葛飾区鎌倉の千代田通商店街にある増田屋蒲鉾店(京成小岩)は、豊富な手づくりのおでん種が魅力のおでん種専門店だ。今回は増田屋蒲鉾店(京成小岩)の店頭で販売しているできたておでんを紹介しよう。
増田屋蒲鉾店(京成小岩)のおでん汁は毎日継ぎ足しされており、複雑ながらも透明感がある味わいだ。おでん種も種類が豊富で、定番ものから変わり種まで揃う。テレビなどのメディアにも多く紹介された増田屋蒲鉾店(京成小岩)のできたておでんをぜひ堪能してほしい。
人情あふれる千代田通商店街で営業を続ける増田屋蒲鉾店(京成小岩)
京成本線の京成小岩駅の北口を進んだ先にある千代田通商店街(千代田通商店会)は、鮮魚店や生花店など古くから営業を続けるお店が集まっている。
葛飾区のモデル商店街第一号に認定されているだけあり、人情あふれる昔懐かしい風景が広がっている。東京おでんだねの筆者がお気に入りの杉戸煎餅(本店は青砥駅)もあり、毎回訪れるのが楽しみになる商店街だ。
増田屋蒲鉾店(京成小岩)は京成小岩駅からもっとも奥、商店街の北側にある。店主は葛飾区立石の増田屋で修行をしてから独立して約60年、千代田通商店街に移転してからは37年ほど営業を続けている。増田屋の歴史については「増田屋の系譜」という記事を参照いただきたい。
継ぎ足しのおでん汁が魅力の増田屋蒲鉾店(京成小岩)のできたておでん
増田屋蒲鉾店(京成小岩)のおでん種については前回訪れた際の記事「増田屋蒲鉾店(京成小岩)のおでん種」にまとめたので、今回はできたておでんに注目しようと思う。なお、東京おでんだねはテレビ東京「よじごじDays」に出演した際にこちらのおでんを推薦している。
お店の正面入口の横には10個に仕切られた大きなおでん鍋が設置してある。種類ごとにおでん種が整理されており、選びやすくなっている。
ざっと数えただけでも40種類ほどあり、どれを選ぼうか迷ってしまう。名前がわからなかったり、希望のものが見当たらない場合は質問すればやさしく答えてくれる。おすすめや人気商品なども積極的に聞いてみて、いろいろなおでん種を味わってみよう。
大根もおでん汁がしっかり染みていて、半透明の美しい色に染まっている。おでん汁は前日のものを保存して、次の日に継ぎ足している。初代店主が配合する鰹節と昆布の出汁はもちろん、大量のおでん種から滲み出た出汁が凝縮されている。大根の隣にあるおでん種は衣が付いているので、荒川区南千住名物のにくまんだろうか。
おかみさんにその正体をうかがうと「お好み揚げ」という答えが返ってきた。お好み揚げは細かく刻んだキャベツや椎茸、人参、豚肉が魚のすり身に入っており、衣をつけて揚げたものだ。このお好み揚げは台東区谷中にある文化複合施設、HAGISOの「旅する朝食 第10期 東京」の1品として提供されており、時期によって提供する品が替わるそうだ。また、増田屋蒲鉾店(京成小岩)のおでん種はHAGISOを運営するHAGI STUDIOの別施設、西日暮里スクランブルにも提供されている。
おでん鍋の隣にも陳列されていたが、ほかにチョリソー巻きやエビ巻き、ぎんなん、大根、はんぺん肉詰めも並んでいた。
店内には揚げたてのおでん種が30種類以上並ぶ
できたておでん以外のおでん種は前回でも紹介したが、目の当たりにするとやっぱり魅力的なのですこしだけ紹介しておこう。
お店のなかに入るとケース一面におでん種が並んでおり、その存在感に圧倒されることだろう。お店の奥にある工場(こうば)で初代店主が揚げ続け、できたてのものが並べられていく。
揚げ蒲鉾だけでも30種類以上が並び、それぞれがきらきらと黄金色に輝いている。大手メーカーのおでん種が並ぶデパートでもこの種類はカバーできないだろう。そして、そのどれもが手づくりなのである。おかみさんによると初代店主は増田屋会の同門のなかでも蒲鉾づくりの腕前が評価されていたのだという。
増田屋蒲鉾店(京成小岩)で人気なのは、カレーボール、チーズ巻き、餃子巻き、シュウマイ巻きなのだそうだ。はんぺん肉詰めや肉ばくだんなど、挽肉を使った変わり種も充実している。
シュウマイ巻きはグリーンピースのトッピングが美しく、焼売の大きさも特大の逸品だ。魚のすり身は極限まで薄く仕上げられており、技術の高さをうかがわせる。ぎゅっと詰まった挽肉のうまみととろりとした皮が最高に美味しい。
注目は夏用のおつまみとして考案された4種類のおつまみ揚げだ。大きめに刻んだ玉ねぎが練り込まれた「玉ねぎ」、具材が大量に入った「ひじき」や「ごぼう」、干し椎茸のうまみが効いた「椎茸」があり、それぞれの個性が際立つ逸品だ。おかみさんいわく「なぜだかお気に入りの1種類ばかりを買っていく常連さんが多い」のだそうだ。
増田屋蒲鉾店(京成小岩)のできたておでんを味わう
たくさんある魅力的なおでん種に迷った結果、9種類のできたておでんを購入することにした。
時計回りに12時から、お好み揚げ、大根、れんこん揚げ、チョリソー巻き、エビ巻き、ぎんなん、牛すじ、玉子(中央上)、ちくわぶ(中央下)。上写真にはないが、椎茸とさつまいものおつまみ揚げも購入した。
