塚田水産のおでん種

塚田水産は東京都武蔵野市吉祥寺本町の吉祥寺ダイヤ街にあるおでん種専門店だ。昭和20年創業の老舗ながら、吉祥寺揚げという新名物を生み出し大ヒットさせる活力に満ちた名店だ。吉祥寺だけでなく、周辺に住む老若男女にも親しまれている。

多くの活気ある商店街が連なる吉祥寺駅北口

JR吉祥寺駅の北口は、多くの商店街で賑わう活気のある街だ。駅から五日市街道を結ぶ吉祥寺サンロード商店街、3つの商店街が集まる吉祥寺ダイヤ街、細い路地に小さな商店や飲食店が集まるハモニカ横丁など、個性的で魅力的な商店街が集まっている。

東京都武蔵野市吉祥寺本町:吉祥寺サンロード商店街 江口寿史

塚田水産のある吉祥寺ダイヤ街のEast zoneへ向かおうと急いでいたが、吉祥寺サンロード商店街のフラッグに思わず足を止めてしまった。「2019サンロード サマースクラッチセール」というイベントのイラストを江口寿史が担当していたからだ。

東京都武蔵野市吉祥寺本町:吉祥寺サンロード商店街 江口寿史

吉祥寺で活躍する江口寿史と吉祥寺サンロード商店街のコラボレーションはこれが初めてではなく、2017年から頻繁におこなわれている。また、吉祥寺サンロード商店街だけでなく、クレジットカード会社や商業施設などとも吉祥寺にちなんだコラボをおこなっている。パステル色の背景に描かれた吉祥寺ガールたちがなんとも可愛らしい。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街

塚田水産のある吉祥寺ダイヤ街は、吉祥寺サンロード商店街の西側に位置する。中央の交差点のDomeを中心にEast zone、West zone(旧東急チェリーナード)、South zone(旧ローズナード)があり、2009年に吉祥寺ダイヤ街としてグランドオープンした。

新名物の吉祥寺揚げが有名な塚田水産

塚田水産は昭和20年(1945年)創業で、吉祥寺や周辺地域を代表するおでん種専門店だ。吉祥寺ダイヤ街のEast zoneに位置し、となりには幻の羊かんで有名な「小ざさ(おざさ)」があり、さらにそのとなりには元祖メンチカツで有名な「さとう」がある。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産

塚田水産といえば、吉祥寺揚げが有名だ。2014年にテレビ東京系の「出没!アド街ック天国」で紹介され、一躍人気商品となった。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産

お店の一角には「吉祥寺揚げ」と染め抜かれた暖簾が掲げられている。お客さんも絶えることなくやってきては、この人気商品を購入していた。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産

吉祥寺揚げは魚のすり身に海老やホタテなどを加え、パン粉をつけて揚げたものだ。戸越銀座の後藤蒲鉾店の名物であるおでんコロッケに似ているが、あちらはおでんの具材を細かく刻んでジャガイモにあえたものだ。吉祥寺揚げの中身は完全に魚のすり身、いわゆる蒲鉾となっている。ホタテやチーズ、イカ、エビのレギュラーもののほかに限定のあじが販売されていた。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産

吉祥寺揚げのとなりにはお惣菜が売られていた。はんぺんを揚げたはんぺんナゲット、魚のすり身を小さく揚げたちぎり、おつまみ玉ねぎやおつまみごぼうなんていうのもある。どれもビールや日本酒によく合いそうだ。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産

塚田水産ではさらに、夏限定で浜名湖直送の鰻の蒲焼や、年末に販売する伊達巻なども作っている。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産

さて、肝心のおでん種は常時40種類以上が揃う。お店の正面のケースには練り物のおでん種が並び、25種類以上あった。どれも大きく、定番ものから変わり種までさまざまな種類がある。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産

練り物以外のおでん種も多数揃っている。自家製の魚のすじやはんぺん、ちくわぶやがんもどきなど抜かりはない。なお、結び白滝とこんにゃくは埼玉県東所沢のメイショウのもの、おでん汁は塚田水産オリジナルのものと正田醤油(綾瀬)のものを揃えていた。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産

