大国屋(京島)のできたておでん

墨田区京島の下町人情キラキラ橘商店街にある大国屋は創業から70年ほど続く老舗のおでん種専門店だ。今回は大国屋(京島)の店頭で販売しているできたておでんを紹介しよう。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん

大国屋(京島)は揚げ蒲鉾をはじめとして、はんぺんや魚のすじ、袋づめなど手づくりのおでん種が豊富だ。これらが一堂に会して調理されたおでんは、さまざまな出汁が混じり合い絶品の味わいとなっている。

下町人情キラキラ橘商店街の人気店、大国屋(京島)

墨田区は古くから残る魅力的な商店街が多いが、京島にある下町人情キラキラ橘商店街(向島橘銀座商店街)も昭和の風情を残す素晴らしい商店街だ。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街

「橘」の名は昭和6年(1931年)に開館した橘館があったことに由来し、戦前から橘館通りという名称で親しまれてきた。全盛期では137軒あったそうだが、今でも75軒が営業を続けている。最近では若い世代が古い建物をリノベーションして開業する動きもある。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)

大国屋(京島)は曳舟たから通りから下町人情キラキラ橘商店街に入ってすぐの場所にある。寒い季節にはいつでも人だかりができる人気店だ。昭和27年(1952年)に先代が創業し、現在では二代目がおかみさんとともに営業している。

大国屋は葛飾区柴又にもあり、京島の店主の弟さんが営業している。大国屋の歴史については「大国屋の系譜」という記事をご覧いただきたい。

さまざまなおでん種の出汁が詰まった大国屋(京島)のできたておでん

大国屋(京島)の正面左側には大きなおでん鍋が鎮座している。12個に分かれた仕切りがあり、それぞれ種類ごとにおでん種が入れられている。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)

おでん汁は毎日継ぎ足しされており、おでん種の出汁がたっぷり蓄積されている。1日だけでも何百個のおでん種を煮るので、1年にしたらどれだけの数になるのだろう。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街(向島橘銀座商店街):大国屋のおでん汁

ベースとなるおでん汁は、大国屋(京島)で販売している濃縮和風だしと同じものを使用しているという。北海道昆布と鰹節を使用した大国屋のオリジナルブレンドだ。この濃縮だしを使えば家庭でも同じ味を再現できるが、おでん種からでる出汁の量だけは真似できない。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)

おでん種の人気ランキングでは大根やこんにゃくなどが人気だが、出汁を吸い込むおでん種だけではけっしておでんは美味しくならない。おかみさんいわく、出汁がでる練り物がないと味わい深いおでんは完成しないそうだ。大国屋(京島)では毎日手づくりの揚げ蒲鉾が鍋に投入され、じっくりうまみが汁に溶け込んでいる。したがって、自宅でつくる場合も揚げ蒲鉾は必須のおでん種になる。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)

おでん種からのさまざまな出汁をたっぷり吸い込んだ大根は薄褐色に染まり、とても美しい。はんぺんや揚げ蒲鉾も放置せずに適切に管理されているので、汁に味が逃げることなく本来の美味しさを保っている。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)

大国屋(京島)のおでん種はメニュー表に掲げられているだけで28種類。購入するとビニール袋に入れてくれるが、カップで購入することも可能だ。外で味わうのもいいが、新型コロナウイルスの対策には気を配りたいところだ。

丁寧に手づくりされた大国屋(京島)のおでん種

前回の記事「大国屋(京島)のおでん種」で詳しく紹介したが、通常のおでん種についてもすこし触れておきたいと思う。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)

大国屋(京島)のおでん種はほとんどが手づくりで、揚げ蒲鉾は20種類以上ある。良質な鮮魚を石臼ですりあげ、ひとつひとつ職人の手で丁寧に成形される。墨田区のシンボルとなったスカイツリーをかたどったものや、梅のかたちをした紅生姜揚が可愛らしい。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)

ごぼう巻や野菜揚など定番のおでん種も充実している。おでんにしても美味しいが、グリルやレンジで温めると揚げたての味覚を楽しめる。暑い時期は生姜醤油などをつけてそのまま食べても美味しい。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)

揚げ蒲鉾以外のおでん種も多く取り揃えている。最近では少なくなった手づくりのはんぺんや魚のすじに加えて、鮫皮を使用した煮こごりも手づくりだ。ちくわぶはパックされていない通称「ハダカ」といわれる生のものを揃えている。冬季限定のふくろ詰めは餅とキャベツ、うどんと豚肉の2種類がある。ふくろ詰めは油揚げでさまざまな具材を包んだおでん種だが、詳細は「東京のおでん種やさんの袋詰」を参照いただきたい。

大国屋(京島)のできたておでん

大国屋(京島)では定番ものを中心として、12種類のできたておでんを購入した。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん

時計回りに12時から、野菜揚、つみれ、こんにゃく、大根、カレーボール、じゃがいも、ちくわぶ、焼ちくわ、こぶ(中央左上)、うどんふくろ(中央右上)、白滝(中央右下)、たまご(中央左下)。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん

購入したおでん種はビニール袋に入れてくれる。おでん汁がたっぷり詰まっているが、しっかり縛ってあるので漏れ出すことはない。からしはおまけで付けてくれる。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん

おでん種を汁ごと鍋に移して弱火で温めればすぐに食べられる。ぐつぐつ煮ると崩れてしまうので強火は厳禁だ。電子レンジも玉子などが破裂する可能性があるので鍋で温めよう。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん

家に帰ってからほんの数分で、しっかりと出汁が染み込んだおでんが楽しめる。自分で調理するのも楽しいが、この手軽さは魅力的だ。これから、ひとつひとつ味わっていこう。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん 大根

大根は小ぶりながら斜めに切ってあり食べ応えがある。継ぎ足しされたおでん汁をたっぷり吸い込んでおり、中心も表面と見分けがつかないほど薄褐色に染まっている。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん 野菜揚

野菜揚は人参やねぎなど複数の野菜が入った揚げ蒲鉾だ。野菜の甘みや香りがほのかに感じられ、魚のすり身のうまみを引き立てている。ボリューム感も申し分なく、2つに分けてシェアしてもいいだろう。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん カレーボール

カレーボールは通常のものよりひとまわり大きめで、できたておでんでは2つセットの販売となる。食欲をそそられるスパイシーな香りが広がり、なかに入ったイカがうまみをさらに深めている。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん つみれ

つみれは魚の臭みがまったくなく、やさしい味わいとなっている。そのまま食べるとほどよい弾力があるのだが、おでんにすると柔らかい食感になる。混ぜ込まれている刻み昆布の食感がよいアクセントとなっている。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん うどんふくろ

うどんふくろは油揚げのなかにうどんと豚肉が入ったおでん種だ。東京おでんだねの筆者は何度も食べているが、できたておでんでは初めてだ。油揚げのなかから豚肉の出汁が合わさったおでん汁が溢れ出て、とろりとしたうどんに絡みつく。冬季限定なので、味わいたい方は早めにお店に向かったほうがいい。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん 焼ちくわ

焼ちくわは青森のイゲタ沼田竹輪工場のものを使用している。肉厚でしっかりしており、鍋のなかで崩れることなく魚のうまみをしっかり残している。褐色に染まった表面が美味しそうだ。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん ちくわぶ

ちくわぶはじっくり味が染みてくたくた感が支配しつつも、小麦粉のうまみともっちり感を残している。溶ける一歩手前の絶妙なバランスはさすがのひと言。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん たまご

たまごは表面だけでなく、中央付近まで褐色に染まっている。玉子特有のぷりっとした食感は残っており、黄身もまろやかに仕上がっている。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん しらたき

しらたきは干瓢で巻いたひと口サイズ。おでん汁をたっぷり抱き込んでいるので、噛むと汁が溢れてくる。太すぎず、細すぎずの標準サイズなので、白滝の美味しさも楽しめる。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん こんにゃく

こんにゃくは白こんにゃくを使用しているので、おでん汁がどれだけ染み込んでいるか一目瞭然だ。ぷるんとした食感が気持ちよく、とってもジューシーだ。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん じゃがいも

じゃがいもは小ぶりのものを使用しており、飽きずに食べることができる。ねっとりとした食感が素晴らしく、じゃがいもの味とともにおでん汁のうまみを存分に味わえる。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん こぶ

こぶはとろとろになる寸前の状態ながら、うまみをきちんと残している。おでん汁と一緒に味わうことで、より昆布の美味しさを楽しむことができるだろう。

人のつながりがおでんを味わい深くする

今回はおかみさんにお話をうかがったが、話しているとこちらも元気になるくらい明るく気さくな方だった。大国屋(京島)のおでん種やできたておでんへのこだわりをしっかり持たれていて、熱心にご説明いただいた。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)

お客さんは途切れることなく、どの人もおでん種を大量に購入していた。ある常連夫婦はクリスマスに遊びにくるお孫さんのために買いにきたそうだが、ついでにおかみさんに手土産を渡すと、おかみさんも奥からお菓子を持ってお返しをしていた。こうした日常の何気ないやりとりを見ていると、商店街は人情が育まれる素晴らしい場所なのだなとしみじみ感じる。

常連夫婦のお孫さんも、祖父母の家で幼いころに食べた大国屋(京島)の味をずっと覚えていることだろう。職人の技で培われた味はもとより、人のつながりがおでんを味わい深くするように思う。

東京都墨田区京島:下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)

大国屋(京島)は年末の12月31日まで営業予定だという。お正月用に自家製の伊達巻と栗きんとんを販売する予定なので、興味のある方はおでんと一緒に購入してみるといいだろう。

大国屋(京島)の基本情報

大国屋
〒131-0046 東京都墨田区京島3-43-8
03-3611-5289
定休日:日曜、正月
営業時間:10:00~19:30

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