餃子巻のルーツを探る

餃子巻は餃子に魚のすり身を巻き付けて揚げたおでん種だ。福岡のご当地おでん種として有名だが、東京でも多くのおでん種やさんが取り扱っている。今回は餃子巻の発祥や歴史をひも解いてみたいと思う。

おでん種:餃子巻

餃子を魚のすり身で包んだおでん種、餃子巻

最近、東京おでんだねの検索キーワードに「餃子巻」や「ぎょうざ巻」などを多く見かけるようになった。Twitterでも餃子巻について語っている人が多く、東京おでんだねのサイトが引用されることもある。それを見た餃子巻を知らないフォロアーが「美味しそうだ」とつぶやく場面に遭遇したりもする。

東京のおでん種専門店をまわってみると、多くのお店で餃子巻を作っていることがわかる。いわゆる巻き物系のおでん種にはごぼう巻やチーズ巻、ウインナー巻などの定番があるが、餃子巻も外せないものとなっている。東京出身の筆者も子どものころから親しんでおり、つい最近まで餃子巻は全国区のおでん種だと思っていた。

おでん種:餃子巻

餃子巻は餃子のまわりに魚のすり身を巻き付けたおでん種で、餃子の大きさに合わせた細長い形をしている。餃子の片端が少し顔を出しているものや、両端が出ているもの、すべてすり身におおわれているものなど細かなバリエーションがある。

触感や味は焼き餃子とは異なり、どちらかというと水餃子に近い。餃子の餡まで完全に火が通っているため、調理をせずに食べても美味しい。中に入れる餃子は餃子専門のお店から仕入れている場合が多い。荒川区のおぐぎんざ商店街にある餃子と焼売専門店の丸栄食品では、かつておでん種やさんに餃子や焼売を卸していたと店主が語っていた。

おでん種:餃子巻

おでんに餃子巻を入れると餃子の皮がトロトロになって、ワンタンのようなくちどけを楽しむことができる。噛むと餡の肉汁があふれ出て、このうえない幸福感に包まれる。魚のすり身はお店によって厚いものと薄いものがあり、餃子とすり身の味のコラボレーションを狙っているのか、それとも餃子の味を前面に押し出そうとしているのか、それぞれ作り手のこだわりどころが伝わってきて興味深い。

餃子巻のルーツその1、博多の平和蒲鉾店

他のおでん種とともに、餃子巻の発祥にも諸説がある。ひとつは福岡県博多の吉塚商店街にある平和蒲鉾店だ。

福岡県福岡市博多区吉塚:吉塚商店街

博多駅からJR鹿児島本線で1駅、吉塚駅から歩いて6分ほどの場所に吉塚商店街がある。狭い路地に古めかしい屋根がかかった昔ながらの素敵な商店街だ。地元のお客さんが顔なじみのお店に挨拶を交わしながら買い物を楽しんでいる。

福岡県福岡市博多区吉塚 吉塚商店街:平和蒲鉾店

平和蒲鉾店では作り置きをせず、その場で揚げた商品を並べている。お目当てができあがるのを待つお客さんで人だかりができていた。こちらのコロッケはテレビや書籍で紹介されており、それを求めてやってくる人も多い。

福岡県福岡市博多区吉塚 吉塚商店街:平和蒲鉾店

筆者が訪れたときは餃子巻が並んでいなかったが、いつごろできあがるか聞いたところ、15分程度ということでお店の前で待たせてもらうことにした。

平和蒲鉾店を取材した方のYouTube(上記)によると、餃子巻は平和蒲鉾店の先代が生み出したそうだ。全国のおでんを調べてまわる方(おでん研究家の新井由己氏と思われる)が餃子巻のルーツをたずねたところ、先代が考案したと答えたそうだ。

福岡県福岡市博多区吉塚 吉塚商店街:平和蒲鉾店

餃子巻ができあがり、支払いする際に東京から来たことを告げると、店主が「味見してみて」と細長く揚げたからし揚げをおまけしてくれた。地元のお客さんも「ここのお店は美味しいから、わざわざやってくる価値があるわよ」と太鼓判を押してくれた。外からも蒲鉾を成型するところを確認できたが、熟年の洗練された手際だった。蒲鉾づくりに対するひたむきな姿勢に、餃子巻の発祥が平和蒲鉾店であることに説得力を感じた。

福岡県福岡市博多区吉塚 吉塚商店街:平和蒲鉾店のおでん種 餃子巻

揚げたてのものを食べてみると、魚のすり身がふんわりもっちりしていて、上品な味わいがすばらしいかった。餃子はふっくらしていて、こちらも控えめで上品な美味しさだ。翌日に冷めたものを食べてみたが、もっちりとした柔らかさがちゃんと残っていた。