塚田水産はとても人気があるおでん種専門店で、テレビや雑誌、Webサイトなどで多く紹介されている。それらでよく「農林水産大臣賞を2回受賞した名店」というフレーズが登場するのだが、農林水産大臣賞は日本かまぼこ協会(全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会)が年1回開催する全国蒲鉾品評会での最高賞だ。この品評会で、塚田水産ははんぺんとさつま揚で2回農林水産大臣賞を受賞している。店の奥に飾ってある賞状を確認すると、さつま揚は昭和59年(1984年)の第37回全国蒲鉾品評会に受賞したようである。

ハモニカ横丁の干もの屋、なぎさや

塚田水産では親切な店員さんと2代目店主にお話を伺いながら、おでん種と吉祥寺揚げを購入した。さっそく急いで家に戻って調理したいところだが、吉祥寺へやってきたならもう1軒寄りたいお店がある。

東京都武蔵野市吉祥寺本町:ハモニカ横丁

飲食店が並ぶハモニカ横丁の細い路地を抜けていくと、見えてくるのが鮭や干ものを販売するなぎさやだ。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 ハモニカ横丁:なぎさや

なぎさやのWebサイトによると、昭和22年(1947年)の創業、最初は闇市の一角で調味料や乾物などを販売していたそうだ。現在の2代目へと店主が代わると、鮭や干ものを扱うお店になった。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 ハモニカ横丁:なぎさや

鮭やさまざまな種類の干ものが並んでいて興味をそそるが、筆者が注目するのは「たこたま」と呼ばれるウズラ卵入りの小さなタコだ。以前、ハモニカ横丁周辺で飲んだ帰りにほろ酔い気分でなぎさやさんを横切ったとき、気さくな店主ご夫婦に声をかけられ思わず購入した品だ。それ以来この味が気に入り、購入するようにしている。ちなみにサクランボの漬物もおすすめだ。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 ハモニカ横丁:なぎさやのたこたま

甘めの醤油ベースのタレで味付けしてあり、噛めば噛むほどタコのうまみが滲み出てくる。中に入っているウズラの玉子はソフトな味わいで、全体をふんわり整えてくれる。
なぎさやの店主ご夫婦がとても明るく親切なので、吉祥寺に訪れた際はぜひ立ち寄ってみてほしい。

繊細なすり身が魅力の塚田水産のおでん種

塚田水産ではたくさんの種類のおでん種があったので迷ってしまったが、15種類を購入した。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種

時計回りに12時から、野菜天、きくらげ天、からし揚、豆天、チーズ巻、すじ、しゅうまい巻、しいたけ揚、キャベツお好み天、桜えび天、塚田揚、はんぺん(中央上)、餃子巻(中央右)、カレー団子(中央左)。このほかに結び白滝を購入した。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産の吉祥寺揚げ

さらに吉祥寺揚げも3種類購入した。あじ(左)、チーズ(中央上)、ホタテ(右)。魚のすり身が思いのほかふんわりしていてとても美味しく、サクサクの衣によく合う。混ぜ込まれた具材もそれぞれの持ち味が出ていてどれも美味しかったが、なかでもお気に入りはチーズだ。チーズのほかにベーコンとほうれん草が入っていて、とてもクリーミーだった。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種

吉祥寺揚げをつまみ食いしつつ、おでんはいつもように大根やこんにゃくなどを下茹でし、練り物のおでん種を温めたあとにはんぺんを加えて完成。おでん種がそれぞれ大きいので、半分にカットして入れることにした。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種

塚田水産の魚のすり身は柔らかさと弾力感が絶妙なバランスを保っている。癖がないが味はしっかりとしていて、油の味もとてもよく繊細な印象を受ける。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種 はんぺん

全国蒲鉾品評会で農林水産大臣賞を受賞したという自家製のはんぺんは、ふんわりきめ細やかでありながら、オムレツのような手作りの舌触りを楽しめる。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種 きくらげ天

