佃忠の系譜

佃忠は亀有向島田端池袋にあるおでん種専門店だ。東京おでんだねではすべての店舗をまわって記事にしてきたが、今回は4店舗を同時に紹介したいと思う。それぞれのお店で独自の味を追求していながらも、共通するおでん種もあって比較してみると面白い。

佃忠 - おでん種専門店

日本橋から始まった佃忠の歴史

佃忠の歴史は約100年前までさかのぼる。明治45年(1912年)、初代店主が日本橋で蒲鉾店を創業したのがはじまりだ。その後、大正、昭和まで営業を続けていたが、戦争で店が焼けてしまい葛飾区の亀有に店舗を移すことになった。亀有のお店は二代目に引き継がれ、その後二代目の長男に代替わりする。二代目には長男のほかにふたりの息子さんがいて、次男は昭和56年(1981年)に墨田区の向島に店を出し、三男は昭和33年(1958年)に北区の田端に店を出すことになった。また、豊島区の西武池袋本店にある佃忠は亀有店の息子さんが店主となっている。

それぞれ独立した店舗となっているが、店名は「佃忠」の屋号となっている。また、おでん種の作り方はお店によって異なるが、具材などは一緒に仕入れているのだそうだ。

佃忠の元祖、亀有の佃忠

亀有の佃忠は現在、イトーヨーカドー亀有駅前店の地下1階に入っている。店舗内なので撮影が禁止されているので紹介できないが、横に長いショーケースに20種類以上のおでん種が綺麗に並んでいる。

イトーヨーカドー亀有駅前店

揚げ蒲鉾(練り物)のおでん種はえび巻やごぼう巻など定番のものが揃っているが、だいこん葉揚など変わり種も揃えている。焼き蒲鉾以外のおでん種も揃えており、ちくわぶは柳澤商店、焼きちくわはイゲタ沼田竹輪工場、なるとはサスウ篠宮商店、はんぺんは嘉平屋、おでん汁は正田醤油(綾瀬)のものを扱っている。これらはほぼ佃忠全店で統一されているようだ。
調理済みのできたておでんも販売しており、それを求めてやってくるお客さんも多い。

量販店に店舗があるので商店街のおでん種屋さんのようなコミュニケーションがしづらいと躊躇してしまうが、地元のお客さんとのやりとりを見ていると商店街のお店とまったく変わらないハートフルな接客をしてくれる。

東京おでんだねが亀有の佃忠を訪れたのは、記念すべき第1回記事のときだった。したがって、結構ライトな内容となっておりおでん種を詳しく紹介していなかったので、今回あらためて出向いて再度購入してみた。こちらの記事のあとのほうで紹介したいと思う。

次男店主が経営する向島の佃忠蒲鉾店

次男が経営する向島の佃忠蒲鉾店は、吉行淳之介の「原色の街」などで知られる鳩の街通り商店街にある。道幅の狭い戦前の面影を残す商店街のたたずまいは一見の価値ありだ。

東京都墨田区向島 鳩の街通り商店街:佃忠蒲鉾店

昭和56年(1981年)の創業当時のままの店内はこぢんまりとしていて味がある。店主は気さくにおでん種やお店の話を聞かせてくれる。土曜日はおでん種が全品一割引であったりと、下町の商店街ならではのお得な買い物を堪能できる。

東京都墨田区向島 鳩の街通り商店街:佃忠蒲鉾店

揚げ蒲鉾のおでん種は20種類ほどで亀有店と同じくらいだが、小ぶりなサイズで定番ものが多い。いろいろな種類を買ってみよう。

東京都墨田区向島 鳩の街通り商店街:佃忠蒲鉾店

調理済みのできたておでんも販売しており、鳩の街通り商店街をのんびりと散策しながら食べるといいだろう。

三男店主が経営する田端の佃忠かまぼこ店

三男が経営する田端の佃忠かまぼこ店は、JR駒込駅東口から徒歩5分程度にある田端銀座商店街に店を構えている。テレビなどのメディアで頻繁に紹介される有名店だ。現在は次男の息子さんに代替わりしている。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠(田端)

現在の店主のお母さまや女性の店員の方はとても明るく、話しているだけで幸せな気持ちになってくる。おふたりは何十年の付き合いらしく、店員の方はもともとお客さんであったそうだ。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠(田端)

揚げ蒲鉾のおでん種は30種類以上を数え、佃忠のなかで最も多い。たこ揚げボールなど珍しい変わり種もある。おでん種としてだけでなく、お酒のおつまみにしてもよい。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠(田端)のおでん種 すき焼袋

なお、田端の佃忠にはすき焼袋というおでん種があるのだが、以前テレビで同名のお惣菜が紹介されて(文京区白山の小田原屋)東京おでんだねのアクセス数が急上昇した。佃忠のすき焼袋も絶品なので、興味のある方はぜひ食べてみてほしい。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠(田端)

他の佃忠と同様に、田端店でも調理済みのできたておでんを販売している。あらゆるおでん種から出汁が染み出していそうな、ごった煮感が食欲をそそる。

長男の息子さんが経営する池袋の佃忠

長男の息子さんが経営する池袋の佃忠は、西武池袋本店の地下にある。平成22年(2010年)にオープンしたが、すでに地元の人々に愛されるお店に成長している。

東京都豊島区池袋:西武池袋本店

長男の息子さんのお店だけあって、おでん種は亀有店のものにかぎりなく近い。しかし、きゃべつ揚など池袋オリジナルと思われる種がある。

東京都豊島区池袋 西武池袋本店:佃忠(池袋)のおでん種

特筆すべきは彩り野菜揚で、パプリカ、ズッキーニ、エリンギが入っており洋風の味が楽しめる。調理済みのできたておでんではトマトもラインナップされており、若い感性が際立っている。