できたておでんを購入すると、おでん種が崩れないように串ものと細長い巻物系のおでん種を別の袋に入れてくれる。練りからしはサービスで付けてくれるので、希望する場合は伝えるといい。粉からしを熱いおでんの汁で溶いたものなので、チューブのものより香りがよくてしっかり辛い。
できたておでんは鍋に移し替えて弱火で温めるだけでいい。ぐつぐつ煮ると崩れてしまうので、本当に温める程度にしておく。
揚げ蒲鉾や玉子はつるんと、大根や牛すじはとろりと仕上がり、とても美味しそうにできあがった。おかみさんによると、夏季はちょっとだけ食べたいお客さんができたておでんを買っていくというが、忙しい年末にもこの手軽さは重宝する。自分でおでんを調理する場合もできたておでんと組み合わせ、継ぎ足しのおでん汁で味に深みを出すのもいいだろう。
お好み揚げは、細かく刻んだキャベツのしんなり、ざくざくとした歯触りが心地よい。椎茸、人参、豚肉がそれぞれの美味しさを主張しながらお互いを引き立てあっている。
まわりの衣は汁を吸ってふわふわとなり、おでん汁の美味しさを楽しめる。汁に浸かっていないものも購入したが、こちらはコロッケやメンチカツのようにさくさくとした食感が魅力だ。どちらが美味しいかは好みによるが、東京おでんだねでは両方購入することをおすすめする。
チョリソー巻きは細長いチョリソーを魚のすり身で包んだおでん種だ。チョリソーの凝縮された肉のうまみが辛味によって引き立てられている。おでんにすると優しい味わいになるので、辛いものが苦手な方はじっくりおでん汁で温めるといいだろう。ボリューム感があるので、半分にしてシェアしてもいい。
エビ巻きは大ぶりの海老が入っており、噛んだときの弾力と滲み出るうまみが素晴らしい。他店と比べると少々割高なのだが、この海老のクオリティならば文句のつけようがないくらい美味しい。ぜひ一度ご自身の舌で味わっていただきたい逸品だ。
れんこん揚げは輪切りの蓮根が入ったおでん種だ。蓮根はすこし厚めに切られており、絶妙な食感をつくり出している。ほどよい歯応えを残しながらも柔らかく、魚のすり身のうまみと蓮根のほのかな香りが融合している。
ぎんなんは串に刺した銀杏を魚のすり身でくるんでいる。銀杏はほくほくとした食感で、魚のすり身と相まってまろやかな味になっている。寒い季節にかかせない定番のおでん種だ。
大根はしっかりと芯までおでん汁が染みている。口のなかでほろりとほどけ、ほのかな大根のうまみとともにおでん汁が溢れてくる。増田屋蒲鉾店(京成小岩)ではできたておでんのほかに調理用の大根も販売しているが、出汁で下茹でしてあるので鍋に入れるだけでしみしみの大根を手軽に再現できる。
玉子はじっくり煮てあり、表面が綺麗な褐色に染まっている。白身はぷるっとした食感があり、黄身はしっとりとしていて美味しい。
ちくわぶは表面がとろりとしているが、くたくたになりすぎず、もちっとした食感を楽しめる。おでん汁ともしっかり絡んでくれ、最高の状態を保っている。
牛すじは部位によってぷりぷり感やしっとりとした食感を楽しめる。じっくり煮込んであるため甘味があり、肉部分は牛独特のうまみが強く出ている。
できたておでん以外におつまみ揚げも購入した。前回はひじきをチョイスしたが、今回は干し椎茸とさつまいもに挑戦してみることにする。
さつまいもは良質の素材が手に入ったときにだけ販売されるそうで、さつまいもの濃厚で上品な甘味が素晴らしく、魚のすり身のうまみと見事に融合している。
椎茸は刻んだ干し椎茸がふんだんに詰め込まれている。椎茸と魚のすり身の異なる弾力が交互に現れ、噛むごとにそれぞれのうまみが口に広がっていく。
おつまみ揚げはなにも付けずにそのまま食べても美味しいが、おでんに入れても美味しい。具材やすり身がおでん汁によってまろやかな味となり、汁気によって柔らかい食感になる。すり身の味をダイレクトに味わうならそのまま食べることをおすすめするが、汁との絡みを楽しみたい人は挑戦してみるといい。
取材として訪れたのは2年ぶりだったので新型コロナウイルスの影響を伺ったところ、巣篭もり需要の影響で客足は増えたそうだ。また、TVなどのメディアに紹介されることで興味を持ち、来店する人も多いという。
しかし、原料魚をはじめとした材料費の高騰には頭を抱えているそうだ。これは大手メーカーや水産加工業以外の業界でも同じ悩みを抱えているが、個人商店ではなおさら深刻だ。増田屋蒲鉾店(京成小岩)をはじめとして東京には個性豊かなおでん種専門店が存在するが、いつまでも手づくりの素晴らしいおでん種を提供してくれるように応援したいものである。
おでん種専門店は年末に向けて忙しくなるが、増田屋蒲鉾店(京成小岩)では12月30日までおでん種をつくり続け、31日は残りがなくなり次第今年の営業を終了する。お正月期間はお休みとなるので、混雑を避けて早めに訪れるか、お正月明けを狙って訪問するといい。
増田屋蒲鉾店(京成小岩)の基本情報
増田屋蒲鉾店(京成小岩)
〒125-0053 東京都葛飾区鎌倉4-36-2
03-3658-9653
定休日:日曜、年末年始
営業時間:10:00~18:30
増田屋蒲鉾店(京成小岩)のWebサイト(かつしか商店街サイト)