福岡県福岡市博多区中洲

平和蒲鉾店の発祥と関係するのか、福岡で餃子巻は定番のおでん種として認知されている。夜は中洲にある屋台におもむいて、餃子巻があるか確かめた。

福岡県福岡市博多区中洲のおでんと餃子巻

店主たちに「餃子巻あります?」とうかがうと、ほとんどのお店で「ありますよ」と返ってきた。ちなみに関西と同じように福岡では揚げ蒲鉾を「~天」と呼ぶことが多く、「餃子天」と呼ぶ人が多かった。おでんの盛り合わせにもしっかり餃子巻がラインナップされている。12月の寒い季節にあたたかい餃子巻をほおばると、1日の疲れがじんわりやわらいでくる。

福岡県福岡市博多区中洲:中洲おでん

ちなみに博多には多くの名物おでん屋が存在する。今回はあまり時間がなかったので、次回来たときに訪れてみたいと思う。

餃子巻のルーツその2、川口の割烹かまいち(蒲一)

博多以外にもうひとつ、餃子巻は東京の発祥だという説もある。その餃子巻を求めて埼玉県川口市の新堀へと向かった。

埼玉県川口市新堀:かまいち本社厨房

かつて蒲一というおでん種のメーカーが足立区の梅田(足立区梅田1-28-10)にあり、餃子巻を生み出したという。蒲一は川口市に移転したあとに関連会社の割烹かまいちに統合された。

割烹かまいちはお惣菜やお弁当を扱う「跳ね鯛」という小売店を展開しているが、蒲一と同様におでん種の製造もしていて、Webサイトに掲載されている餃子巻には「元祖」という文字が記されている。説明書きには下記のようにある。

肉餃子をしその入った白身魚で包みました。関東が発祥の餃子巻ですがなぜか九州福岡でもみられるケンミンフード」

さらに割烹かまいちは関東のおでん文化の発展を願い、おでん屋台を貸し出している。
前述の新井由己氏の記事を読むと、

先日、東京の下町でおでん種屋をやっているという人からメールが届いた。
「餃子巻きを考案したのは私の父です。昭和30年ごろに下町を中心におでん屋台を150軒ぐらい持ち、餃子巻きやシュウマイ巻きなどのおでん種を次々に作ったのです」

引用:【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1219-2

という記載がある。これらの情報を組み合わせると、「蒲一は昭和30年(1955年)頃に足立区周辺で多くのおでん屋台を持ち、おでんを提供していた。その屋台に自社で考案した餃子巻をのせて販売していた」と推測できる。その結果、東京の下町に餃子巻が広まり、東京のほかのおでん種やさんでも作られるようになったのだと考えられる。

推測の域を出ず、事実と異なる可能性が高いので、近日割烹かまいちへ直接問い合わせしようと思う。回答があり次第、追記していきたいと思う。

埼玉県川口市新堀:割烹かまいちのおでん種 餃子巻

さて、土日のみ営業している川口市の本社厨房の直売所で餃子巻を買ってきた。揚げ色が美しく、とてもよい見映えをしている。こちらのすり身はすこし身のつまった感じだが弾力は強くなく柔らかい。青じその香りがよいアクセントになっていて、お酒のつまみにしたい美味しさだった。

東京のおでん種やさんの餃子巻

最後に、東京のおでん種やさんで作られている餃子巻も見比べてみよう。これらはほんの一部で、実際にはもっと多くのお店で餃子巻を販売している。

東京のおでん種専門店の餃子巻

上の写真は左上から赤羽の丸健水産、東新小岩の桧山水産、左下から堀切の増田屋蒲鉾店、東向島の八幡屋。丸健水産のものは両端がツンと張り出していて可愛らしい。

東京のおでん種専門店の餃子巻

2枚目は左上から柴又の大国屋、戸越の後藤蒲鉾店、池袋の佃忠、左下から文京区大塚の栄屋蒲鉾店、吉祥寺の塚田水産、深川の美好商店だ。こうして一堂に並べてみると、形状にかなりの違いがあるのがわかる。

餃子巻の発祥は博多か東京か、それを結論付けるのは難しい。また、別の情報では愛川屋(おそらく閉業した高円寺のお店)が発祥という噂もある。発祥がいくつもあるのは不思議だが、ごぼう巻のようにすり身に具材を包み込んだおでん種はたくさんあるし、別々の場所で思いつくことだってあったのかもしれない。しかし、2つの元祖があったことによって、遠く離れた土地の人々がそれぞれ美味しい餃子巻を味わえることができたのは素晴らしいことだ。東京では多くのおでん種専門店が餃子巻を扱っているので、まだ食べたことのない方はぜひ味わってみてほしい。

平和蒲鉾店の基本情報

〒812-0041 福岡県福岡市博多区吉塚1-14-11
092-611-0673
定休日:日祝
営業時間:10:00~18:00
平和蒲鉾店のWebサイト(吉塚商店街のWebサイト)

割烹かまいちの基本情報

〒334-0061 埼玉県川口市大字新堀635
048-290-6800
定休日:月〜金(土日のみ営業)
営業時間:11:30~18:00
割烹かまいちのWebサイト

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