それぞれの店舗で異なるおでん種

それぞれ特徴が異なる佃忠各店だが、共通するおでん種も存在する。一例としてからし揚を比較してみよう。

佃忠のおでん種:からし揚(亀有店、向島店、田端店、池袋店)

上写真はそれぞれ亀有店(左上)、向島店(右上)、田端店(左下)、池袋店(右下)のもの。
比べてみると形状や大きさは亀有と向島のものが似ているが、具材は唐辛子、黒ごま、人参のほかに向島のものは長ネギやもやしがプラスされている。田端のものは形状が異なるが、こちらも長ネギともやしが入っている。池袋のものは丸くて厚みがあるが、もやしが入っておらず、長ネギが入っている(注:長ネギは入っていても見つからない場合もあるので詳細はご自身で確かめてほしい)。
同じ屋号で同じ名前のおでん種なのに、少しずつ異なっているのが面白い。

佃忠のおでん種:えだ豆揚(亀有店、向島店、田端店、池袋店)

枝豆揚もそれぞれ少しずつ違う。具材は枝豆だけなのは共通しているが、揚げ加減がすこし異なる。興味のある方は、各店をまわって食べ比べてみるといいだろう。

亀有 佃忠のおでん種

最後に亀有の佃忠で購入したおでん種を紹介しよう。今回は9種類を購入した。

東京都葛飾区亀有:亀有 佃忠のおでん種

時計回りに12時から、えび巻、ウインナー巻、餃子巻、玉ねぎ、えだ豆、いか天、はす天、チーズ巻、からし揚(中央)。

東京都葛飾区亀有:亀有 佃忠のおでん種

ちくわぶや玉子などを下ゆでして煮込んだら、練り物のおでん種を投入して完成。カラッと揚げてあるので油抜きをしなくても大丈夫だと思う。

東京都葛飾区亀有:亀有 佃忠のおでん種 はす天

はす天は細かく刻んだレンコンが入っている。肉厚に仕上げた田端店のものと異なり、平たく大きな形状となっている。レンコンが細かく刻んであるので食べやすく、風味がふわっと広がる。

東京都葛飾区亀有:亀有 佃忠のおでん種 えだ豆

えだ豆はたくさん入った枝豆の香りと甘みが素晴らしい。煮込んでもしっかりぷりぷりとしている。

東京都葛飾区亀有:亀有 佃忠のおでん種 玉ねぎ

玉ねぎは半分に切っただけで玉ねぎの甘い芳香が漂ってくる。同じく甘みのある魚のすり身との相性は抜群だ。

東京都葛飾区亀有:亀有 佃忠のおでん種 からし揚

からし揚は唐辛子の辛さが広がるが、次の瞬間スッと鼻を抜けていく心地よさがある。小さいのでいくつでも食べられそうだ。

東京都葛飾区亀有:亀有 佃忠のおでん種 いか天

いか天は菱形の形状が可愛らしい。細かく刻んだイカのゲソは柔らかく、ほのかに漂うイカの旨味が上品だ。

東京都葛飾区亀有:亀有 佃忠のおでん種 ウインナー巻

ウインナー巻はもっちりとした魚のすり身が優しくウインナーを包み込み、噛めば噛むほど旨味が広がる。

東京都葛飾区亀有:亀有 佃忠のおでん種 えび巻

えび巻はとても大きく立派なエビが入っており、噛むとエビの汁がじわっと溢れてくる。エビ好きにはたまらない逸品だ。

東京都葛飾区亀有:亀有 佃忠のおでん種 チーズ巻

チーズ巻はとろけたプロセスチーズの甘みとコクがなんともいえない。寒い時期にぴったりの、身体と心が温まるおでん種だ。

東京都葛飾区亀有:亀有 佃忠のおでん種 餃子巻

餃子巻は餃子の皮がトロトロに柔らかくなり、餡の肉汁と混ざり合ってこの上ない美味しさ。厚みのある形状も食べ応えがある。

佃忠はそれぞれ独立した店舗ながら、共通点もありゆるやかに結びついているのが面白い。お気に入りのおでん種やさん一択で選ぶのもいいが、各店を覗いて個々の味を比べてみるのも面白いと思う。

亀有 佃忠の基本情報

亀有 佃忠
〒125-0061 東京都葛飾区亀有3丁目26−1
イトーヨーカドー亀有駅前店 B1F
03-3603-6993
定休日:火
営業時間:10:00〜21:00

佃忠蒲鉾店(向島)の基本情報

佃忠蒲鉾店
〒131-0033 東京都墨田区向島5-49-5
03-3614-2604
定休日:日
営業時間:9:30~19:30
佃忠蒲鉾店(向島)のWebサイト(鳩の街商店街Webサイト)

佃忠かまぼこ店(田端)の基本情報

佃忠 田端銀座店(佃忠かまぼこ店)
〒114-0014 東京都北区田端3-8-6
03-3822-0973
定休日:火
営業時間:9:00〜19:30
佃忠かまぼこ店(田端)のWebサイト(田端銀座商店街のWebサイト)

佃忠(池袋)の基本情報

佃忠
〒171-8569 東京都豊島区南池袋1-28-1
西武池袋本店地下1階:西武食品館「おかず市場」内
03-3981-0111
定休日:不定休
営業時間:10:00~21:00(月〜土)、10:00〜20:00(日・祝休日)
西武池袋本店地下1階フロアガイド

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