おでん種専門店と量販店・メーカーの価格比較

今回は、東京の代表的なおでん種専門店と大手量販店やメーカーのおでんを比較し、価格帯やボリューム感をおおまかに調査していこうと思う。

おでん種専門店と量販店・メーカーの価格比較

よく「コンビニや量販店に比べて、おでん種専門店のおでんは割高だ」という話を耳にする。たしかに東京すべてのおでん種専門店をめぐった筆者もそのような印象を持っているが、具体的にどれだけ違うのだろうか。

今回は「おでん種専門店の店頭で販売している調理済みおでん」、「コンビニエンスストアのレジ前で販売しているおでん」、「量販店・メーカーのレトルトパック一人前おでん」の3つを取り上げて、おおまかに調査してみたいと思う。なお、筆者ひとりでは調査に限界があるので、あくまで参考程度にご覧いただきたい。

価格帯の比較

下の図1は、2022年1月時点での代表的な東京のおでん種専門店のできたておでん(店名非公表)とコンビニエンスストアのレジ前おでん6種の参考価格だ。これを見るとおでん種専門店9軒の値段はまちまちであり、最高値と最低値で倍以上の開きがある。

【図1】 代表的な東京のおでん種専門店とコンビニエンスストアのおでん種参考価格(2022年1月時)
【図1】 代表的な東京のおでん種専門店とコンビニエンスストアのおでん種参考価格(2022年1月時):クリックして拡大

Aはお酒を提供する飲食業、Bは量販店内で営業しているため、ほかのお店に比べて割高になっている。CからIの7軒は商店街での小売営業となり、こちらが一般的な東京のおでん種専門店の営業形態となる。仮にAとBを例外として除外した場合、C-Iの合計価格の平均は378.28円となる。

ローソンのレジ前おでん

一方、コンビニのおでんは3社ほぼ同一の価格帯となっており、各社ともに1種類あたりの価格はほぼ統一されている。6種の合計価格はセブンイレブンで570.24円、ファミリーマートで560円、ローソンで540円となり、平均は556.74円。おでん種専門店C-Iの平均と比べると178円ほど割高になる。これは原材料以外に人件費などのコストがかかっているためだと思われる。

なお、レジ前ではなくレトルトパックのおでんになると、セブンイレブン(セブンプレミアム)で213円、ファミリーマートで220円、ローソンで208円となり、おでん種専門店に比べて圧倒的に割安となる。

【図2】 代表的なおでん1人前レトルトパック参考価格(2022年1月時)
【図2】 代表的なおでん1人前レトルトパック参考価格(2022年1月時):クリックして拡大

上図2は2022年1月時点での代表的なおでん1人前レトルトパックの参考価格だ。一正蒲鉾の「玉子入りおでん」のみ都内某量販店で購入した際の実売価格(2パックセットだったので、さらに半額の値)を掲載しているが、どれも200円前後と非常に安い。しかも、1パックで7〜8種類のおでん種が入っているものが多い。容量の違いはあるだろうが、205円という平均価格は図1のおでん種専門店C-Iよりも173円ほど安い。

レトルトおでん(イオンTOPVALU おでん 7種7品、セブンプレミアム おでん1人前、一正蒲鉾  玉子入りおでん)

まとめると、おでん種専門店で378.28円、コンビニで556.74円、量販店・メーカーのレトルトパックで205円という平均価格となった。量販店のレトルトパックには及ばないが、おでん種専門店も決して割高ではないといえるだろう(もちろん、お店にもよるが)。