きくらげ天は通常よりも揚げ色が薄くなっている。上品な舌触りの魚のすり身にキクラゲの歯応えがよいアクセントとなっている。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種 キャベツお好み天

キャベツお好み天はキャベツのほかに紅生姜が入っている。魚のすり身は肉厚でありながらふんわりと仕上げてあるので、食感はお好み焼きそのもの。塚田水産のなかでイチオシのおでん種だ。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種 からし揚

からし揚は唐辛子がぴりりと効いていて辛いのだが、人参の甘みがそれを中和して素晴らしいバランスを保っている。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種 桜えび天

桜えび天は桜エビの香ばしい香りが口のなかでふわっと広がる。エビの香りをきちんと閉じ込める技量はさすがのひと言。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種

塚田水産のおでん種は種類によって、魚のすり身の練り方や揚げ加減が絶妙に調整されている。この職人技が地元や周辺の人々に愛されてきた理由なのだろうか。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種 塚田揚

店の名を冠した塚田揚は、人参、長ネギ、もやしなど野菜が盛りだくさんのおでん種だ。さまざまな野菜の食感を楽しめ、満足感はじゅうぶんだ。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種 野菜天

野菜天には人参、もやし、ほうれん草のような葉物が入っている。塚田揚とレシピが似ているが、こちらのほうがより優しい味わいになっている。緑とオレンジの彩りも美しい。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種 豆天

豆天は枝豆がふんだんに入っている。枝豆の独特の甘みは夏の季節にぴったりだ。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種 しいたけ揚

しいたけ揚は魚のすり身を椎茸全体にからめつつ、笠の黒い部分だけ表面に残して揚げている。椎茸のうまみがぎゅっと詰め込まれている。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種

最後は巻物のおでん種を中心に紹介していこう。今回は餃子巻、しゅうまい巻、チーズ巻をチョイスした。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種 餃子巻

餃子巻は他店でみられるよりも寸胴な形をしている。魚のすり身がしっかり餃子を包み込み、肉汁やうまみを閉じ込めている。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種 しゅうまい巻

しゅうまい巻も餃子巻と同じように、魚のすり身が焼売を完全に包み込んでいる。濃縮された焼売のうまみを存分に楽しめる。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種 チーズ巻

揚げ色の浅いおでん種が目立つ塚田水産だが、チーズ巻も表面が白く、佃忠かまぼこ店(田端)のチーズ巻に似ている。じんわりとろけるチーズがとても美味だ。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種 すじ

自家製の魚のすじはとても大きく、そしてこりこりとした軟骨がいくつも入っている。はんぺんを手作りする塚田水産だけに、すじの味も一級品だ。

東京都武蔵野市吉祥寺本町 吉祥寺ダイヤ街:塚田水産のおでん種 カレー団子

最後はカレー団子だ。人参、長ネギ、枝豆が入っており、通常のカレーボールよりふたまわりほど大きい。カレーボールというよりも、カレー風味の和風団子といった味わいで面白い。

塚田水産は吉祥寺の地で約70年の歴史を誇り、店主も3代重ねるおでん種の老舗だ。おでん種の種類によって魚のすり身の加減を変える繊細さ、吉祥寺揚げという新しい名物を作り出す革新力、さまざまな点で名店たる証が見てとれる。塚田水産のオンラインショップで通販をしているので、興味のある方はオーダーして実際に自分の舌で味わってみるといいだろう。

閉業する店舗が多いおでん種業界のなかで、塚田水産のようなアグレッシブな名店が存在するはとても心強く思う。これからも吉祥寺だけでなく、周辺の人々に美味しいおでん種を提供し続けてもらいたい。

塚田水産の基本情報

塚田水産
〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-1-8
0422-22-4829
定休日:1月1日~1月3日
営業時間:9:30~19:00
塚田水産のWebサイト
塚田水産のTwitterInstagramLINEFacebook

塚田水産(伊勢丹新宿店)
〒160-0022 東京都新宿区新宿3-14-1
定休日:1月1日
営業時間:10:00~20:00
伊勢丹新宿店のWebサイト

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