリーミー。甘ささえ感じるほどに脂身の存在感がすごい。臭みは全くなくそのまま食べても美味しいが、豆腐を一緒に煮込むとバランスがいい。さらに刻んだネギを加えれば清涼感が加わって完璧だ。汁はシンプルな味噌仕立てで、モツの出汁とうまみがしっかりと溶け込んでいる。

東京都荒川区南千住:田川商店のお持ち帰りおでん 野菜天

さて、本題のおでんを食していこう。
野菜天は枝豆や人参など彩り豊かな食材に加え、なんとウズラの玉子が入っている。さまざまな野菜のうまみとウズラのまろやかな味わいが組み合わさり、これひとつですべてのおでん種を味わっているかのような満足感。おでん種のオーケストラと表現してもよい満足感のある一品だ。

東京都荒川区南千住:田川商店のお持ち帰りおでん イカとねぎ

イカとねぎが入ったおでん種は、一般的な大きさの4倍はあろうかという大きさ。ほかのおでん種に比べて低温で揚げているのか浅い色合いだ。魚のすり身の味わいを楽しめながらも、刻まれたイカのうまみがしっかり主張してくる。

東京都荒川区南千住:田川商店のお持ち帰りおでん 玉ねぎベーコン天

玉ねぎを混ぜ込んだふわふわのすり身にベーコンが巻かれた玉ねぎベーコン天はとても大きなサイズ。成人男性の拳くらいのボリュームなのだが、すり身がふわりとしているため意外にぺろりといけそうだ。ベーコンと玉ねぎという間違いのない組み合わせで、子どもも満足するキャッチーな仕上がりだ。

東京都荒川区南千住:田川商店のお持ち帰りおでん チーズ玉ねぎベーコン天

上の玉ねぎベーコンにチーズが加わったチーズ玉ねぎベーコン天は、さらにリッチで満足感のある味を楽しめる。串に刺さっているため食べ歩きにももってこい。中から溶け出すチーズは、説明不要の美味しさだ。

東京都荒川区南千住:田川商店のお持ち帰りおでん いわしつみれ

田川商店は2種類のつみれがあるが、こちらはイワシベースのつみれだ。中に細切りされた生姜が入っており、臭みを消すとともに清涼感を加えている。

東京都荒川区南千住:田川商店のお持ち帰りおでん ちくわぶ

定番のちくわぶはおでん汁がしっかり染みているが、煮込み加減が調整されているのでちくわぶ本来の小麦の味も楽しめる。田川商店のおでん汁は定番の鰹と昆布の合わせ出汁で、透き通ったのどごしが素晴らしい。

東京都荒川区南千住:田川商店のお持ち帰りおでん 玉子

玉子もしっかりと味が染みている。表面が茶色く染まって非常にフォトジェニック。固茹でというのも典型的な東京の下町おでんらしく好感が持てる。

東京都荒川区南千住:田川商店のお持ち帰りおでん 白滝

干瓢で結ばれた白滝はボリュームがあって食べ応えじゅうぶん。白滝が細めなので、しっかりおでん汁を抱き込んでいる。食べるとじゅわっとおでん汁が溢れてくる。

東京都荒川区南千住:田川商店

田川商店のお店の方々はとても人懐っこく親切で、質問にも丁寧に対応していただいた。校内で注意されるまでは荒川第一中学校の生徒が下校時に買いに寄ったり、創業当時から変わらぬ味を求めてやってくる常連客がいたりと、味や人柄で地元の人々に愛されていることがわかる。

東京都荒川区南千住:田川商店

東京は古いものが壊され、塗り替えられ、新たな魅力を生み出しながら発展してきた都市だ。東京おでんだねの筆者も東京出身なので、それは身に染みてよくわかっている。しかし、時を経ることで魅力が増し、掛け替えのない存在になっていくことも忘れてはならない。南千住や三ノ輪はそのような古きよき魅力が詰まった素晴らしい場所だ。田川商店はその魅力を味覚で実感できるので、ぜひ堪能していただきたい。

田川商店の基本情報

田川商店
〒116-0003 東京都荒川区南千住1-41-7
03-3802-4383
定休日:日曜、祝日
営業時間:10:30~19:00

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