丸忠かまぼこ店のおでん種

戦後の風情が漂う街並みが魅力の葛飾区立石。闇市から発展した京成立石駅周辺の飲屋街は、再開発のために立ち退きが進んでいる。北口はほぼ開発の準備が整ったようだが、南口の商店街は現役だ。特に立石仲見世商店街と呼ばれるアーケード通りは、飲み屋を中心に元気に営業しているお店が多い。

葛飾区 京成立石駅北口周辺再開発地区

飲み屋併設で有名になった丸忠かまぼこ店

丸忠かまぼこ店は立石仲見世商店街にある。飲み屋が中心の商店街は昼間は静かだが、丸忠かまぼこ店だけは提灯が灯り、店員さんがてきぱきとお客さんをさばいている。

丸忠かまぼこ店(葛飾区 立石)

丸忠かまぼこ店は30年以上続くおでん種やさんだが、隣りに「二毛作」というお店を開いたことで有名になった。お店の2代目である日高寿博さんと地元立石の友人である西村浩志さんが意気投合して作ったお店で、厳選したお酒と丸忠かまぼこ店のおでんを楽しむことができる。

丸忠かまぼこ店(葛飾区 立石)

現在、二毛作は少し離れた京成押上線の線路沿いに移転し、丸忠かまぼこ店の隣りは「おでんの丸忠」という名で営業を続けている。写真の「丸忠」の暖簾は、斜め向かいの名店である「宇ち多゛」からの贈り物だそうだ。
雰囲気抜群の立石仲見世商店街でお酒を飲みつつ、おでんを味わう欲望に負けそうになるのだが、「東京おでんだね」は家庭で楽しむ丸忠かまぼこ店のおでん種にフォーカスしていきたいと思う。

なお、飲み屋については東京おでんだねがTV出演した際の記事「かりそめ天国に東京おでんだねが出演しました」で簡単に触れている。

豊富なおでん種、あさり天にも注目

丸忠かまぼこ店(葛飾区 立石)

お店の左側には、できたてのおでんが売られている。はんぺんや大根、じゃがいもや練り物などが並べられているが、どれもおでん汁が染みていて美味しそうだ。しかし、できたておでんとなると練り物以外のおでん種がメインになるのはなぜだろうか。確かに酒のつまみなら、手前の串ものなどは抜群に合いそうだ。ああ、これらのおでん種で一杯やりたい。

できたておでんに関しては「丸忠かまぼこ店のできたておでん」という記事で紹介しているので、そちらもご覧いただきたい。

丸忠かまぼこ店(葛飾区 立石):おでん種

お店の右側ではおでん種が売られている。練り物は20種類近くあり、他と合わせると全部で30種類くらいはありそうだ。ひとつひとつが大きめではあるが、食べやすい大きさでもある。ボールやウズラ巻、ギョウザ巻などスタンダードな練り物は大体おさえてある。
ピリ辛の中華揚げや五目揚げ、イカの大判揚げなどオリジナルのものも揃っている。そして、あさり天があるのも注目だ。あさりのおでん種は他のおでん種やさんでも見かけるが、砂町銀座の増英蒲鉾店などの東京の東側で目にする。きっと海浜で獲れる食材だからなのだろう。この辺りも地域差があって面白い。

丸忠かまぼこ店(葛飾区 立石)

練り物以外のおでん種も各種揃っている。魚のすじもきちんと用意してある。なお、魚のすじは池永商店(銚子)のもので半分の購入も可能で、ちくわはイゲタ沼田焼竹輪工場(青森)、鳴戸巻きはカクヤマ(焼津)だった。

風景は変わっても、残し続けたいおでんの味

再開発地域である京成立石駅の北口を少し見学した後、家に戻って調理を開始。

丸忠かまぼこ店(葛飾区 立石):おでん種

今回購入した練り物は6種類。12時から時計回りに中華揚げ、あさり天、カレーボール、チーズ巻、がんもどき、五目揚げ。この他に魚のすじと、ちくわぶ、結び昆布、結び白滝も購入。

丸忠かまぼこ店(葛飾区 立石):おでん

先に下茹でした大根やちくわぶなどを入れ、最後に練り物を投入する。火が通りにくいものを先に入れる、味を吸うものを先に入れ、味が染み出すものを後に入れる、というのがおでん調理の基本。

丸忠かまぼこ店(葛飾区 立石):おでん

おでん汁はサービスでいただいたおでんの素(チヨダのおでんの味と思われる)を使うことにした。こういったサービスも下町の庶民的な温かみが感じられて嬉しいところ。昨今は「天然無添加の出汁」だとか「どこどこの特産物から取った出汁」だとか、一般家庭にも色々とこだわりが見られる。それはそれで良いことだと思うが、手軽に使える顆粒の出汁も選択肢として残しておいてもよいと思う。何よりおでんはおでん種からうまみが染み出るものなので、愛情さえあれば何を使っても美味くなるものだ。

丸忠かまぼこ店(葛飾区 立石):おでん

さて、今回も具だくさんで美味しそうにできあがった。このおでん種が鍋に詰まった姿は、いつ見てもワクワクする。特に外が寒い日だと、見ているだけでよだれが垂れてうずうずして、身体がぽかぽかしてくる。好物のちくわぶもいい感じで柔らかくなっている。

丸忠かまぼこ店(葛飾区 立石):おでん

練り物は柔らかすぎず適度な食感がありながら、全体的にふわっとした印象があり、とても美味しい。おでん種やさんごとに練り物の食感が異なるのは本当に面白い。結び白滝は大きくて、おでん汁をたくさん吸ってジューシーだ。スーパーなどで売っている白滝は小さいものが多くて物足りなさを感じるが、丸忠かまぼこ店のものは思う存分かぶりつくことができる。

葛飾区 立石仲見世商店街

チーズ巻のとろりとした味わいに思わず笑みがこぼれ、野菜がたくさん入った五目揚げやピリ辛の中華揚げはそれぞれ味に主張があって面白い。魚のすじは弾力がありながらもホロリと柔らかく、大きめの結び昆布も食べ応えがある。あさり天はほんのりあさりの風味があり、地域独特の味だと感じさせる。再開発に伴い立石の風景は変わってしまうのだろうが、移住してくる若い世代の人たちにも、丸忠のおでんの味を変わらず楽しんでもらいたいと願うばかりである。

丸忠かまぼこ店の基本情報

丸忠かまぼこ店(おでんの丸忠)
〒124-0012 東京都葛飾区立石1-19-2
03-3696-6788
定休日:木曜日・第3水曜日
営業時間:11:00~19:00(飲み屋のおでんの丸忠は15:00~22:00)

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