おでんのじゃがいもの調理方法

おでんにじゃがいもを入れると型崩れしやすいが、下ごしらえをきちんと行えば綺麗なまま美味しくできあがる。今回は、おでんにおけるじゃがいもの調理方法を紹介していきたいと思う。

おでんのじゃがいもの調理方法

じゃがいものおでん種は全国区ではないが、年々各地方で食べられるようになってきた。ウェザーニューズの2018年の調査によれば、近畿圏では6〜8割が「おでんに入れる」と回答し、中国地方や四国の北側、関東地方でも親しまれているようだ(2018/11/15 14:37 ウェザーニュース)。不動産サービスのアットホームの調査では、じゃがいもは奈良県、兵庫県、京都府で人気がある一方、おでんの具で要らない物として3位に挙がっている(at home VOX「おでんの具・人気ランキング! 特定の地域に愛されているおでんの具は……」)。

葛飾区 立石仲見世商店街:丸忠かまぼこ店のじゃがいも

東京のおでん種専門店でも取り扱うお店は多い。とりわけ店頭で販売する調理済みおでんで見かけるが、自宅で調理するために下ごしらえしたじゃがいもを販売しているお店もある。以前、佃忠(向島)のおかみさんに透明なおでん汁を保つコツをおうかがいしたところ、「大根やじゃがいもをあらかじめ下茹でしておく」とのことだった。お客さんにもアドバイスしているそうだが「いくら言ってもおでんと一緒に煮ちゃう」と笑っていた。

佃忠(向島)だけでなく、ほかのおでん種やさんや居酒屋でも、じゃがいもは必ず下茹でを行っている。下茹でを行っておけば煮崩れが起きにくく、おでん汁が濁ることがない。また、中までしっかり火が通るため美味しいじゃがいもができあがる。きっとおでんのじゃがいもが嫌いな人でも、下茹でしたものを味わえば好きになる可能性は高いと思う。

おでんに最適なじゃがいもの品種

まずは、おでんに最適なじゃがいもを紹介しよう。じゃがいもは複数種が販売されているが、煮崩れしにくいメークインか新じゃがを選ぶといい。

おでんのじゃがいもの調理方法

メークイン(写真右)は澱粉が少ないため、長時間煮ても煮崩れしにくい。このため、カレーやシチューなどの煮込み料理によく用いられる。ねっとりとした舌触りが特徴で、低温貯蔵すると甘味と粘質度が増す。北海道産のものが多く、秋に収穫したものを貯蔵してから出荷される。

新じゃが(写真左)は冬に植えて春先に収穫し、貯蔵せずに出荷されるじゃがいもの総称で、いくつか品種が存在する。鹿児島県や長崎県で生産されたものが多い。水分を多く含み、柔らかくて香りが良いのが特徴だ。

太洋かまぼこ店(板橋区 中板橋):できたておでん じゃがいも

中板橋の太洋かまぼこ店では、季節によってさまざまな品種のじゃがいもを使用している。澱粉が多く煮崩れしやすい男爵いもを使うこともあるが、煮崩れしないのは流石プロフェッショナルの技が生かされているといえよう。店主にコツをこっそりうかがってみるのも面白いだろう。

じゃがいもは水から茹でるのがポイント

下ごしらえはただ茹でるだけの簡単ステップ。まず、じゃがいもを水洗いして毒素が含まれる芽の部分を取り除いておく。茹でてからスプーンで取り除いてもOKだ。

おでんのじゃがいもの調理方法

そのまま皮を剥いてしまっても構わないが、じゃがいもに豊富に含まれるビタミンCが逃げ出さないように、今回は皮付きのまま調理を行った。水溶性のビタミンCは茹でると溶け出してしまうが、皮を付けたまま茹でると流出を抑えることができるのだ。同様の理由で切らずに丸ごと茹でることにした。もし切って茹でる場合は煮崩れを防ぐために面取りをしておこう。

鍋にじゃがいもを入れたら、水をたっぷり注ごう。温度が均一にまわるように、じゃがいもがすべて水に浸かるくらいが望ましい。

おでんのじゃがいもの調理方法

次に、鍋を火にかける。ポイントは水から茹でることだ。野菜にはペクチンという食物繊維が含まれており、細胞同士を結合させる接着剤の役割をはたす。温度が80度以上だとペクチンが分解されて煮崩れするが、60度付近の温度になると酵素の働きによってペクチンの硬化が起き、高温になっても煮崩れしにくい。水から茹でるとゆっくり温度が上がっていくため、ペクチンの硬化を促せるのだ。水ではなく沸騰した状態からじゃがいもを入れると、外側が硬化のプロセスを経ないまま高温になり内側に火が通るころには煮崩れしてしまう。

中火で水から茹でて沸騰したら、中弱火にして20分ほど茹でる。茹で時間はあくまで目安なので、竹串を刺して茹で具合をしっかり確認しておこう。

おでんのじゃがいもの調理方法

茹であがったじゃがいもを30秒ほど冷水にさらすと皮が剥きやすくなる。茹でたじゃがいもは相当熱いので、やけどにはじゅうぶん注意しよう。

おでんのじゃがいもの調理方法

メークインは皮が薄いので剥きやすいと思うが、さらに剥きやすくするために茹でる前に包丁を入れておくという技もある。新じゃがはさらに皮が薄いので、剥きづらい場合はくしゃくしゃにしたアルミホイルで擦ってもいいだろう。

おでんのじゃがいもの調理方法

これでおでんのじゃがいもの下ごしらえは完了。粉もふいておらず、つるんとした美しい仕上がりになった。一説によると、すぐにおでんに入れずに冷ますとさらに煮崩れを防ぐことができるらしい。非常にシンプルな調理方法だが、結構時間がかかるので電子レンジで時短してもいい。ただし、甘みが出にくかったり、温度調整がしにくいため、きちんと水から茹でる方法をおすすめする。

おでんのじゃがいもの調理方法

最後にほかのおでん種と一緒におでん汁で煮て完了。ポイントは高温で煮すぎないことだ。おでんのセオリーとして80度前後が望ましく、あくまでじゃがいもは温める程度でいい。このことで煮崩れしないまま、完璧な状態のじゃがいもを楽しむことができる。

おでんのじゃがいもの調理方法

おでん汁の味をまといながらも、満足感ある味わいを楽しむことのできるおでんのじゃがいもは、下ごしらえをすることで何倍もその美味しさを引き出すことができる。今回はメークインと新じゃがを調理してみたが、品種によって、ねっとり、ほくほくと食感や味わいもさまざま。煮崩れに注意しながら、いろいろと試してみると面白いかもしれない。

Scroll to top