増田屋かまぼこ店(綾瀬)のできたておでん

足立区綾瀬五丁目にある増田屋かまぼこ店は、店主とおかみさんがとてもやさしく、実家に帰ったような懐かしさを感じるおでん種専門店だ。今回はこちらの店頭で販売するできたて調理済みおでんを紹介する。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん

東京おでんだねが増田屋(綾瀬)に訪問したのは1年半前。その際の内容は「増田屋かまぼこ店(綾瀬)のおでん種」の記事でご覧いただきたい。

店主とおかみさんとの会話が楽しい増田屋かまぼこ店(綾瀬)

JR常磐線と東京メトロ千代田線が走る綾瀬駅東口から歩いて約7分。東京武道館を抜けた先に綾瀬五丁目商店街がある。

東京都足立区綾瀬:綾瀬五丁目商店街

かつてこの商店街はお店のなかにはみ出してしまうほど人通りが多く、活気があったのだという。現在は訪れる客は地元住民だけとなり、住宅も増えてその名残りをとどめるものは少なくなっている。しかし、元気に営業を続けるお店がいくつか残っており、馴染み客を中心に愛され続けている。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店

増田屋(綾瀬)もその1軒だ。葛飾区の立石にある増田屋から独立し、昭和48年(1973年)に創業。この土地で営業を続け、もうすぐ50周年を迎える。

店主の修業時代はおでんの調理担当で、蒲鉾製造の経験はなかった。先輩たちを後ろからのぞいて研究し、夜中に自分で作って技の研鑽を重ねたのだという。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店

20種類以上の揚げ蒲鉾が並ぶショーケースは、店主の努力が結実した芸術品といえる。原料となる魚は一般的に普及しているスケトウダラではなく、イトヨリダイを使用しているそうだ。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店

店主いわくイトヨリダイのほうが味もよく、柔らかくなりにくいので創業以来ずっと使っている。また、水を必要以上に加えて量をかさ増しせず、蒲鉾本来の美味しさを追求している。イトヨリダイは高級魚となり高値なのだが、販売価格に転嫁せずに低くおさえているそうだ。おかみさんは「商売っ気がない」と冗談まじりに語っていたが、店主の職人としての姿勢に共感し、誇りに思っているようにみえた。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん

できたての調理済みおでんに目を向けてみよう。8つに仕切られたおでん鍋に、種類ごとにおでん種が綺麗に詰め込まれている。

店主は修業時代に調理済みおでんの担当で、いろいろと工夫を重ねていたそうだ。当時は揚げ蒲鉾のほかに焼ちくわやはんぺんしか使用しないのが一般的だったが、店主が大根やじゃがいもなどさまざまな具材を加えたそうだ。それが日本初なのか、それともほかの店を参考にしたのかわからないが、おでんの歴史上貴重な証言だ。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん

お店にはメニューがないので選びにくそうだが、「これはなに?」とか「揚げ物の種類はなにがある?」と質問すれば、おすすめも含めて教えてくれる。こういったやりとりができるのもおでん種専門店の魅力だ。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん

きちんと煮えているものか、そうでないものか、おかみさんの気配りでもっとも美味しいものを選んでくれる。食べる前から心があたたまり、幸福感があふれてくる。

心もあたたまる増田屋かまぼこ店(綾瀬)のできたておでん

増田屋(綾瀬)では世間話やマニアックなおでん種談義を含めて2時間以上もお邪魔してしまった。お仕事の邪魔かと思ったが、おふたりは嫌な素振りはまったく見せずにあたたかく接してくれた。話した内容をすべて紹介したいところだが、きりがないので進行しよう。今回は調理済みおでんを12種類購入した。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん

時計回りに12時から、大根、とうがらし入、フランク、肉ボール、ぎょうざ巻、豚バラ肉と白滝の巾着(仮称)、もちきん、魚のすじ、ロールキャベツ(中央左)、玉子(中央)、ちくわぶ(中央右)、生揚(中央下)。名称が不明なものは仮称としている。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん

持ち運び用にビニールに入れてくれ、輪ゴムでしっかりととめてくれる。おでん汁もたっぷり入れてくれ、希望すれば練りからしをつけてくれる。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん

ビニールから鍋におでん種とおでん汁を移し、弱火であたためれば完成。あたためて汁気が抜けすぎる場合は少し水を足して味を調整するとしょっぱくならない。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん 大根

