こんにゃく専門店の山栄食品

足立区の千住大橋にある山栄食品は、明治6年創業のこんにゃく専門店だ。おでんに欠かせないこんにゃくの他、白滝やちくわぶなどすべてを手作りしているこだわりのお店だ。

東京都足立区千住河原町:山栄食品のおでん

地元客に愛されながらも、テレビで頻繁に取り上げられていることもあり遠方から足を運ぶ人も多い。北千住のマルイシ増英などおでん種専門店でも購入できるが、今回はお店までおもむいて商品を購入してみた。

千住大橋周辺とやっちゃ場

足立区と荒川区を結ぶ千住大橋は文禄3年(1594年)に隅田川に最初に架けられた歴史のある橋だ。完成当初は現在の位置から200メートルほど上流に架けられていたが、天和4年(1684年)に移動したという。日光・奥州街道の初宿となる千住宿があったことでも有名だ。周辺には松尾芭蕉の像などがあり、歴史好きにはおすすめのスポットだ。

足立区千住橋戸町:千住大橋(荒川区側)

千住大橋から北に進んだ先は千住河原町となり、ここはかつて「やっちゃ場」と呼ばれる青物市場が広がっていた。旧日光街道沿いは「やっちゃ場通り」という名称が付けられ、案内板や石碑などが点在している。

東京都足立区千住河原町:やっちゃ場通り

以前の記事「増英の系譜」で紹介したが、川魚や青物、米穀などが集まる市場として賑わい、江戸3大青物市場のひとつとして幕府の御用市場になった。
昭和20年(1945年)には千住河原町の青果市場荷受組合と西新井村本木町の東京北魚市場を収容し、中央卸売市場足立市場となったが、施設が狭くなったことを理由に昭和54年(1979年)に青果部門を移転させ、水産物の専門市場となる足立市場に生まれ変わった(参考:東京都中央卸売市場)。

東京都足立区千住河原町:やっちゃ場通り

千住宿歴史プチテラスの案内板には大正初期のやっちゃ場の写真が紹介されていた。人の往来が激しく、非常に活気があるようにみえる。

明治6年創業のこんにゃく専門店、山栄食品

今回紹介する山栄食品は、やっちゃ場通りの南側にある。明治6年(1873年)創業の老舗のこんにゃくや生寒天を取り扱う専門店だ。

東京都足立区千住河原町:山栄食品

テレビ東京の「出没!アド街ック天国」などテレビでも取り上げられており、千住大橋周辺を代表する有名店だ。直売のほか、北千住のマルイシ増英や千住大橋駅前の地産マルシェなどにも商品を卸している。

東京都足立区千住河原町:山栄食品

現在の店主は5代目となり、昔ながらの製法を守りながら商品を作り続けている。「もうすぐ150年になっちゃうよ」とにこにこと笑う店主。先ほどの大正初期のやっちゃ場の写真よりも前から営業しているのだから、本当にすごいことだ。

東京都足立区千住河原町:山栄食品

お店の扉を開けると無骨な装置が所狭しと並んだ工場(こうば)の風景が飛び込んでくる。格好よくてしばらくじっと観察してしまう。商品はお店の外に並んでいるので、手に取ったら店主に声をかけて会計を済ませよう。求める商品が並んでいなくても、店主に聞けば奥から出してくれる。

東京都足立区千住河原町:山栄食品

こんにゃく以外には、生寒天、結び白滝、ちくわぶを販売している。生寒天は神津島産の天草を使用していて、ところてんとあんみつ用にカットしてくれる。夏場にぜひ利用したい。

東京都足立区千住河原町:山栄食品のこんにゃく

こんにゃくはパッケージ詰めのものもあるが、裸のものも販売してくれる。パッケージ詰めのものはゆがくそうだが、裸のものはそのままなのでとても柔らかいそうだ。

東京都足立区千住河原町:山栄食品のおなべちゃん

結び白滝の正式名称は「おなべちゃん」。ひとつひとつ手で結ぶため適度な具合でほどけにくく、ふんわり汁を抱き込んでくれるという。その手さばきはマルイシ増英の動画でチェックしてほしい。

東京都足立区千住河原町:山栄食品の手巻き白滝

こちらは手巻き白滝。手巻き白滝は男性の握りこぶしより少し大きいくらいに巻かれた白滝で、結草(いわいそ)とよばれる紐で縛ってある(上写真は輪ゴム)。1本の長さが非常に長く(平均150センチ)、自分で結ぶときに扱いやすい。詳しくは「おでんの白滝の結び方・巻き方」の記事を参考にしてほしい。店主にあるかどうか聞いてみたら、「今巻いちゃうから待ってね」と即答してくれた。

東京都足立区千住河原町:山栄食品の生ちくわぶ

山栄食品はちくわぶも製造している。パッケージ詰めされているが、「生ちくわぶ」という商品名のとおりとても柔らかい。ちくわぶ料理研究家の丸山晶代さんの著書「ちくわぶの世界」によれば、通常の商品は一晩水に浸して真空パックしてから再度茹でるそうだが、山栄食品のちくわぶはそれを行わず、水に1〜3日浸すのだそうだ。取り出すと柔らかな感触で、穴からぽたぽたと水分が落ちてくる。

山栄食品の商品でおでんを作る

商品を購入して家に戻ったら、早速おでんづくりに取り掛かろう。

東京都足立区千住河原町:山栄食品のおでん

こんにゃくはきちんと下ごしらえをしよう。詳細は「おでんのこんにゃくの下ごしらえ方法」の記事をご覧いただきたい。手巻き白滝は好みの大きさにして干瓢で結んでから下ゆでし、ちくわぶは柔らかいので下ゆでなしでおでんと一緒に煮込んだ。結び白滝の「おなべちゃん」は下ゆでするだけでOKだ。

東京都足立区千住河原町:山栄食品のおでん

そして、完成したのが上の写真。煮込みと冷ましで1時間もかけていないのだが、どれもしっかりといい色に染まっている。

東京都足立区千住河原町:山栄食品のこんにゃく

こんにゃくはぷるぷると弾力がありながらも極上の柔らかさ。隠し包丁をしなくてもじゅうぶんに味が染みていて美味しい。こんにゃく芋独特の味や香りもふんわりと漂う。これぞ手作りの味である。

東京都足立区千住河原町:山栄食品のおなべちゃん

結び白滝の「おなべちゃん」は太すぎず細すぎずのちょうど良い太さで、プリッとした味わいが楽しめる。結び加減もちょうどよく、白滝の隙間に適度に汁を抱き込んでくれる。

東京都足立区千住河原町:山栄食品の白滝

こちらは手巻き白滝を使って自分で巻いた白滝。かぶりついたときのジュワッとした食感を楽しみたかったので、この形状にしてみた。自分で巻くと楽しみ方が広がるので、ぜひお試しあれ。

東京都足立区千住河原町:山栄食品のちくわぶ

最後はちくわぶだ。下ゆでしなくても柔らかく、長く煮る必要がないので型崩れもせずもっちりとした食感や小麦の風味を楽しめる。断面に浮かんだミルクレープ状の筋がおでん汁をよく吸うので、弾力がありながらも味の染みたちくわぶを楽しめる。

東京都足立区千住河原町:山栄食品

150年の歴史を持ち、手作りの品質にこだわった山栄食品は非常に貴重な存在だ。おでんのほかにもさまざまな料理に利用できるので、ぜひ本物の味を確かめに足を運んでいただきたい。

山栄食品の基本情報

山栄食品
〒120-0037 東京都足立区千住河原町26−3
03-3881-2200
定休日:日曜、祝日
営業時間:7:00~18:00

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