九州屋蒲鉾店の板付蒲鉾と伊達巻

東京のおでん種専門店ではお正月向けに板付蒲鉾と伊達巻を販売している。しかし、手作りをする店舗は年々数を減らし貴重な存在となっている。今回はそのうちの1軒となる東尾久の九州屋蒲鉾店を紹介する。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店の板付蒲鉾と伊達巻

前々回の記事「九州屋蒲鉾店のできたておでん」で九州屋蒲鉾店へ訪れた際に、店主から手作りの板付蒲鉾と伊達巻を販売するというお話をうかがった。東京おでんだね(のパートナー)はいつもおせち料理を手作りするので、購入しようと再度伺うことにした。

2019年の年末は東池袋の栄屋蒲鉾店で板付蒲鉾と伊達巻の素材用としてはんぺんを購入したが、残念ながら2020年3月に閉業してしまった。今年はどこか別の店舗がないかと思っていたところだったので、渡りに船といったところだ。

おでん種専門店とおせち用食材の関係

本来おでん種専門店とは蒲鉾専門店のことなので、蒲鉾と深い関係があるおせち用食材を販売するのはごく自然なことだ。基本的に蒲鉾以外の食材は専門業者から仕入れるが、卵焼きなど自前で作る食材も多い。

東京都文京区大塚 日出優良商店会:栄屋蒲鉾店

栄屋蒲鉾店では田作や卵焼きなど数種類のおせち食材を販売していたが、やはりメインは板付蒲鉾とはんぺん。数多く用意していてもすぐに売り切れてしまうほど人気だったので、手に入れられなくなったのは残念だ。

東京都西東京市ひばりが丘 一番通り商店街:大清かまぼこ店

上の写真はひばりが丘の大清かまぼこ店のおせち食材販売の様子。板付蒲鉾は鈴廣籠清などの有名店の市販品だが、伊達巻やなると巻、きんとんなどは手作りだ。どのお店も長年地元客に愛され続けてきたため、懐かしの故郷の味といえるだろう。

東京都文京区大塚 日出優良商店会:栄屋蒲鉾店の手作り蒲鉾

もちろん市販品も美味しいのだが、やはりお店の手作りのものは味や形に個性があり、作り手の顔が見えるため愛着がわく。昨年は伊達巻を(筆者のパートナーが)手作りしたが、栄屋蒲鉾店が真心込めて作ったはんぺんを素材にしたため店主とコラボレーションしている気持ちになった。また、上写真の紅白蒲鉾もあたたかみのある丁寧なつくりだったので、店主に感謝しつつ愛情をこめておせち料理に加えることができた。

どのおでん種専門店でも好評な手作りおせち食材だが、年末はおでんの買い込み需要が増えるため忙しく、さらにお正月向け商品を作るとなると手が回らなくなる。また、板付蒲鉾に関しては高度な技術が必要なため、手作りして販売する店舗は年々減少している。

九州屋蒲鉾店の板付蒲鉾と伊達巻

九州屋蒲鉾店では毎年常連客の強い要望により板付蒲鉾と伊達巻を手作りしている。作ろうとする前から予約が入ってしまうほど人気だが、年越しの3、4日前くらいに店頭に行けば予約なしでも購入できる。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店の板付蒲鉾と伊達巻

東京おでんだねは12月28日の午後にお邪魔した。市販品とともにお目当ての手作りの板付蒲鉾と伊達巻も並んでいたが、紅色の板付蒲鉾は売り切れていた。

店舗の様子も覗いてみたが、厨房では店主と2名ほどの職人さん、店頭は5名ほどの女性たちが大忙しで働いていた。おでん種専門店は年末がいちばん忙しく、お正月を過ぎると次第に需要が落ち着いてくる。「今年の冬はすこしお客さんが減っている」とおっしゃっていたが、やはり年末はおでんが食べたくなるものだ。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店の板付蒲鉾

さて、板付蒲鉾をじっくりと観察してみよう。九州屋蒲鉾店は中身はもとより包装も魅力的なのだが、板付蒲鉾の包装もしびれるくらいかっこいい。2匹の鯛に富士山、波、千鳥、宝船が描かれている。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店の板付蒲鉾

絵柄のほかには全国蒲鉾品評会の東京都知事賞受賞の記載がある。また、もっとも注目したのは「九州一」という文字。九州屋蒲鉾店は野方にあった同名の店舗(中野区野方5-18-14、閉業)から暖簾分けして現在に至る。「九州一」はそちらのお店の頃からの名称なのかどうか、今後調査していきたいと思う。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店の板付蒲鉾

機械で作る市販品と異なり、ひとつひとつ手で形を整えたことがわかるぬくもりある見た目をしている。以前、東京おでんだねは豊洲市場でかまぼこ体験教室を見学したのだが、これだけ整った形にするのは経験と技術が必要だ。

味は上品でありながら魚のうまみがしっかり詰まっており、そのままでもわさびと醤油で食べても美味しいだろう。弾力(蒲鉾の足)は若干強めでありながら、しなやかで粘りがある。いやあ、手作りっていいな。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店の伊達巻

お次は伊達巻だ。こちらも九州屋蒲鉾店のオリジナル包装で、見えづらいが唐草があしらわれている。典型的な関東のつくりとなっており、濃い焼き色と艶やかな表面、甘めの味付けで、溶き卵のほかに上品な魚の風味が漂う。中身が詰まっていて重量があり、しっとりとしている。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店

ちなみに、九州屋蒲鉾店ははんぺんも手作りだ。伊達巻の材料にしてみたり、お雑煮の椀種に使ってみても美味しいだろう。サイズも大きくなくて使いやすい。

東京おでんだねのおせち料理

おせち料理には伊達巻をそのまま使い、九州屋蒲鉾店の蒲鉾は紅白が揃わなかったのでお酒と一緒にじっくりいただき、おせちには籠清のものを使用した。お雑煮のなると巻は神茂のものだ。あらためて眺めているとおせちには魚介類が多く使われており、日本人と魚の関わりの深さを感じることができる。

東京都荒川区東尾久 おぐぎんざ商店街:九州屋蒲鉾店の年末年始のご挨拶

なお、九州屋蒲鉾店から年末年始のご挨拶として白地のタオルをいただいた。こういった心配りにお店とお客さんの距離が近い商店街の温もりを感じることができる。

おでん種専門店で手作りのおせち食材を購入することで、デパートなどでは味わえないぬくもりのある年末年始を過ごすことができると思う。今後はほかのおでん種専門店の動向も調査していこうと思うので、1年後を楽しみに待っていていただければと思う。

九州屋蒲鉾店の基本情報

〒116-0012 東京都荒川区東尾久4-31-11
03-3800-0328
定休日:火
営業時間:9:00~19:20
九州屋蒲鉾店のWebページ(おぐぎんざ商店街のWebページ)

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