肉厚で大判の大根はしっかりと味が染みている。均一な色に染まっており、固いところはまったくなく完璧な仕上がりの食感だ。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん とうがらし入

とうがらし入は刻んだイカ、玉ねぎ、にら、ひき肉、唐辛子が入った贅沢な逸品。成人男性の手のひらはあろうかという大きさで食べ応え抜群。けっこう唐辛子が効いているので、辛党におすすめ。店主いわく、これ1枚でお酒が相当すすむのだそうだ。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん 生揚

生揚は絹ごし豆腐で口あたり滑らか。揚げた部分におでん汁がたっぷり含まれており、油と混ざりあって最高の味を生み出している。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん ぎょうざ巻

ぎょうざ巻ははち切れる手前までじっくり煮てあり、ふわふわの食感を楽しめる。餡の挽き肉と魚のすり身の旨味がまろやかに溶け合っている。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん フランク

フランクはぎゅっと詰まった肉の美味しさと、ぷりぷりの食感が幸福感を増幅させる。どことなく懐かしい味が素晴らしい。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん 魚のすじ

魚のすじは千葉県銚子の嘉平屋のものを使用している。じっくりとおでん汁に浸かっているのでほろほろの食感を楽しめる。嘉平屋については「カレーボールのルーツを探る」という記事で詳しく紹介しているので、あわせてご覧いただきたい。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん ちくわぶ

ちくわぶは墨田区向島の柳澤商店の生ちくわぶを使用している。ほどよいくたくた感でおでん汁を吸い込みつつ、生ならではの柔らかくフレッシュな口当たりが残っている。生のちくわぶを扱うお店は少なくなっているので、遠方から求めにやってくるお客さんも多いそうだ。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん もちきん

もちきんは定番のスタイルを踏襲した堅実な味わい。店主とおかみさんでがひとつひとつ口を結んでいるそうだ。その姿を想像するとやさしい味もあいまって、実家の母に向けるような感謝の気持ちがわいてくる。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん 肉ボール

肉ボールは1串3個での販売。挽き肉が入っているので小さくとも満足感のある味わいだ。子どもも大満足の一品だろう。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん ロールキャベツ

ロールキャベツは挽き肉のほかに、キャベツがたっぷり入っている。野菜と肉の淡白な味わいがおでん汁と溶け合って、透明感のある味わいを堪能できる。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん 豚バラ肉と白滝の巾着

増田屋(綾瀬)オリジナルの豚バラ肉と白滝の巾着。名札がなかったので名称は不明だ。豚バラ肉から出た肉汁とおでん汁をしっかり抱き込んだ白滝が最高。説明不要なので、とにかく食べてみてもらいたい。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店のおでん 玉子

玉子は黄身がしっかり詰まっている。固茹でのスタンダードな仕上がりだが、やはりおでんには欠かせない。褐色に染まった表面が美しい。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店

店主とおかみさんは前回の記事をきっかけに、東京おでんだねのサイトを詳細にご覧いただいたそうで、増田屋の歴史に関する記事「増田屋の系譜」などを見て感心されたのだという。今回お会いした際にねぎらっていただいてとても嬉しく思った。

新型コロナウイルスの影響でお客さんは増えたそうだが、なぜか遠方からのお客さんが多く、年末年始にも何人かやってきたのだという。しかし、店主の体調不良により1週間ほど対応ができなかった。おふたりは「お客さんの期待に応えたい」と営業を続けているが、健康第一で過ごしてほしいと思った。

東京都足立区綾瀬 綾瀬五丁目商店街:増田屋蒲鉾店

おでんだね専門店は、お客さんを第一に考え営業を続けるお店ばかりだ。とりわけ増田屋(綾瀬)は「お客さんは家族のようなもの」と語るあたたかいお店だ。2年ほど前に常連さんが持ってきたという白いドジョウを眺めながら、おかみさんは「福の神が舞いこんでくれると嬉しい」と笑っていたが、私たちにとってはおふたりが福をもたらしてくれる素敵な存在なのだと思った。

どうぞお元気で、ご無理のない範囲でいつまでも美味しいおでん種を提供してください。

増田屋かまぼこ店(綾瀬)の基本情報

増田屋かまぼこ店
〒120-0005 東京都足立区綾瀬5-12−9
定休日:日曜
営業時間:9:00~19:00

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