豊島区池袋の西武池袋本店にある佃忠(池袋)は都内に4軒ある佃忠(つくちゅう)のうちの1つで、亀有店の店主の息子さんが経営しているおでん種専門店だ。今回はこちらの店頭で販売するできたて調理済みおでんを紹介する。
東京おでんだねの活動拠点は池袋なので、佃忠(池袋)でよくおでん種を購入している。記事としての紹介は1回のみで、そのときの模様は「佃忠(池袋)のおでん種」でご覧いただきたい。2010年のオープンだが、すでに池袋住民にはおなじみのお店となっている。
佃忠(池袋)は4店舗ある佃忠のひとつ。本店である亀有店は長男、向島店は次男、田端店は三男(現在は息子に代替わりしている)、西武池袋本店は長男の息子さんが営業している。「佃忠の系譜」という記事にまとめてあるので、興味のある方はご一読を。
さて、佃忠(池袋)は西武池袋本店地下1階の西武食品館「おかず市場」内ににお店を構えている(したがって撮影は不可)。通常のおでん種のほかにできたておでんも販売しており、おでん鍋は仕切りがないが、8つに区切れるくらいの大きさとなっている。おでん種は種類ごとに配置されており、メニューを見ながらオーダーできる。「おでんファミリーセット」というボリューム感たっぷりのセット販売もしており、1パック買えばだいこんやじゃがいも、がんもやはんぺんなど人気のおでん種がひととおり揃う。
接客は百貨店ということもあり、とても丁寧で親切だ。商店街のおでん種専門店のようにはできないが、ちょっとした会話にも快く応じてくれる。店員さんたちは「もっと気さくに話したい」という人懐っこさが滲み出ているが、百貨店の接客ルールにも従わなくてなならないもどかしさが感じ取れる。
西武池袋本店の屋上でおでんを楽しむ
できたておでんを購入したあとは家に戻って調理するのが基本だが、天気がよければ9階屋上で楽しむのもいいだろう。
西武池袋本店の9階は「食と緑の空中庭園」というおしゃれな空間になっている。グルメなお店が多数揃っており、緑豊かな空間と一面に広がる青空のもとでのんびり食事をすることができる。
前回の記事にも登場したかるかやのうどんと一緒に佃忠(池袋)のできたておでんを楽しむことにした。西武池袋本店の屋上は持ち込みオッケーなのだ。ただし、あらかじめ紙皿や割り箸は自分で用意しておかなければならない。おでん汁がこぼれたときのために、紙ナプキンも忘れずに。
さらにハサミを持参しておいたほうがいい。佃忠(池袋)のできたておでんはきちんとビニール袋の圧着して閉じてくれる。割り箸でも封を切ることができるが、ハサミがあるとスムーズだ。ただし、銃刀法に違反しない刃体の長さが6cm以内のものにしておこう(念のため)。
うららかな春の陽気を楽しみながら、とっておきのおでんを楽しむ。とても贅沢なのだが、新型コロナウイルス対策に配慮しながら実行するようにしよう。池袋周辺の公園で楽しむのもいいかもしれない。
佃忠(池袋)のできたておでん
いつものように、家に戻ってできたておでんを調理する。佃忠(池袋)では、11種類のおでん種を購入した。
時計回りに12時から、だいこん、きゃべつ揚げ、がんも、しらたき、ロールキャベツ、牛すじ、いいだこ、焼きちくわ、トマト(中央左)、たまご(中央右)、しゅうまい巻き(中央下)。焼き蒲鉾は控えめにして、できたておでんならではのおでん種をチョイス。
できたておでんを購入すると、おでん種の特徴にあわせて丁寧に梱包してくれる。トマトは型崩れ防止とおでん汁に混ざらないようにプラスチックケースに入れてくれ、串ものは穴が開かないように個別に包んでくれる。
トマトは東京のおでん種専門店には珍しい品だ。東京では佃忠(池袋)のほかに、葛飾区立石の丸忠の飲食スペースで提供されるほか、港区麻布十番の福島屋でも提供されている。トマトの酸味がおでん汁と溶け合ってまろやかな酸味となり、非常に美味だ。佃忠(池袋)では常時販売されていないので、見つけたときは迷わず購入することをおすすめする。
できたておでんを鍋に移して弱火で温めれば完成。おでん汁の汁気が飛ぶようなら、お水を少し足してから温めるとしょっぱくならない。
だいこんはじっくり煮てあるだけあり、おでん汁を吸い込んでいてとてもジューシー。ちょうどいいほろほろ感で、大根のうまみも残している。
厚口のがんもは大豆のうまみがきちんと生きている。ふっくらボリュームがあり、食感はまるでシュークリームのようだ。
牛すじは肉厚であり、噛めば噛むほどうまみが滲み出てくる。飲み込むのが惜しいくらい、いつまでも味わっていたい感覚を覚える。
いいだこは凝縮した味わいが詰まった逸品。頭の部分と足の部分で異なる食感とうまみの滲み方を堪能できる。
しらたきはほどよい太さと房の大きさで、しっかりとおでん汁を抱きこんでいる。定番ながら、必ずラインナップに加えておきたい。
焼きちくわはイゲタ沼田焼竹輪工場のもの。牡丹の焼き色が美しい。ちくわの出汁が逃げ切らないぎりぎりの煮込み具合で、くたっとしながらきちんとうまみを残している。
佃忠(池袋)の魚のすり身は秀逸な仕上がりなので、ぜひ揚げ蒲鉾も味わってもらいたい。しゅうまい巻きは焼売の餡と皮の美味しさもさることながら、ソフトな食感の魚のすり身とあいまってまろやかで深みのある味が楽しめる。
きゃべつ揚げは刻んだキャベツのほかに紅生姜、長ネギの組み合わせになっており、甘みがありながらもきちんとアクセントのきいた味になっている。佃忠(池袋)の揚げ蒲鉾はこのきゃべつ揚げのほか、ニラを主役にしたにら揚、パプリカ、ズッキーニ、エリンギが入った彩り野菜揚など、創意工夫に富んだおでん種が揃っているのでぜひ試してもらいたい。
たまごは固茹での定番のスタイル。ぎっしりうまみが詰まった黄身がとても美味しい。褐色に染まった表面が食欲をそそる。
ロールキャベツはボリューム満点。幾重にも連なるキャベツが汁気をたたえ、噛んだときの満足感が半端ない。挽き肉もとってもジューシーで、肉汁がおでん汁と混ざり合いこの上ない満足感を与えてくれる。
最後はトマトだ。まるごと1個というボリューム、溢れ出るトマトの酸味。そこにおでん汁が加わり、優しい味わいとなる。食べず嫌いの人にはぜひ試してほしい、おでんの新体験だ。
佃忠(池袋)はほかのおでん種専門店と違い、百貨店の地下で営業するお店だ。それゆえに利便性は最高で、仕事帰りや休日のお出かけにちょっと寄っておでんを購入することができる。たとえば、西武池袋本店の屋上でサンシャイン60を眺めながら味わってもいいし、秩父に小旅行に出かける際に電車内で味わうのもいい。新型コロナで遠出が制限される事態となっているが、佃忠(池袋)のようなおでん種やさんを利用して近場で観光気分を味わってみるとストレス解消になるのではないかと思う。
【2024年3月閉業】佃忠(池袋)の基本情報
佃忠
〒171-8569 東京都豊島区南池袋1-28-1
西武池袋本店地下1階:西武食品館「おかず市場」内
03-3981-0111
定休日:不定休
営業時間:10:00~21:00(月〜土)、10:00〜20:00(日・祝休日)
西武池袋本店地下1階フロアガイド