八幡屋が2021年8月閉業

墨田区東向島の大正通り商明会にある八幡屋(やわたや)が2021年8月中旬に閉業した。東向島が玉の井であった時代から営業しており、65年の歴史をもつおでん種専門店だった。

東京都墨田区東向島 大正通り商明会:八幡屋

店主は浅草生まれで生粋の下町東京人で、「冗談じゃねえよ」という口癖が威勢よく格好よかった。職人のこだわりを感じさせる丁寧な仕上げのおでん種や揚げ蒲鉾を提供する名店だった。

東京都墨田区東向島 大正通り商明会:八幡屋

今年10月後半の記事「墨田区のおでん種やさん巡り」の取材時にはビルの外装工事をやっていて営業の確認ができなかったが、ネットには7ヶ月前のレビューが掲載されていたので営業は続けていると思っていた。しかし、先日確認に訪れると、店頭に閉業のお知らせが貼られていた。

東京都墨田区東向島 大正通り商明会:八幡屋

八幡屋は昭和31年(1956年)の創業で65年の歴史があった。私娼街がなくなったのが昭和33年なので、かつての玉の井を知る歴史的にも貴重なお店だった。

東京都墨田区東向島 大正通り商明会:八幡屋

店主のつくる揚げ蒲鉾はとても上品な味わいで、イカやうずら卵、銀杏などの具材は一度揚げてからすり身に包んだりと、繊細で手の込んだものだった。店内も清潔で美しく、心配りが行き届いた素敵な空間だった。八幡屋の営業当時の様子は「八幡屋のおでん種」の記事でご覧いただきたい。

東京都のおでん種専門店(個人営業)の営業軒数推移(2019〜2022年)
東京都のおでん種専門店(個人営業)の営業軒数推移(2019〜2022年):クリックして拡大

2021年は八幡屋を含めて2軒の閉業が確認された。2019年から数えると毎年2軒が閉業していることになる。70代や80代の店主が多いため、この先数年はさらに閉業するお店が増えることだろう。

東京都墨田区東向島 大正通り商明会:八幡屋

2年前に取材に訪れたとき、店主は「親父の苦労を知っているから、おいそれと仕事をやめるわけにも、店をたたむわけにもいかない」とおっしゃっていた。決断にいたるまでの店主のお気持ちを想像すると胸が締めつけられるような気持ちになる。今後はゆっくり身体を休めていただき、長年の疲れを癒していただければと思う。

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