これは余談となるが、今後は業界全体での値上がり傾向は避けられない。近年、世界的な需要の高まりと漁獲数の減少を受けて魚のすり身の価格が高騰しており、揚げ蒲鉾を作るために必要な食用油も供給不足やコロナ禍の影響などにより昨年4回の値上げを行った。また、エネルギー関連の価格も上昇しており、製造や物流などのコストに影響を及ぼしている。このため、紀文食品や一正蒲鉾といった大手の蒲鉾業者は軒並み値上げ実施を表明しているが、東京の個人経営のおでん種専門店にも深刻な影響が及んでいる。店主たちにうかがうと皆一様に頭を抱えており、値上げや原料の品質の見直しを検討しているお店もある。おそらくは全体で5~15%ほど価格が上昇すると予測されている。

ボリューム感の比較

価格差がなんとなく理解できたところで、ボリューム感も簡単に比較しておこう。ここでは見た目だけでなく、おでん種の重量も測ってみた。

おでん種専門店と量販店・メーカーの価格比較:計量

計量はおでん汁を除いたおでん種(固形物)のみで行ったが、個体差があるのであくまで参考程度としてもらいたい。比較しやすいように、同じお皿に盛り付けて写真の縮尺も同一にしてみた。まずは東京のおでん種専門店3軒を見ていこう。

東京都墨田区京島 下町人情キラキラ橘商店街:大国屋(京島)のできたておでん

上写真は墨田区京島にある大国屋(京島)のできたておでん6種。しっかりと汁を吸った褐色のおでん種が美味しそうだ。重量は253グラム、価格帯は図1のおでん種専門店C-I平均の中央値あたりとなる。なお、プレーンなさつま揚げがなかったため「野菜揚げ」をチョイスしている。

東京都江東区北砂 砂町銀座商店街:増英蒲鉾店のできたておでん

お次は江東区北砂にある増英蒲鉾店のできたておでん6種。ひとつひとつの種が圧倒的なボリュームで、重量は329グラムもあった。価格帯は図1のおでん種専門店C-I平均の上限付近だ。こちらにもさつま揚げはなかったので「ボール(1串3個)」で代用している。

東京都豊島区池袋 西武池袋本店:佃忠(池袋)のできたておでん

3軒目は西武池袋本店に入っている佃忠(池袋)のできたておでん6種。それぞれの種の大きさは専門各店の平均程度で、重量は267グラム。価格帯は図1のおでん種専門店B程度。デパ地下営業なのですこし割高だが、通勤などのついでに購入できる便利さが魅力だ。

ローソンのレジ前おでん

4軒目はローソンのレジ前おでん6種。ローソンは最近店舗リニューアルを行っており、レジ前おでんが姿を消しつつある。種の大きさは専門店に負けておらず、重量も303グラムでボリューム感がある。価格は6点で540円だ。なお、さつま揚げは「ひじきと5種野菜のさつま揚げ」がなかったので「たこ天」で代用している。

セブンプレミアム おでん1人前

最後はセブンプレミアムのレトルトパック「おでん1人前」。ひとつひとつは小ぶりだが、8種類あるので他店と遜色ないボリューム感。重量は229グラム(表記では210グラム)で価格は213円。なお、イオンのTOPVALU「おでん 7種7品」では214グラムで213.84円、一正蒲鉾の「玉子入りおでん」は205グラム(表記では180グラム)で173.34円だった。

セブンプレミアム おでん1人前

ちなみに、量販店のプライベートブランドのほとんどはOEM生産だ。セブンプレミアムは一正蒲鉾、イオンはアイエーフーズ(サーチフーズ)がOEM生産している。

おでん種専門店と量販店・メーカーの価格比較

ボリューム感の印象をざっくりまとめると、専門店のおでんはレトルトパックに勝るが、コンビニも同等かつそれ以上だった。レトルトパックは種が小ぶりで重量もないが、豊富な種類でボリューム不足を補っていた。

これで比較は以上となるが、今後も範囲を広げて調査を続けていきたいと思う。あくまで今回は価格やボリューム感がどのくらい異なるのかを理解するために調査を行ったが、優劣をつけるつもりは毛頭ない。味や品質、利便性や愛着など、評価できる指標はほかにも数多くあるので、各々の価値観で自由に選択していただきたい。

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