佃忠かまぼこ店(田端)のおでん種

佃忠かまぼこ店(田端)は東京都北区の駒込駅近くの田端銀座商店街にあるおでん種専門店だ。佃忠はこのほかに亀有向島、西武池袋本店にもあるが、3兄弟とその長男の息子さんが店主としてそれぞれ経営しており、味やおでん種の種類が異なる。

古き良き昭和風情を残す田端銀座商店街

JR駒込駅東口から徒歩5分程歩いたところに田端銀座商店街がある。新築マンションの攻勢はありながらも、昔ながらの風情を残す味のある商店街だ。

東京都北区田端:田端銀座商店街

かつては谷田川という川が流れ、不忍池へと注いでいた。谷田川は昭和に入ってから暗渠になり、その上に多くの商店街が作られた。駒込駅を挟んで西側の染井銀座商店街、霜降銀座商店街、駅の東側は一本隣りの通りにある田端銀座商店街が続いて、西日暮里の道灌山通りを挟んでよみせ通りへと通じている。

田端銀座商店街は現在でも活気のある商店街だが、筆者が中学生の頃の30年くらい前には店舗がもっと多かった記憶がある。テレビでも度々登場している。

東京都北区田端:田端銀座商店街

田端銀座商店街を略した「タバギン」の文字をキャラクター化したペンギンが商店街のあちこちに登場するが、この図柄もテレビの企画で生み出されたそうだ。とても可愛らしく、訪れたときも女子高生がスマホで写真におさめていた。たしかにキーホルダーなどグッズができたら買ってしまうかもしれない。

昭和33年創業、佃忠三兄弟の三男が経営する佃忠 田端銀座店

商店街を少し進むとすぐに見えるのが、佃忠の田端銀座店(佃忠かまぼこ店)だ。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠かまぼこ店(田端)

向島の佃忠蒲鉾店の記事でも紹介しているとおり、佃忠は4店舗あり、それぞれ2代目の3人の息子とその長男の息子さんが経営している。本店である亀有店は長男が経営し、向島店は次男、田端銀座店は三男、西武池袋本店は長男の息子さんが店主となっている。

佃忠は初代が日本橋にあった「佃新」から独立して営業をはじめ、戦後になってから葛飾区の亀有に移転した。そして、二代目の息子である三兄弟はそれぞれ亀有、向島、田端で店を持ち、2010年に長男の息子さんが池袋西武本店で4店目をオープンした。佃忠かまぼこ店(田端)は昭和33年(1958年)に創業、現在は店主の息子さんに代替わりしている。息子さんは日本橋から数えると四代目、田端銀座店で数えると二代目となる。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠かまぼこ店(田端)

田端銀座店は佃忠のなかでもっとも有名な店だ。その理由は田端銀座商店街がテレビなどのメディアでよく紹介されていることに加え、店頭で販売されるできたておでんがとても美味しそうなことだ。訪れたときも34種類ほどのおでんが四角い鍋にぎゅうぎゅうに詰められ、よく汁を吸って美味しそうに佇んでいた。もっとも高い種で160円、平均で60〜90円とリーズナブルな値段も魅力といえるだろう。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠かまぼこ店(田端)

お店の正面にはたくさんの練り物のおでん種が並んでいる。佃忠は具材は一緒に仕入れるものの、各店舗でレシピや種類はそれぞれ異なっている。佃忠かまぼこ店(田端)でもからし揚げやチーズ巻などほかの佃忠のお店で見られるおでん種を揃えているが、異なるレシピを用いている。また、たこ揚げボールなどオリジナルの変わり種もある。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠かまぼこ店(田端)

ショーケースの右側には練り物以外のおでん種が並んでいる。はんぺんは銚子の嘉平屋、焼きちくわは青森のイゲタ沼田焼竹輪工場、白滝は向島の柳澤商店、おでん汁はチヨダのおでんの味と正田醤油(綾瀬)、からしはチヨダの洋からしだった。

訪れたときは四代目のお母様(三代目のおかみさん)と従業員の女性が接客してくれた。お母様はとてもはつらつとした方で、お店や商店街のことなど気さくに話していただいた。他の商店街と同じく、かつての田端銀座商店街は多くの客で賑わっており、歩く場所もないほどだったという。テレビの取材は一時期より少なくなったが、この間もテレビ東京の「昼めし旅」が取材にきていたそうだ。従業員の方は元々はお客だったそうだが、現在は一緒に働いているという。おふたりは何十年の付き合いらしく、とても仲がよさそうだった。客足が途切れた束の間、ふたりで談笑しながら商店街を見つめる姿がシンクロしていて、とても可愛らしかった。

60年もののぬか床がある栄屋食料品店

佃忠かまぼこ店(田端)でおでん種を買ったあと、斜向かいにある栄屋食料品店を覗いてみた。

東京都北区田端 田端銀座商店街:栄屋食料品店

昭和9年(1934年)創業の栄屋食料品店は、惣菜や漬物、乾物など多くの食料品が揃っている。昔ながらの店構えがとても魅力的だ。

東京都北区田端 田端銀座商店街:栄屋食品

とくに魅力的なのが多くの種類が揃う漬物だ。人参、きゅうり、カブなどの定番以外に、キャベツなどもある。カメラのファインダー越しに漬物を眺めていると、女性の店主が「撮影しやすいようにガラスケースを外しましょうか?」と声をかけてくれた。

お話を伺うと、お祖母様の代から受け継がれているという60年もののぬか床を使用しているそうだ。こちらの店主は優しい物腰で、とても親切にお話を聞かせてくれた。代々引き継がれたお店への愛着をひしひしと感じ、とても大切にしていることが窺い知れた。

東京都北区田端 田端銀座商店街:栄屋食品のお漬物

ということで、カブやキャベツなど漬物をいくつか購入してみた。価格もリーズナブルなので、ついついたくさん買ってしまう。味はほどよい酸味と塩気がまろやかで、自分で漬けてもなかなか出せない稀有な逸品たちだ。ぬか床は今若い人の間でブームだというが、ぜひ参考に食べてみてもらいたい。

見た目も味も絶品の佃忠かまぼこ店(田端)のおでん種

佃忠かまぼこ店(田端)では16種類のおでん種を購入した。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠かまぼこ店(田端)のおでん種

時計回りに12時から、コーン揚げ、はす揚げ、チーズ巻、生あげ、うずら巻、つみ入、おつまみ揚げ4種、お好み揚げ、からし揚げ、えだ豆揚げ、たこ揚げボール(中央上)、袋詰め(中央右)、すき焼袋(中央左)。この他にちくわぶと焼ちくわも購入。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠かまぼこ店(田端)のおでん

いつものように試食開始。チーズ巻の緑色、色とりどりのおつまみ揚げがおでん鍋を華やかにしてくれる。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠かまぼこ店(田端)のおでん種

佃忠かまぼこ店(田端)の練り物はとても美味しい。きめ細やかでふわふわな食感がありながら、弾力もあってとてもよい噛み心地だ。佃忠でいうと、亀有店と向島店の間をとった食感だ。同じ屋号でも食感が異なるのは実に興味深い。魚のすり身の味もよく、人気店なのもうなずける。

たこ揚げボールは小振りながらキャベツ、タコ、イカ、桜エビ、青じそ、生姜、おかかが入った贅沢な逸品。たこ焼きを意識したおでん種と思われるが、生姜やおかかの味がとてもよくておすすめだ。

うずら巻は上面の揚げ色は浅く、側面は濃く揚げて彩りがとても凝っている。佃忠かまぼこ店(田端)のおでん種はひとつひとつの見た目に工夫が凝らされていてとても美しい。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠かまぼこ店(田端)のおでん種 チーズ巻

チーズ巻は揚げ色が浅めの魚のすり身に青海苔が混ぜ込んである。チーズと海苔の組み合わせはおでん種としては珍しいが、海苔チーズなんていうおつまみも存在するので確かにベストな組み合わせだ。チーズ巻でいえばベストな部類に入る。四代目のお母様曰く「レンジで温めて、ワインと一緒に食べてもいい」らしい。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠かまぼこ店(田端)のおでん種 お好み揚げ

お好み揚げは黒ごま、長ネギ、桜エビ、生姜などが入った大判のおでん種。春の到来を告げる桜エビの香りと食感が際立っている。黒ごまと生姜が桜エビの引き立て役として機能している。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠かまぼこ店(田端)のおでん種

えだ豆揚げは枝豆の甘い味と芳香が口いっぱいに広がってとても美味しい。コーン揚げと同様に、佃忠の他の店舗でも扱っているので食べ比べてみると面白い。

つみ入は程よい粗さを残した練り加減が絶妙で、魚のうまみが引き立つ。生あげは揚げた表面がきつね色よりも少し茶色くなっており、油の香ばしさが強調されている。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠かまぼこ店(田端)のおでん種 袋詰め

袋詰めは餅、白滝、うずらが入っている。薄味ながらしっかり具材のうまみが染み出していて、安心感が漂う味わいだ。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠かまぼこ店(田端)のおでん種 からし揚げ

からし揚げは人参、もやし、長ネギ、黒ごま、唐辛子が入っている。この具材の組み合わせは向島店と同じだが、形や色が異なる。亀有店のからし揚げは一回り小さく、よりシンプルなものとなっている。佃忠のおでん種を徹底比較する記事を作っても面白そうだ。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠かまぼこ店(田端)のおでん種

おつまみ揚げはお店の説明書きによると、インゲン、青じそ、玉ねぎ、ほうれん草、人参、ピーマン、アスパラ、その他が入っている。色の違う4種類にそれぞれの具材が分けられているのだが、彩りだけでなく味の個性が引き立っていて面白い。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠かまぼこ店(田端)のおでん種 すき焼袋

すき焼袋は、甘く煮付けられた牛肉と刻んだ玉ねぎが入っている。これは、とにかく実際に食べてみてほしい。ジュワ、ジュワーっと牛肉と玉ねぎの甘みが溢れ出て、悶え死んでしまうであろうほどの美味しさだ。

店構えも風情があり、お店で働く人たちの雰囲気もよく、美しく味もよいおでん種が揃う佃忠かまぼこ店(田端)。テレビや雑誌で取り上げられる名店であるのは間違いない。佃忠は兄弟揃っておでん種専門店の道を選び、それぞれ影響を与え合い、各店で独自の味を作り上げた。その過程をいろいろと想像するのも面白いと思う。後継者にも恵まれ、今後もこの素晴らしい味を後世まで伝えていってほしいと思う。

佃忠かまぼこ店(田端)の基本情報

佃忠 田端銀座店(佃忠かまぼこ店)
〒114-0014 東京都北区田端3-8-6
03-3822-0973
定休日:火
営業時間:9:00〜19:30
佃忠かまぼこ店(田端)のWebサイト(田端銀座商店街のWebサイト)

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